date: 2010年06月06日

subject: 単衣の小物合わせ


from: 樺澤貴子



仕事に没頭していて、きものに袖を通す気持ちのゆとりが欠けていた、この一ヶ月ほど。はっと気づくと、袷の時期は過ぎ、単衣の季節となっていました。皆様、ご無沙汰しております。今日は、6月4日(金)に出かけたパーティの装いについてお話したいと思います。

選んだきものは、この4月に「きもの英」で誂えた裾濃の色無地です。単衣用の色無地を持っていないため、以前からの懸案事項でした。正絹を白生地から選び好みの色に染めていただくか、雨の多い季節ゆえに洗えるきものを選ぶか・・・・・・悩んだ結果、今回は後者に決めました。展示会に伺った日が、偶然にも植田さんとお約束のあった日でしたので、一緒にお見立ていただいたのが、この一枚。

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ベースは、桜鼠に少しベージュ味が加わったようなニュアンスのある色。裾と袂下の部分は、なんと表現したらよいのかわからず『日本の色辞典』(吉岡幸雄著、紫紅社)を調べてみると、鴇浅葱(灰色味のある紅色)という名称がピタリとくる感じです。お茶会に着ていくことを考えて、一ツ紋を刺繍で入れました。


新しいきものが届いて浮かれていたら、いざ着ていく段になってしどろもどろ。冒頭にも記したとおり、5月に一度も着物を着なかったため、衣替えのスイッチが入っていなかったのです。前日の夜に慌てて長襦袢を取り出したものの、少し迷ったのは、楊柳と絽の半衿のどちらをつけるかということ。袷や夏もののように明確なルールがなく、季節の間を移ろう単衣の装いは、自分のなかでもルールがあいまいで時として迷ってしまいます。

実は先日、ちょうどKayoさんから、単衣のきものにおける帯合わせや長襦袢、小物についてのご質問をいただきました。Kayoさん曰く「単衣のきもに、単衣帯を合わせるのは少し暑そうに見えます。体感温度を調整するために、絽の長襦袢を合わせた場合の半衿や小物は袷のものですか?それとも夏ものですか?」という内容でした。

単衣のきものには、綴れ帯や博多帯などの単衣帯はもちろん、夏帯を合わせることもできます。長襦袢はルールでいうと単衣のものということになりますが、温暖化のこの時代、絽の襦袢もOK。半衿は基本のルールでは楊柳または絽縮緬(普通の平絽よりも、ほっこりと暖かくみえるため、きもの通の方などは夏の絽の半衿と使いわけています)と言われていますが、夏用の平絽も今ではOKですよね。つまり、麻や自然布などの夏限定素材以外は、長襦袢や小物類は夏ものとのボーダーラインがないことに。ただし、これは6月の場合であって、9月の単衣の場合には、季節を先どって袷の季節の小物に歩み寄るというのが私の実体験。それにしても、これだけ選択が広いと、実際に迷ってしまいますよね。

私の中で決めていることは、原則的に「見える部分の素材を合わせる」こと。つまり、
1.帯が単衣帯なら半衿は楊柳
2.絽の帯を合わせた場合は、半衿も絽
といった具合です。帯揚げはほとんど見えないので、その時々ですが、基本は季節を先取り感を大切にしたいので絽または駒絽縮緬などを合わせます。紗や櫛織りなど絽目のない夏帯の場合には、基本的には絽の半衿を用意しておきます。

さて、結局のところ帯は絽の袋帯を合わせたため、半衿も平絽をつけました。パーティ当日のコーディネートは、ご覧のとおり。

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菊と芝草の黒地の袋帯に水色の帯締め、白に近いシャーベットピンクの駒絽縮緬の帯揚げを合わせました。また、きものまわりの小物もさりげなく、衣替え。桜鼠のきものと一緒に持った淡紅色の絽縮緬の風呂敷のグラデーションが、遠目に様になっていて、一人心の中でニンマリした次第です(笑)


植田さんや佐藤さんの単衣模様はいかがでしょうか?



date: 2010年05月30日

subject: 足袋を傷めない工夫

from: 佐藤文絵



先日教えていただいた足袋の繕い、さっそくやってみましたよ。わりと大きな5ミリくらいの穴が空いてしまった箇所には当て布をしてチクチク(袷になっているその間に当て布を入れ込んでみました)。小さめの穴は植田さん方式で糸だけで繕ってみました。
ただあまり上手にできておりません。写真を載せたいところですが、まだ恥ずかしい感じ。家の中で履くならいいけど、出掛けるのはちょっとなあという仕上がりです(涙)。う〜ん。もう少し修行が必要です。

ところで、すでに空いてしまった穴は仕方がないけれど、まずは穴を未然に防ぎたい。先週はお茶会の手伝いをさせてもらったので、いくつか気をつけてみました。結果、かなり効果がみられました!

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お茶会で一日履きましたが、ほとんど無傷。


まずはちゃんと親指の爪を切ること。もちろん切り過ぎは注意。痛くなります(経験済み)。そして教えていただいた通りしっかりヤスリをかけました。親指の爪は他よりだいぶ厚いですよね。角を取って、指と爪ができるかぎりフラットになるようにしました。これは本当に重要だと思いました。
それから実験的に親指の爪先に“メクリッコ”を被せてみました。メクリッコ、わかりますでしょうか。文房具です(笑)。

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事務方の必需品、メクリッコ。これを爪先に。ちなみにサイズはSからLLまで揃ってます。足の親指にはLLがよろしいかと。


爪先がとんがっているから、そこだけ擦れて綻びが生じます。足袋を履く前に爪先をちょっと何かで覆ってあげるとだいぶ違うように思います。メクリッコはきっちり固定されるところがよいのですが、やっぱりカッコ悪いでしょうか(笑)。足袋にゆとりがあるなら化粧水用のコットンや脱脂綿のほうがいいかも。
植田さんからは、足袋のサイズを少し大きめにすることでダメージがある程度緩和されるかもとのアドバイスもいただきました。私は銀座むさしやさんの〈23.6cm〉の〈甲高〉を履いているのですが、かなりぴったりしています。今度はひとつ大きめのものを試してみますね。


さて、そんな足元の涙ぐましい話はさておき、茶会の日のいでたちはこんなふうでした。

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色無地に唐織の袋帯を合わせました。袷のさいご、単衣直前の5月末だから、軽めの色合いに。この季節は綸子の帯揚げが気分に合います。


5月末というと、無理して袷を着るかそれともフライングかと頭を悩ませるものだけど、とても涼しい日でしたので袷でちょうどよかったです。ただし長襦袢はすでに単衣。半襟はセオリーどおり塩瀬、帯揚げは縮緬を避けて綸子にしました。

まもなく6月。衣替えですね。毎年のことなのに、今は何だったっけ?とテキストなどをよく見返します。このブログでもちょうど一年前に「衣替え」について取り上げました(→5月 衣更え・お手入れ)。
単衣の帯合わせについてご質問が届いています。私も春単衣から盛夏、秋単衣までは、帯合わせをよく悩みます。次回はそんな話題になりましょうか。

date: 2010年05月18日

subject: 盛夏の茶席のきものをつくりたい(その2)

from: 植田伊津子



昨日のご質問の件。
「白っぽい地色に波と雲文様」「黒っぽい地色に花が少なめの秋草」のきものでしたね。
わたくしは夏のきものとして、どちらも素敵だなあと思いました。この質問者さんの考え方が興味深いのは、長襦袢ときものの模様、これらを一対としてとらえているところで、長襦袢+きものを重層的に描いて文様でひとつの『物語』をつくろうとしている点はたいへんおもしろいですし、こういう着こなしはじつに知的ですね。

〈絽・紗〉
さて、けれどわたくしが気になったのは、これを絽で表現しようとしているところです。絽のきものって思っているほど透けないんですよ。絽と紗の違いについては、昨年わたくしはこのように説明しています。

夏の柄物のきものは絽という生地でつくられることが多い点からすると、ご希望のきものは絽のチョイスがよさそうだと思うのですが、質問者さんが考える長襦袢の柄が透ける効果はかなりむずかしいかなと想像されますね。

では表地のきものを紗にすれば、下の長襦袢の柄は透けますが、透けて見えるということはすなわち目が粗い生地であるということとイコールですから、この紗という生地は、大胆な柄付けは可能でもデリケートで緻密な模様は表現しにくいかもしれません。

それでも、ご希望の柄を描いた紗のきものに長襦袢を重ねたと仮定してみます。
重ねたときに長襦袢の柄を浮かび上がらせるためには、長襦袢の柄が「くっきり」「はっきり」、そして「大きめ」に表現されていなければ、ぼやけてしまうんですよ。ということは、かんたんに言ってしまえば、「えっ、こんなどぎつい長襦袢?」と思われるぐらい強い調子の模様でなければいけないということなんですね。

〈お茶のシーンで使うとき〉
また、質問のなかで「これがお茶席で使えるかな……」という点も不安に感じておられました。
「白っぽい地色に波と雲文様」「黒っぽい地色に花が少なめの秋草」の柄のきものでしたら、お茶席に使って問題ありません。ふつうにアリです(全国区で使えるきものとなりましょうし、京都でももちろんOKです)。

・それほど改まらない茶事の客側
・大寄せ茶会や気軽な茶事の亭主側
・少し改まった大寄せの茶会の客側
どのシーンに使っても、差し支えないかと思います。

ただ、「海の景色」「秋草を重層的に表すもの」をつくるということになると、たとえば海の景色のほうを例にあげれば、濃色の地色にかもめが強く表現された長襦袢は、洒落物的なニュアンスが強くなり、お茶席のきものの感じからは少し離れるような気がするのです。
ネガ+ポジのように反対色の組み合わせで長襦袢ときものを組み合わせると、傍目には個性的な着こなしに映ると言ってよいでしょう。

うまくいえませんが、お茶のきものは「過ぎたるはなお及ばざるがごとし(物事の程度を越えた行き過ぎは、不足していることと同じで好ましくない)」的な面をあり、相手を立てたり、茶会の道具組や「一座の和」を尊重したりという気持ちを着るもので表す部分もあるように思うんですよ。

そういうことを考えると「長襦袢については再考されてもよいかな」、「こういうネガポジの組み合わせ方は、お茶とは別のシーンで楽しく着られるほうがよいかな」とわたくしは思いました。

〈お誂えについて〉
本当は質問者さんが一番懇意にしている呉服屋さんでおつくりになるのが間違いありません。というのも、それなら、こちらの懐具合もなんとなくわかっているでしょうし、あなたに合った色柄について、日頃の付き合いから一歩踏み込んだ助言してくれるだろうと思うからです。

「懇意にしているところがない……」という場合は、周りのきもののベテランさんたちに近隣の呉服屋さんの評判を聞いて、よさそうなところを紹介してもらってみてください。またもし、わたくしでよければ、きもののアドバイザーのお仕事で呉服屋さんの展示会にいるときにいらしてくださったらご相談にのります。展示会のときに、事前にご案内を差し上げますので、一度メールをくださいませ。

ちなみに、当初のご希望で長襦袢を手描きの友禅で誂えた場合、きもの地とさほど変わらない金額はかかります。柄の色数や手間にもよりますが、17、8万〜ぐらいと予想します。ふつうの長襦袢の柄物は型染めが主で、手描きの長襦袢はかなりの贅沢品なんですね。

また、ご希望の柄の付下げの友禅を誂えられる場合、20万台ぐらいからと思っておけばよいでしょう。この金額も、地域や呉服店によって違いがあります。

けれどですね、質問者さんのきものに限っていうならば、ご希望の柄行きは夏のきもののベーシック柄。ということは、お誂えをしなくても既製品の中でそれなりに合うものがあるかもしれません。
わたくしが今日お話ししたことなども踏まえ、一度、考えを整理をし、自分がほんとうに譲れない部分は何かを明確にしてからきものをつくられるほうがよいと思います。

〈長く着るきもの〉
90歳まで着られるかどうかはわかりませんが、柄の大きさや地色次第では、20〜30年は着られる長命のきものはできます。夏に人気の薄ブルーやモーブなどの紫系統、もしくは白といった色は、経年劣化して黄色くなると焼けが目立ちますので、これらを避ける色目を選んでもよいですし、途中で染め替えてもよいですね。
黒、臙脂、紺などの地色は、40年ほど経っても、焼けがあまり目立たない色です。

きものを褪色させないために、陽射しの強い季節はきものの上に上着(道行や道中着、羽織)を羽織ることをおすすめします。夏でも夏用の上着がほしいですね。日光にきものをされさなければ、きものの褪色はずいぶん防げます。

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