date: 2010年04月26日

subject: 一衣舎春展・東京

from: 植田伊津子



皆さまお久しぶりです。われらは元気にしています。

さて、読者の方からのご質問があれば、それについてもオープンに考えていきたいと思いますけれど、これからしばらく、こちらのブログにわれら3人のきもの雑記をつれづれにアップしていくことになりました。

おそらく、ときどき、かなりの確率でマニアな話になるような気がします。いわば、われらの裏メールのやりとりをこちらの表舞台に出そうということなんですが……。

まずは、わたくし植田の週末。
恒例のお茶のお稽古日には、一衣舎さんの個展の初期頃につくった館山唐桟(たてやまとうざん。千葉県指定伝統的工芸品)の木綿のきものに袖を通しました。この時期になるとひんぱんに袖を通している定番ものです。

100425-01.jpg100425-02.jpg
わたくしはこのきものを勝手に「息吹」と名付けています。頬をすりすりしたくなるほどのやわらかな地合。アンティークのバテッィク帯(灯屋2)を合わせていました。

※アンティークモールにあった灯屋2銀座店が移転とのご案内をいただきました。銀座中央通りに引っ越しされるようです。今日4/26〜5/4まで、銀座店移転感謝セールで全品30〜50%引きですって。わたくしものぞこうっと。



しなやかな細い糸で織られていること、一衣舎さん独特の絹地の総裏仕立てが裾さばきをよくしてくれますので、木綿といえど木綿にあらずといった風合いです。ところで、木綿のきものについてよく尋ねられる質問があります。

「膝が出ませんか?」→「やっぱり出ちゃいますねー」
「裾さばきがよくないのでは?」→「そのとおり」
「使いにくいですか」→「木綿以上でも木綿以下でもなく木綿そのものですから、価格の安さ、自分で始末できる手入れのし易さなど……使われる方の『どうしても譲れない部分』が何かによって見方は違います。その方のお好みですね」

と、上記のような御返事をするのが多いわけですが、この一衣舎仕立ての館山唐桟は別物。
「植物染料で染めて手織りした後、砧で布を打ち、しなやかさを生み出します。手間もかかっていて、木綿とはいえないほどの光沢。……けれど、このぐらいの木綿ならば、紬と同レベルに使用しても遜色がなく、かなり役立つことは請け合いです。私はお稽古以外のお出かけにも使用しています。」と去年のブログにこう書きました。

さて、その一衣舎さんの東京・春展が27日からはじまりますね。昨年と同様の千歳烏山の寺町通りの妙壽寺さんで開催されます。
わたくしは、今から一衣舎さんのHPを見て、新作が楽しみでなりません。

100425-03.jpg

それにそれに、今年は「一衣舎流・お茶のきもの」を提案するとのこと。一筋縄ではいかない木村さんの気質ですから、どんな作品をアプローチされるのか、個人的にも興味深いです。

-------------------

2010年 一衣舍春展

会期 2010年4月27日(火)〜30日(金)
時間 11時〜18時(最終日は16時まで)
会場 本覺山 妙壽寺 鍋島客殿(区指定文化財)
   東京都世田谷区北烏山5-15-1
電話 03-3308-1251


※昨年わたくしがこちらの春展でこしらえたものに、王上布の長襦袢があります。丈夫な絹地の総裏をつけてもらい、臀部の負担に耐えられる仕立てをお願いしたのでした。昨年の後半、ずいぶんハードにこれを着続け、また自宅で洗濯も実行。快適なことこの上なしでした。
体温調節に優れた絹。それも自宅で洗える扱いやすい絹。そして丈夫な仕立て。それに出会えるのが一衣舎で扱う長襦袢地です。おそらく今年の春展にはこれら定番商品も並ぶでしょう。

date: 2010年04月12日

subject: 袖丈に関するご質問〜その3

from: 佐藤文絵



今日はいちにち雨降りの京都です。この雨でソメイヨシノはすっかり散ってしまいそう。少々うらめしい思いで大きな雨粒を眺めています。

さて袖丈について、質問者の方が「猫も杓子も1尺3寸になっているというか、呉服屋さんでなんの確認もなく1尺3寸がまかり通っているのが疑問です」とおっしゃっていましたが、私もまったく同感です。
寸法の話のときも書きましたけど(2010/2/32010/2/18の記事参照)、最初に自分で誂えた一枚を何の考えもなしに1尺3寸にしてしまったことを、のちに後悔することになりました。お二人がご指摘のとおり、身長、肩のかたち、体型にあわせて、あるいは好み、どんなイメージできものを着たいかによって調節すべきところだと思います。

ところで、植田さんが「今は袖丈に関していろんなお好みがありますけれど、身長×0.3ぐらいがバランスがよいとされ、これが袖丈の標準サイズとして定着しています」と書かれていました。私は1/3が標準だと思っていましたので、植田さんも筆の誤り?なんて思ってしまったのですけど(スミマセン)、手元の本を確認すると袖丈の標準は身長×0.3〜0.33と書かれていました。京都発行の和裁の本にはきっぱりと身長×1/3との記述だったので、このあたりも地域差ということかもしれませんね。

樺澤さんが例にあげてくださった、身長155cmの方が「未婚のうちは1尺5寸、結婚したら1尺3寸5分に直します」というのは、身長の1/3を標準とする考えからすると自然です。つまり155cm÷3=51.7cm≒1尺3寸6分、という計算。

だけど1尺3寸が当たり前の感覚だと、長めの印象になりますね。かくいう私もきものに興味を持つ前に高島屋(ちなみに横浜高島屋です)で誂えた付け下げ訪問着の袖丈は1尺4寸7分でした。なぜ1尺4寸5分ではなく1尺4寸7分なんだろう?と不思議に思ったのですが、これがちょうど身長の1/3なんですね。普段の紬は1尺3寸5分にしていますので、このきもはたった一寸強の違いなのに袖がだいぶ長く感じられて、ちょっぴりエレガントな気持ちになります。

袖巾と袖丈の比率もわりと大事な気がします。というのは、袖丈短め(1尺3寸)の自分の袖をみたときに、「なんだか正方形にちかくて、袖っぽくないカタチだなあ」と感じたことがあります。

100412.gif

柔らかものなら、袖らしく感じる比率の1尺4寸5分に。普段っぽい紬には1尺3寸5分、というのが今の私の結論です。残念ながら撫で肩でない私は、普段の紬を1尺4寸5分にすると、まさに「バッサバッサ」になってしまうかも!

date: 2010年04月10日

subject: 袖丈に関するご質問〜その2

from: 植田伊津子



わたくしの袖丈は、1尺3寸2分((50.1cm)という不思議な寸法にしています。
もとはお下がりの伯母のきものがそうだったため、伯母のサイズに合わせてきものをつくりはじめ、それをそのまま踏襲しているのです。

わたくしが自分のお金できものをつくりはじめたときは、すでに一児の母となっていましたから、伯母が決めた寸法を変更せずに今に至っています。
一般的に未婚女性は長め、歳をとるとともに袖丈は短めになります。そして晴れ着系は長め、普段着系は短めにするという傾向があります。

質問者さんの年齢を存じ上げませんが、有名なバイプレーヤーのひとりに沢村貞子さんという女優さんがいて、この方は生涯きものを着ていたといいます。
沢村さんのマネージャーを務めた山崎洋子さんのエッセイ『沢村貞子という人』(新潮文庫刊)では、沢村さんが歳とともにどんどん袖を短くされた旨が記されています。「歳をとると袖が重くなるのよ」と短くした分は縫い込まず、いさぎよく切っていたとか。

ところで、わたくしの身長は163cm。
今は袖丈に関していろんなお好みがありますけれど、身長×0.3ぐらいがバランスがよいとされ、これが袖丈の標準サイズとして定着しています。
163cm×0.3=48.9≒49cmとすると、わたくしの寸法(50.1cm)はそれより1cm長いくらいですから、さほど長くも短くもありません。おそらく仕立て上がりのきものは、現代女性の平均身長を163cmと設定しているため、袖丈を1尺3寸に据えているものと思われます。

既製品のきものがほとんど1尺3寸で流通しているので、呉服屋さんで新規にきものを誂える場合も、この寸法が独り歩きしているのかもしれませんね。

さて、一般的な袖丈について申し上げれば、大阪と中心とする上方は、「着倒れ」の京都の影響を大きく受けた文化圏ですから、未婚女性は袂を長めにする方が多いようです。これは発注元であるお母さま、お祖母さまたちのこだわりかもしれません。
(年若のお嬢さん自身が袖丈にこだわるケースはほとんど皆無です)

なぜかといえば、「袂」の面積が大きければ、動きがよりいっそうたおやかに見えるからでしょう。訪問着や付下げはもちろんですが、習い事のお稽古着でも長めの袖丈にするケースを目にします。

もともときものの原型である小袖は身八つ口やおはしょりがなく、脇は縫いつけてあり、袖自体も短いタイプでした。
しかし、江戸時代中期〜後期にかけて、徐々に長めの袂が流行っていったのですね。おそらく身分制度が定着し、堂上や公家、大名たちといった上級階級の女性たちをうつくしく、そしてかわいらしく見せる形態として好まれていったためともいえます。良家の子女たちは、働くためのきものを着る必要はありませんでしたので、装飾的な要素が発展したのでしょう。これが振り袖の原型ですね。

また帯が幅広になり、胸高に締められるようになったことも、身八つ口ができたり、振りが独立する要因として挙げられます。対丈で帯を下目に締めていた頃なら、長い袂は邪魔になりますよね。

そして、明治以降は振り袖が未婚女性の晴れ着として定着していきました。そして今でも振り袖は、まわりに『独身』だと知らせるアイコンです。
いや、もちろんいろんな方がいらして、既婚でも舞台衣装やお好みで着用になる方もおられますよ。けれど一般論として、振り袖は若い未婚の女性のものといっても異論はないでしょう。

なんだか話がどんどん横道に逸れてしまって、ごめんなさい(^_^;)。
話を元に戻しますね。さて、わたくし自身は、あんまり袖丈にこだわりを持っていないのは前述したとおり。

ただ皆さんのいろんな袖丈を拝見してきて、個人的な印象をいえば、いかり肩だったり、体の厚みがある方は裄が長めになる傾向ですから、こういう方があまりに長い振りにすると「バッサバッサ」と袖を揺らして、かえってたおやかな風には見えにくいように感じています。織物のきものは、とくにそうかもしれません。
撫で肩の方でしたら裄がさほど長くなりませんから、長めでもそれなりにバランスよく見えるんですけれどね。

全体に対する袂のバランスは、身長に対するそれもありますけれど、じつは肩のかたちや体型にも微妙に関係するのではないかと思っています。はい。

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。