date: 2010年02月03日

subject: 寸法のお話・その1

from: 佐藤文絵



昨年の3月にはじめた「きもの*BASICルール」は、もうすぐ1年になろうとしています。最初に設けた12のテーマのラスト、今月のテーマは〈着付けと仕立て〉です。語るべきことが多いですね。そしておそらく文章にするのが一番難しい。いやはや、うまくいくでしょうか。
まずは仕立ての元になる「寸法」のことから、話をはじめたいと思います。

わたしの場合は、きものを好きになって最初に手にした一枚はアンティークのお店で買ったきものでした。なぜなら手元にも実家にも自分が着られるサイズでかつ普段に着られるきものがなかったから。後から思えば、そのきものは自分の寸法に合ったものではなく、全体的に小さいけど「まあ着られる」サイズのものでした。でもそのきものに合わせて長襦袢をつくってしまったんですね。
それからしばらくして、縁あって沖縄旅行中に反物を買い求め、仕立てをどこかにお願いしないといけなくなりました。特に当てもなくどうしようかなあと考えた末、ときどき立ち寄っていた呉服店へお願いすることに。この時もあまりよく考えずに、その小さめの長襦袢をお渡しして、それに合わせて仕立ててもらいました。夏は夏ものでやはりアンティークのきものを買い、それに合わせて長襦袢を一枚お誂え。ああ、迷走してます(笑)。

とりあえずで用意したきものに合わせて、きものを作っていくのはまずい。ちゃんと自分のサイズを測ってもらわなくちゃ。……とようやく気づいたのは、きもの熱を発症して1年ちかく後のこと。それで評判の仕立て屋さん、一衣舎の木村さんのところへ反物を抱えて相談に行き、初めて自分の身体にちゃんと合った寸法を出してもらいました。もちろん仕立てもお願いしました。身体に合ったきものはとても着心地がよく、着付けがヘタでもそれなりになるようでした。ああよかった。これで大丈夫。ほっと胸をなでおろしました。

だけど、これで終わりではないんですよね。なぜなら、その時わたしはどこで腰紐を結ぶのが気持ちいいのか、どんなシチュエーションできものを着たいのかなど、きものとの付き合い方がまだ定まっていなかったのです。

一衣舎・木村さんの著書『きものの仕立て方・頼み方』(世界文化社刊)の冒頭に「仕立てを頼むポイント」が書かれています。

1) 正しい位置で正しく採寸する
2) 仕立てを頼む人に普段のきもの姿を見せる
3) 自分のライフスタイルを伝える
4) 衣紋の抜き方、帯の位置など着方の好みを伝える
5) 腰紐の位置を伝える

この5つは本当に大切なポイント。
たとえば腰紐の位置。そのときホントはよくわからなかったのですが、腰骨のあたりで結びます、と伝えました。理由はそれまで着ていたきものの身丈が短かかったから腰骨で結ぶことに慣れていたこと、それと何となく腰骨で結ぶほうがツウっぽい気がして(笑)。
でも今ではウエストで結ぶ派です。理由は着崩れがしにくいこと、腰紐の結び目が帯より下に出てゴロゴロするのを避けたいから、きものを着たあとに長襦袢の衿先を引っ張りやすいこと(腰骨で結ぶと届きにくい)の3つ。だから身丈はその後長くしました。それ以外もいくつか気になるところに修正を加えて、今に至っています。

しみじみ思うのは“寸法は一日にしてならず”ということ。どんなふうに着たいのか、どんな場面で着たいのか、そのあたりが定まるにしたがって、いい寸法がみえてくるように思うのです。それに、年齢や体型の変化、きものを着るシチュエーションの変化に合わせて、今後もまた変わっていくのかもしれません。


個人的な話を長々としてしまいましたが、いただいたきもの、母や祖母が着ていたきものからスタートすると、同じパターンになりがちな気がします。読んでくださっている皆さんはいかがでしょうか。

もちろん着付けが上達すると、ぴったり寸法でなくても着付けでカバーすることができますよね。それはそれできものの魅力。でもせっかく反物から仕立てるのならば、きれいな着姿になる、気持ちのよい寸法で仕立てたいなあと思います。

ただ、悩ましきは、相談できる窓口がすくないこと。信頼できる呉服店一軒とお付き合いし、寸法はそこに全て把握してもらっている――そんなきものライフを送れたらいいのですが、なかなかそうもいきません。きものを誂える店はひとつではない、いただきものやリサイクルきものを仕立て直すこともある、時にはオンラインショップで反物を買うこともある。そういった浮気性のきもの好きは、寸法を相談し仕立てをお願いできる相手が必要です。一衣舎さんのような窓口が全国に増えることを切に願っています。かくいう私も、そうそう東京まで相談に伺えないものだから、身近におられる仕立て屋さんをつかまえては、相談させてもらっています。

それと、自分自身もある程度は寸法について知っておいたほうがいいですね。仕立て屋さんに相談するにも、そのほうがずっとスムーズにいきます。着やすいきものと着にくいきものがあったら、どんなふうに寸法が違うのか、測ってみれば「なるほど」と思えることがいくつも見つかると思います。

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呉服店や仕立て屋さんは、きっとこんな表を参照しながら、寸法を出してくれています。身丈を出すには、身長を基準に。身幅を出すには、ヒップを基準にして。その上で、お茶をするならプラス何分とか微調整をするはずです。ただし店によっては「身長○○センチ、標準体型」くらいの情報で寸法を出してしまうこともあるようです。これはちょっと乱暴ですね。
上記の写真は『和服寸法百科』(ふたば書房刊)の本とその付録の表です。呉服関係の方からお借りしてきました。一冊まるごと寸法について書かれたプロフェッショナル向けの本ですが、わたしたち素人にも参考になります。残念ながらすでに絶版になっているのですが...。


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寸法を測るときは、なんといっても竹差しがベスト。鯨尺メジャーも持っていますが、使い勝手は竹差しにかないません。2尺の竹差しを愛用してます。


さて、わたしが一衣舎さんに出してもらい、その後いくつか調整して至った寸法はこんな感じです。

寸法表
身丈(肩から)4尺 5寸 5分( 172.4 cm)
裄丈1尺 8寸 5分( 70.1 cm)
肩巾 9寸 2分( 34.8 cm)
袖巾 9寸 3分( 35.2 cm)
袖丈1尺 3寸 5分( 51.1 cm)
袖丸み 1寸 0分( 3.8 cm)
袖口 6寸 0分( 22.7 cm)
袖付(前) 6寸 5分( 24.6 cm)
袖付(後) 6寸 0分( 22.7 cm)
前巾(腰) 6寸 7分( 25.4 cm)
前巾(裾) 6寸 5分( 24.6 cm)
後巾(腰) 7寸 6分( 28.8 cm)
後巾(裾) 7寸 3分( 27.7 cm)
抱巾 6寸 2分( 23.5 cm)
合褄巾 4寸 0分( 15.2 cm)
衽巾 4寸 0分( 15.2 cm)
褄下2尺 2寸 5分( 85.2 cm)
繰越 7分( 2.7 cm)
衿付込み 7分( 2.7 cm)
衿肩あき 2寸 5分( 9.5 cm)
衽下り 5寸 5分( 20.8 cm)
共衿丈1尺 3寸 0分( 49.2 cm)
身八つ口 4寸 0分( 15.2 cm)


ついでに図にもしてみました。文字だけだと、頭がごちゃごちゃになってくるのです(笑)。赤字の三桁を、○尺○寸○分と読んでください。

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ところでこの図は、普段目にする“きものの図”と少し違うことに気づかれたでしょうか。

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きものって、すべて直線で直角に縫われているイメージを持ってしまうのですが、じつはバストからウエストにかけて細くなっていたり、裾つぼまりになるよう裾にかけて細く仕立てている場合があります。日本人の体型の変化に伴って、より洋服的なシルエットに近づいているんですね。
ちなみにこの図は私の寸法をそのまま縮小したもの。みなさんのきものはどんなカタチをしているでしょうか。

さて、どうしてこの寸法になったのか、ここはこのあたりを気をつけたほうがいい・・・などの細かい話に移りたいところなのですが、だいぶ長くなってきました。いったん休憩。ふ〜(笑)。続きはまた日を改めて。

date: 2010年02月14日

subject: 寸法のお話・その2

from: 樺澤貴子



凍て付く雪が舞ったかと思えば、急に穏やかな春が巡ってきたり・・・冬のなごりと春のきざしが、行ったり戻ったり。それに合わせて、自分の体や気持ちも引き締まったり緩んだり。でも、日差しは着実に春の光へと変っていて、きものの装いにも春の薫りをひと匙添えて出かけるようになりました。まずは、原稿のアップに間を置いてしまって、すみませんでした。

それにしても植田さんの御召への熱い思いは説得力がありますね。私も今年は光沢のある無地感の紋御召を仕立てたいと目論んでいたところ。20、21日の展示会には、ぜひ足を運んでじっくり吟味させていただきます♪

今日は、前回の佐藤さんに引き続き、寸法のお話をしたいと思います。
実は、このテーマは私の苦手とするところ。きもの寸法の仕組みに、なかなか関心がもてないため、本日は少々お恥ずかしい実態なります。でも改めて自分きものを測ってみて、寸法は測る人によって好みや考え方が異なるという現状も見えてきました。それらを踏まえて自分は何をベストとするのかを考察したいと思います。

今回は寸法の基本である【裄丈】【袖丈】【身丈(肩から)】の3つの要素を柱にしたいと思います。まず、下記は別々のお店で寸法を測っていただいた際の表です。なぜ、同じ人間なのに、これほどまでに違うのかしら?

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右は7〜8年ほど前の寸法表。その寸法表をもとに、別の呉服店さんへ伺うと、「あなたの場合、ここは短いわ!ここはもう少し長く!」と赤入れをされる次第。それを素直に?聞き入れていくうちに、寸法はどんどんバラバラに。左は昨年4月に一衣舎さんで採寸していただいたもの。この時は王上布の長襦袢を誂えたため、まだ一衣舎寸法できものを仕立ててはいません。



【裄丈】
私は実家にmyサイズのきものがなかったため、きものを着始めた頃は、母のきものやアンティーク店で求めたものを中心に着ていました。母とは身長はほぼ同じで約157cm。ところが、手の長さにはかなり差があり、母の裄丈は1尺6寸5分。私にはさすがに8分丈のトップスを着ている感覚だったのですが、10年前当時の写真を見返すと、ただきものを着ていることが嬉しくて、ツンツルテンの裄で満面の笑みを浮かべている私が写っています。無邪気なような、ちょっとアホな子みたいな・・・。単純に手の長さが違うというだけでなく、母の頃と現代とでは、裄丈の考え方が違うようです。母のきものは手首の骨から7分〜1寸は上。小津安二郎をはじめ昔の映画を見ていても、おしなべて皆様「ちょっぴりツンツルテン」。でも、今は「手首の骨が半分隠れる」または「完全に隠れる」ほどの、ちょっと長めが主流ですよね。その原因は、採寸方法の違いにもあったようです。母の頃は腕を水平にして測っていたようで、手を下げて肩を経由して測るより約1寸の差が生じます。

自分でアンティークのきものを買うようになって、まず店の女将に言われたことは「長すぎる裄はみっともない!」ということ。その頃の裄丈は1尺7寸3分〜7寸5分が中心。一度など呉服店で採寸していただいた表を、女将に見せると「裄が1尺8寸だなんて、ズルズルして格好悪いわよ」とのお言葉。その頃、着こなしをお手本にしていた熟達者のお姉様方が「ちょっと短めスタイル」だったことや、師匠にいただいたきものがいずれも1尺7分5分だったため、「ちょっと短めがツウっぽい」と、それを自分のスタイルとして納得してしまったのです。

その後、何軒かできものを誂えた際には、自分の思い込み寸法に自信がなかったこともあり、その都度採寸してもらい、結局は呉服店の女将の匙加減によって1尺7寸7分、1尺7寸8分、1尺8寸、1尺8寸5分と4種類の裄が混在するのが現状です。

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左から師匠にいただいた付下げ小紋1尺7分5分、アンティーク店で求めた紬を一衣舎寸法に直した1尺7寸7分、きもの工芸大黒屋で誂えた付下げ小紋1尺7寸8分、銀座もとじで誂えた付下げ小紋1尺8寸、京都で誂えた仕服の刺繍の小紋は1尺8寸5分。手首に印をつけてみると、右の写真のようになります。


寸法は自分がどんなシーンできものを着るかということによっても違うということを、佐藤さんも触れていらっしゃいました。小唄の稽古や観劇、ちょっとしたお食事会といった場面では1尺7分5分の裄丈にそれほど違和感を感じていませんでした。でも、3年前にお茶のお稽古を始めると、手を伸ばしてお道具を取る場面などで裄の短さが気になりはじめました。パーティに行く機会も時々あるため、少し長めのほうが「おっとりとした雰囲気」に見えて、優雅に見えるように感じています。1尺8寸5分はさすがに長いけれど、1尺7寸7分〜1尺8寸がほどよい寸法のようです。

また、きものの種類によっても心地よく感じる裄丈は違うように思います。紬や小紋などは1尺7寸7分、パーティ仕様の華やか小紋や訪問着などは1尺8寸でもいいように思います。ただし、それに合わせた長襦袢を複数誂えるとなると大変!そんな財力はとてもありません(笑)。今のところは、1尺7寸7分の裄丈に合わせて、長襦袢の裄丈は1尺7寸4分に統一しはじめました。
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長襦袢の裄が出てしまった場合は、涙の安全ピン作戦。また、うそつき襦袢の裄丈はきものに合わせて2種類用意してあります。


また、私のきものブレーンの中のある方は、大柄の身長をカモフラージュして、全体をしっとりと見せるために、手首の骨が完全に隠れて、なお+2分の裄丈にしています。自分をどう見せたいか、全体のバランスをどのように演出するかということも寸法の基準になるということを考えさせられました。寸法って、奥が深い・・・。

【袖丈】
袖丈は地域や年齢、未婚か既婚か、または、素材によって考え方はさまざま。157cmという身長からすると、袖丈は1尺3寸が一般的。ただし、シボのぽってりとした縮緬のきものは、「いずれ伸びでしまうため少し短めに」とアドバイスされ、1尺2寸5分と8分のものがありました。また、30代の始めに京都で柔らかものを誂える際に言われた袖丈は「未婚のお嬢さんなら1尺4寸」とのこと。また、以前取材をさせていただいた和菓子店のお嬢様は身長155cmで、袖丈は1尺5寸。その方の身長からすると小振袖のようなバランスだったのですが、それはお母様の考えによるもので「未婚のうちは1尺5寸、結婚したら1尺3寸5分」とのこと。身長からすると1尺3寸5分も長い気がしますが、「京都らしさ」を感じました。また、東京のある呉服店では「お茶のお稽古をするなら、袖丈を1尺4寸するといいわ」と言われました。理由を尋ねると、正坐をした際に畳にしんなりと垂れる袖のドレープが、最も美しい長さが1尺4寸なのだそうです。皆さん、それぞれに美学や哲学を持っているのですね〜。でも、寸法の知識がなかった私にとっては、これらの話にずいぶんと左右されたものです。

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上から縮緬の付下げ小紋1尺2寸5分と8分。オレンジの小紋は1尺3寸、グレーの水玉小紋は1尺3寸3分でした。このグレーの小紋は裄丈も1尺8寸5分、全体的に長めの寸法がお好みのようです。右の写真は初釜のきもので紹介した黒の宝尽くしの訪問着。これは優しい雰囲気で装いたかったため袖丈をあえて1尺5寸に仕立てました。そのため、長襦袢の袖だけをきものの内側に仕込み、下にはうそつき襦袢の本体を着ています(上の写真のもの)。



【身丈(肩から)】
身丈は佐藤さんも仰るとおり、腰紐を結ぶ位置でかなり違ってきますよね。母のきものやアンティークのきものを着ていた当初は4尺に満たないものもあったため、腰骨の低めの位置で締めていました。ただし、これは腰紐がおはしょりに響くリスクがあるため、自分で誂えるようになってからはウエスト派に。それをお伝えした上で採寸しても、一番長いもので4尺3寸、手持ちのきもので一番多いのは4尺2寸。一衣舎さん寸法によると4尺1寸5分。4尺3寸まで身丈あると、おはしょり長さを決めた後に余っている部分を引き上げて腰紐で結ぶというひと手間が必要になり、少々腰周りがもたつきます。プロの着付けの方などは、その方がおはしょりの部分がきれいになると仰られますが、4尺3寸はやはりちょっと長い感があります。一方4尺2寸は、引き上げ部分を作るほどの長さはなく、帯を締めてからおはしょりを中に押し込むようにして調整しています。そう考えると4尺1寸5分は、おはしょりを調整しやすいサイズなのかもしれません。

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上から身丈4尺1寸、4尺2寸、4尺3寸。


また、おはしょり回りで気になることが、もう一つ。それが【褄下】の長さです。写真は同じ4尺2寸の身丈でありながら、褄下が違うという例です。

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グレーの小紋は褄下2尺1寸、オレンジの小紋は2尺5分。


わずか5分の違いなのですが、オレンジの小紋は着付けたときに褄下のラインが微妙に出てしまいます。このラインは本来おはしょりの中に隠れるもの?これもある呉服店の女将さんが「着付けたときに褄下のラインが見えると、足が短く見えるでしょ」と言われてハッと気付いたこと。一衣舎さん寸法によると褄下は2尺5分。ということは、ちらりと褄下のチラ見えはOKということなのかしら?植田さん、佐藤さんはどうお考えですか?佐藤さんの褄下は2尺2寸5分かぁ、足長いですね〜(笑)

ずいぶん長くなってしまいました、ごめんなさい(涙)。バラバラの寸法を、これから少しずつ修正していくには、お金と時間がかかりそう・・・とほほ。落ち込みながらも、まわりの方にお話を伺うと、ある人は「最終的に寸法が揃うまで10年かかったわよ」。そして、また別の方は「10代、20代で着ていた寸法は、30代半ば頃から微妙に体形や好みが変化してくるのよ。全て直すのに、やっぱり10年かかったわ」とのこと。なるほど。私も数年計画で優先順位をつけて、少しずつお直ししていこうっと。

次回は、体に合わない寸法や自分の体形の悩みをカバーする、着付けの工夫についてお話したいと思います。では、佐藤さんの寸法の続きのお話を楽しみにしています。

date: 2010年02月18日

subject: 寸法のお話・その3

from: 佐藤文絵



こんにちは。またまた間があいてしまってごめんなさい。前回に続いて寸法のお話をしたいと思うのですが、先日樺澤さんが紹介してくださった“寸法が揃うまで10年かかったわ”との経験談には、やっぱりそうなのか!と納得。コメントをくださった方々もそれぞれに紆余曲折がありそうなご様子です。一発でうまくいくことのほうが、珍しいのかもしれませんね。

余談ですが、裄丈調整には樺澤さんが「涙の安全ピン作戦」(笑)を紹介してくだっていたけれど、前にお話した文房具の「CLIPPIE」(→2009/6/5「裄丈のお直しと対策」)もおすすめです。安全ピンや針を通すのは、度重なるとちょっと気になります。ぜひこちらも使ってみてください。


さて、先日掲載した寸法表をご覧になって、こんなに詳しく寸法を出すのかと思われた方もあったかもしれません。実際のところ、もっと省略してもかまわないと思います。重要なのは、水色に色づけをしているところ(文末に寸法表&図を再掲しました)。寸法表って意外と呉服店によって項目がまちまちですが、この水色の部分はだいたい書かれているはずです。

では、ひとつひとつみていきますね。
『きものの仕立て方・頼み方』(世界文化社刊)と『和服寸法百科』(ふたば書房刊/絶版)を参考にしつつ書き進めますが、間違いもあるかもしれません。気になるところがありましたら、ぜひぜひご指摘くださいませ!>プロフェッショナルの方、お詳しい方

【1】身丈
標準的には、身丈はほぼ身長と同じ長さとされています。ただし人によって身体のバランスに比べて頭が小さかったり大きかったり、首の長さも一様ではないから、その分を考慮します。ふっくら体格ならば、身体の厚み分を身丈にプラスするようです。
そして腰紐を結ぶ位置ですね。ウエストと腰骨は6〜7cmほど離れています。ウエストで結ぶ派はその分長めに身丈をとらないといけません。
私の場合は4尺5寸5分に落ち着きました。ウエスト派で身長167cmなので、ものによっては反物の長さが足りず、4尺5寸5分の身丈がとれない場合があります。そんなきものは、腰紐を結ぶ場所を変えて調整しています。腰で結べば4尺3寸5分で十分。もっと短くても大丈夫。マイナス2寸は十分許容範囲です。
それと、そもそもどのくらいの着丈で着たいかということも多少は関係するでしょうか。今の感じだと床すれすれの長さで着るのが標準。でも昔はもっと短めだったろうし、今でも働き着なら短めでしょうね。お茶のかたがたも短め。そうそう、浴衣はくるぶしが見えるくらいで着るから、ぐっと身丈を短くしています。

【2】裄丈
裄丈も樺澤さんがお話してくれたとおり、昔は短め、今は長めが主流。私は1尺8寸5分。長くも短くもないちょうどよい長さだと思っています。
母のきものが1尺7寸5分なのですが、時々借りることがあります。その差1尺=3.8cm。樺澤さんも昔は短め裄丈のお母上のきもの(樺澤さんのベストより1尺2寸〜1尺5寸短いということですね)をそのまま着られていたとのこと。“10年前当時の写真を見返すと、ただきものを着ていることが嬉しくて、ツンツルテンの裄で満面の笑みを浮かべている私が写っています。無邪気なような、ちょっとアホな子みたいな・・・。”なんて書かれていました。1寸短めは、ちょっとツンツルテンだけど、なんとか許容範囲かなあと思っているのですが、さてどうでしょうか。
短めの裄のきものを着ると、なんとなく快活な気分になります。すごく動きやすくて。盛夏のきものは5分くらい短いほうがいいかもしれません。単衣用、盛夏用と絽の長襦袢を2枚持つことができるなら、その選択肢は大いにアリ。長襦袢を着ない夏のゆかたはいつも短めの裄丈にしています。
ところで、1尺8寸5分の裄は、1尺巾の反物でギリギリセーフの寸法。これ以上長くなると、きもののほうは何とかなっても道行やコートなどで「普通の反物が使えない」という不具合がでてくるかもしれません。

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左=裄丈は個性が表れるところですね。前に取材していただいた『きものサロン09-10冬号』(世界文化社刊)のページをめくってみると、向かい合わせの芸妓さんと裄丈がかなり違うことに驚きました。1寸ちかく差がありそう。
右=たくさんの方々のきもの姿が楽しい『きものの時間』(マガジンハウス刊)も、寸法の視点で改めてみてみると新たな発見が。今の感覚では短めの裄、短めの着丈がまさに“ツウ”な感じ。


【3】肩巾・袖巾
裄丈をどう肩巾・袖巾に分けるか。ここは重要ポイントですね。一般的には、肩巾より袖巾のほうを長くします。肩巾は後巾と同じか、後巾+2.5cmくらいまでがよいようです。
ただし裄が長い場合はそれができません。私の場合は肩巾9寸・袖巾9寸5分といった寸法にしたいけれど、そうすると袖巾のほうが長すぎて、道行やコートを普通の反物で作りにくくなってしまうからです。
かくして肩巾9寸2分・袖巾9寸3分に。肩巾は後巾より+2寸5分=9.5cm広いことになります。理想とされる+2.5cm未満どころではありません。こうなると、脇のあたりで布がだぶつきやすくなってしまいます。困ったものですが、肩巾・袖巾はこうするしかなさそうです。

【4】袖丈
袖丈は好き好き。標準は身長の1/3です。身長167cmならば1尺4寸7分になるのですが、最初に仕立ててもらった一枚が1尺3寸でした。そのあたりに引きずられて、紬は1尺3寸5分に、柔らかものおよびおでかけ着は1尺4寸5分にしています。でもどうせ寸法を変えるなら、1尺3寸5分と1尺5寸くらいにしておいたらよかったかな、なんて少し後悔しています。
樺澤さんのお話で「お茶のお稽古をするなら、袖丈を1尺4寸するといいわ」とある呉服店の方がおっしゃった、とありましたが、私もそのように言われたことがあります。もちろん身長(座高)によってその長さは異なると思うのですが、要は正座をしたときに、袂の先が畳についてきれいなドレープが出るし、またそのほうが袂が安定してひらひらと動かない分、むしろ建水に落としにくくなる、ということではないでしょうか。

【5】袖丸み
袖の丸みは何も指定しなければ5分であがってくると思います。ある呉服店のこだわりで1寸5分か2寸くらいの大きめの丸みを付けて仕立ててもらい、以来丸みのある袖が気に入っています。ぴしっとした紬にはすっきりとした5分の丸みがいいけれど、やわらかく装いたいものは1寸〜2寸の丸みを付けるのもいいものですね。

【6】袖付(前・後)
袖付は前後ともに6寸が標準で、ほとんどの方がその寸法ではないかと思います(高い位置で帯を結ぶ振袖はもっと短く、低い位置で帯を結ぶ方はもっと長くするようです)。
さきほども書きましたが、私は脇のあたりのだぶつきが気になって呉服店に相談したところ、少し効果があるかもしれないとのことで前の袖付を5分長くしてもらいました。
きものって衣紋を抜いて着るものだから、肩山は肩の上にあるのではなく、もっと背中寄りにいってしまいますよね。だから、その分前の袖付を長くしたほうが、袖の着けどまりが前後揃って、脇のあたりがすっきりするはずなのです。
ただこのだぶつきは、着付けによるところがたぶん大きいので、ここの寸法をいじれば解決する!ということではないです。でもちょっとした助けにはなるかも。

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これは5年近く前の写真。何度直しても脇のあたりが飛び出してしまう…。そんな悩みを持つ方は多いかもしません。これ、すごく老けた印象になってしまうのですよね。


【7】褄下
褄下=衿下の標準寸法は、身長の1/2です。私の場合は2尺2寸5分=85cmだから、身長の1/2より多少長め。脚が長いのでしょうか。うふふ(笑)。いや、これは帯の結ぶ位置にまずかかわってきますね。低く結ぶ方は短く、高く結ぶ方は長くなります。
衿先のチラ見えはOK?かどうか。ある本には1〜2cm出るくらいが好ましいと書かれていましたが、手元の二冊の本は「すっかりおはしょりに隠れるべし」としています。チラ見えするメリットは特にないですよね。私はちょうど隠れる長さにしています。
それとコメント欄に「褄下の寸法は衿先が腰紐にひっかかると着崩れしにくいという着付けの点からも考えたらいいと思います」とメエ子さんが書いてくださいました。上前の衿先にはきちんと腰紐をかけて安定させ、逆に下前の衿先は腰紐より上にもってゆきひっかけて下前がずり落ちるのを止める、ということですよね。これはすごく大事なポイント。図にしてみました。

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【8】繰越+衿付込み
繰越と衿付込みは、衣紋を抜いて着る女性のきもの特有のもの(男性も羽織には繰越を付けるようですが)。標準では5分肩山よりも後ろに衿を付けるための切り込みを入れて、そこからさらに5分後ろに丸みをつけつつ衿を付けます(ああ、説明がむずかしい…)。
衣紋を多めに抜く人、肩の厚みがある人はたとえば7分ずつの繰越・衿付込みにします。
私の場合は、やはり着付けがヘタでうまく衿がぬけなかったために、多めに付けてもらいました。ただこれも着付けの上達により対処できることだったりします。なのでどちらがいいのか正直私にはわかりません。和裁士さんの間でも意見の分かれるところかもしれません。


ふう。またまた長くなってきましたので、いったん休憩をいれましょうか。
ネクストバッターの植田お姉さまはこの週末御召展でお忙しいことでしょう。近いうちに寸法のお話・その4を書きたいと思います〜。残るは身巾。ではでは、おやすみなさい!

寸法表
身丈(肩から)4尺 5寸 5分( 172.4 cm)←【1】
裄丈1尺 8寸 5分( 70.1 cm)←【2】
肩巾 9寸 2分( 34.8 cm)←【3】
袖巾 9寸 3分( 35.2 cm)
袖丈1尺 3寸 5分( 51.1 cm)←【4】
袖丸み 1寸 0分( 3.8 cm)←【5】
袖口 6寸 0分( 22.7 cm) 
袖付(前) 6寸 5分( 24.6 cm)←【6】
袖付(後) 6寸 0分( 22.7 cm)
前巾(腰) 6寸 7分( 25.4 cm)←次回
前巾(裾) 6寸 5分( 24.6 cm)
後巾(腰) 7寸 6分( 28.8 cm)
後巾(裾) 7寸 3分( 27.7 cm)
合褄巾 4寸 0分( 15.2 cm)
衽巾 4寸 0分( 15.2 cm)
抱巾 6寸 2分( 23.5 cm)
褄下=衿下2尺 2寸 5分( 85.2 cm)←【7】
繰越 7分( 2.7 cm)←【8】
衿付込み 7分( 2.7 cm)
衿肩あき 2寸 5分( 9.5 cm) 
衽下り 5寸 5分( 20.8 cm) 
共衿丈1尺 3寸 0分( 49.2 cm) 
身八つ口 4寸 0分( 15.2 cm) 


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date: 2010年02月24日

subject: 寸法のお話・その4

from: 佐藤文絵



一昨日から2日ちかくブログのサービスがメンテナンスに入ってしまい、今日ようやくの更新です。二月も終盤なのに、ちっとも話題が〈着付けと仕立て〉へ移っていきません・・・。が、今日予告どおり身巾のお話をさせてください。

身巾は立ち姿の印象をかなり左右します。広すぎるともさーっとした感じがするし、狭すぎると逆に太って見えるようです。理想はやはりすっときれいな立ち姿ですよね。だけどぴったりすぎる身巾も考えもの。動きやすさも大切だし、体型が変わることもあるから、ほどよいゆとりが必要です。
身巾がちょうどいいと、着付けもスムーズ。上前をあわせてから、下前を合わせて――というステップが必要なくなります。背中心もまっすぐ通ります。

理想はこんな感じ(人によって違うと思うけれど)。真正面からみたときに、身体の両脇が上前の脇線と褄下の端の線がちょうど沿っているカタチです。

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さて私は最初に寸法をとってもらったときが人生でいちばん太い時期だったもので(涙)、それからしばらく後に身巾を少し狭くしました。そのあとお茶をはじめた関係で前巾を広くしたりという調整を経て、今に至っています。
ところで裄丈と着丈は昔のほうが今より平均的に短かったわけだけど、身巾は逆に広めだったようです。“女並寸”と言われる女性の標準寸法は、身長150cmちょっとで身巾は94cm。だいぶ広い感じがするのですが、おでかけ着ではなく日常着ならこのくらいゆとりがあるほうがいいのかもしれませんね。


【9】前巾(腰と裾)・後巾(腰と裾)・衽巾・合褄巾

身巾は腰まわりのいちばん太い部分(ほとんどの人はヒップ、まれに太もも)を基準にします。ヒップがいちばん太いとすれば、その寸法を前巾・衽巾・後巾×2のに4つに分け、それぞれにゆとりを加えます。
では、どのように分けるか。
基本は、前巾+衽巾が正面から見えるところを担当。後巾がそれ以外、つまりお尻をすっぽり包み込む担当です。

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具体的な寸法はその人の体型とどのように着るかによって変わってきます。骨盤は張っているけれど厚みのない「平べったい」体型なら、前巾+衽巾を広めに。骨盤は張っていなくて厚みがあるならその逆。お茶などで正座をすることが多いなら前巾を広めに&ゆとりを多めに・・・というふうに按配するようです。
ゆとりの量は、『和服寸法百科』(ふたば書房刊/絶版)によると普通体型の人でヒップ+7cm(前巾に+2cm、後巾に+2.5cm)が目安です。

私の場合は、前巾6寸7分・後巾7寸6分・衽巾4寸。ちなみに女並寸は、前巾6寸・後巾7寸5分・衽巾4寸。前巾を3センチくらい、後巾をほんの少し足していることになります。
で、この前巾・衽巾・後巾のバランスは、専門家と相談して決めたほうがよさそう。なぜなら、寸法って互いに影響しあっているのです。たとえば前巾を広くしすぎると衿付けの関係で抱巾が広くなる・・・といったことが起こるそうです。
身丈や褄下、袖丈などは自分で考えて「この長さがベスト」と思われる数字を出せばいいと思うのですが、身巾やこれからお話する抱巾などは無闇にいじると“寸法の黄金率”が崩れて、おかしなバランスになってしまうかもしれません。


[身巾の腰と裾]
ここからちょっと細かい話に入ります。
きものの「前巾」「後巾」というと、裾で測るのが一般的です。腰も裾も同じ巾ならそれでいいけど、普通は腰より裾のほうが広くなっている(腰<裾)のです。あるいは裾つぼまりな仕立て(腰>裾)になっている場合もあります。
つまり、裾で「前巾」「後巾」を測ると誤解が生じやすいため、私は腰と裾を分けることにしました。衽のほうは、裾を衽巾、腰を合褄巾といい、明確に分けられています。それと同じことですね。
和裁士の村林益子先生が著書『美しいきもの姿のために』(筑摩書房刊)のなかでこんなふうに書かれています。

きものの後巾、前巾は、従来は裾で測っていますが、着付けを教える中で気づくことがあり、私は昔、「後腰巾」「前腰巾」という言葉をきものに取り入れました。身巾は裾ではなく一番太い腰で決めるのがよいと思ったからです。
『美しいきもの姿のために』(筑摩書房刊)P158より


[裾つぼまりの仕立て]
手持ちのきものの前巾・後巾を、腰・裾の両方で測ってみると、同じ寸法表で仕立ててもらっているのに、あるところはまっすぐだったり、あるところは極端に裾つぼまりになっていたりと、いろんな仕立てがあることがわかりました。考えてみれば、それもそのはず。仕立ても呉服店のこだわりのひとつですもんね。
私は骨盤がわりと張っているほうなので、旧来どおりのまっすぐな寸法だと、どーんとした下半身になりがち。もちろん裾つぼまりな着付けを心がけるのですが、下前はしっかり褄先をあげられても、上前のほうはあまり大胆に褄先をあげられません。下前だけあげすぎると背中心が斜めになってしまいます。一方であらかじめ裾つぼまりに仕立ててあるきものは、とうぜん無理なくきれいな裾つぼまりになってくれました。
裾つぼまりな仕立ては、布に対して斜めに縫うことになるため、布にちょっと無理がかかるのかも知れません。縫込みのなかが落ち着きにくいとききます。でもやっぱり体型はカバーしたくて、裾つぼまりの仕立てをしてもらうようになりました。具体的には、前巾で−2分(8mm)、後巾で−3分ずつ(11mmずつ)控えています。

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[衽巾と合褄巾]
標準寸法では、衽の巾は裾(衽巾)のほうが腰(合褄巾)よりも広くなってます。衽巾>合褄巾なんですね。だけど、ふつう腰のほうが太いのに、なぜ腰でなく裾のほうを広くするのか不思議に思っていました。
この点についても、同じく村林先生がこのように書かれています。

私は、合褄巾と衽巾を同寸にすると主張してきました。おうちのきもので調べてみてください。衽巾より合褄巾は多いもので3cm近くも狭く仕立てられています。昔のきものは裾のふきが8mmから2cmと太く仕上がっていましたから、裾巾は広いのがかえって優美でした。しかし、今日ではふきの太さも5mmくらいに細くなっています。合褄巾は腰周りの一番太い部分ですから、裾へいって広げず、細い方はそのまま狭く、太った方は裾の寸法をそのままつめずに合褄巾を同寸にしたほうが着易く、形のよいきものになります。
『美しいきもの姿のために』(筑摩書房刊)P158-159より



私は松林先生の考え方に賛同。衽巾=合褄巾(これを“通し”“衽巾通し”といいます)の寸法にしています。
身巾に関する細かい話はここまでです。


【10】抱巾
身八つ口止まりの箇所の前巾のことを抱巾(だきはば)といいます。標準では(ヒップよりバストのほうが細い人は)前巾より4分ほど控えるようです。抱巾を詰めることで胸から脇にかけての布のだぶつきが抑えられるんですね。逆に鳩胸さん、胸の大きい人は前巾と同じ寸法(これも“通し”“前巾通し”といいます)にします。

胸から脇にかけての布のだぶつきは、抱巾に加えて、衿付けによって調整することもできるそうです。衿まわりはいわば唯一立体的な箇所。衿付けは仕立て屋さんの技術力がいちばんに表れる部分だといわれています。寸法表には表れないものの、衿付けに曲線を付けることで胸まわりのだぶつく布を衿のなかに縫い込んだり、あるいは胸の大きな人にはゆったり着られるようにと、微妙な調整ができる部分なのだと和裁士さんから教えてもらいました。

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裄が長い=肩巾が長いと、脇のあたりに布が余りがち。抱巾や衿付けを見直してみると、改善するかもしれません。


肩幅が長い、抱巾を狭く、裾つぼまりに・・・。そんな条件のもとできあがった寸法は、斜めに傾いた縫い線が多くなってしまいました(文末に寸法表&図を再掲しました)。

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まっすぐ直線に縫うほうが、縫うのも楽なはずだし、布にも無理がかからないのは重々承知。でもそれだとすっきりとした着姿になりにくいのも事実です。和裁士さんには苦労をかけているのかもしれないけれど、とりあえずこんな寸法になりました。


以上、寸法についてひとつずつみてきました。寸法の割り出し方は、和裁所の流儀や考え方、地域性などいろいろあるようです。ここに書きましたのは、あくまでひとつの考え方(かつ素人の)として捉えてください。間違って理解していることもあろうかと思います。お気づきの点がありましたら、ぜひともぜひとも、ご指摘くださいませ。

寸法も大事だけど、着付けも大事。そして体型も一定ではないのだから、寸法にあまり厳密になる必要もないと思います。細かい話をしておいて説得力がないようですが(笑)、ボチボチいきましょう。
では、次は植田さんのお話を楽しみにしてます。

寸法表
身丈(肩から)4尺 5寸 5分( 172.4 cm)←【1】
裄丈1尺 8寸 5分( 70.1 cm)←【2】
肩巾 9寸 2分( 34.8 cm)←【3】
袖巾 9寸 3分( 35.2 cm)
袖丈1尺 3寸 5分( 51.1 cm)←【4】
袖丸み 1寸 0分( 3.8 cm)←【5】
袖口 6寸 0分( 22.7 cm) 
袖付(前) 6寸 5分( 24.6 cm)←【6】
袖付(後) 6寸 0分( 22.7 cm)
前巾(腰) 6寸 7分( 25.4 cm)←【9】
前巾(裾) 6寸 5分( 24.6 cm)
後巾(腰) 7寸 6分( 28.8 cm)
後巾(裾) 7寸 3分( 27.7 cm)
合褄巾 4寸 0分( 15.2 cm)
衽巾 4寸 0分( 15.2 cm)
抱巾 6寸 2分( 23.5 cm)←【10】
褄下=衿下2尺 2寸 5分( 85.2 cm)←【7】
繰越 7分( 2.7 cm)←【8】
衿付込み 7分( 2.7 cm)
衿肩あき 2寸 5分( 9.5 cm) 
衽下り 5寸 5分( 20.8 cm) 
共衿丈1尺 3寸 0分( 49.2 cm) 
身八つ口 4寸 0分( 15.2 cm) 


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date: 2010年03月01日

subject: 補整のお話

from: 植田伊津子



ホットな寸法談義にようやく参戦。ってもう、3月に入ってしまいましたよ!
えーっと、このブログは一応今年2月で終わりと決めているのですが、このテーマのケリをつけないといけませんね……。

ところで、佐藤さん、樺澤さんたちのエピソードをフムフムとうなずきながら聞いておりました。きもののサイズを見極めることは、自分の体の特徴を知ることと直結していますね。

きものを着はじめた頃のわたくしも、お古のきものしか持っていなかったものですから、おふたりと同じく、短い身丈や裄寸法のままでした。そんなときに仕事で一衣舎の木村さんに巡り会い、一衣舎採寸できものをつくったら、目からうろこが落ちるほどきれいに着られたのです。
その様子はこちらに記したことがあります。

採寸ポイントのひとつひとつについては、佐藤さんが詳細に説明されていますので、わたくしが重ねて説明をするまでもありません。ただ身丈について少しだけ付け加えたいと思います。

[おはしょりと相互関係にある身丈]
わたくしの場合はお茶のきものがほとんどで、お茶では正座での御礼の姿勢を繰り返しますから、着ているうちに衿が詰まることが多いんですね。そのため、お手洗いに立つたびに、長襦袢・きものとも後ろを少し引いたりして調整しています。
また、懐紙や帛紗を入れている前の打ち合わせは、帰り際にそれらを抜くとゆるんでいますので、気がつくたびに上半身の衿まわりもちょこちょこ直します。

ふつうは、胸紐でおはしょりを固定し、それからおはしょりの余分を持ち上げて伊達締めで押さえますが、余分な長さがあると上記の修整ができません。
それで、ジャストの寸法できものをつくるようになりました。伊達締めを使わないでもOKな身丈の長さにこだわったわけです。

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伊達締めを使わないということは、おはしょりのラインを水平にするため、腰紐を結ぶ際に工夫をします。このイラストでおわかりいただけるでしょうか?


わたくしの場合、腰紐を締める位置が変わりませんから、5分〜1寸でも狂うと気持ちが悪いのです。特定動作が多い、自分できものを着る、衿もと付近を直したいという方の場合は、おはしょりをつくって遊びがない寸法ならたいへん気持ちよく着られると思います。
身丈が長いきものから開放されて、ジャスト身丈のものを着たときの爽快感といったら、もう。
ちなみに、わたくしの身長は163cm、腰紐は腰で締めるタイプで、身丈は肩から4尺3寸です。

確か佐藤さんは、腰紐はウエストで締めるタイプで、肩から4尺5寸5分でしたね。
前にもお話をしたかと思いますが、身丈は「肩から」「背から」という2通りの採寸方法があって、和裁の方とこの点のコンセンサスをとっておかないと、3cm近く長さが違ってきます。
新しい和裁士さんに寸法票を渡すときは、「肩から(もしくは背から)○尺○寸」と書いたほうが安全でしょうね。

それに身丈の長さと大きく関係するのが、腰紐の位置。佐藤さんはウエスト派と書かれていましたが、わたくしは腰骨付近。なんで腰で締めるようになったのかといえば、ツウに思われたいからというわけではなく、やはり着くずれ防止のような気がします。

わたくしの場合、ウエストで腰紐を締めると、空腹時と満腹時の際にウエスト寸法に狂いが出ます。はじめはきつめに締めたつもりでも、空腹時のときはお腹が凹んで余裕が生まれており、腰紐もゆるみ加減。そうした場合、たとえば正座から立ち上がったときに裾を踏んだら、わりあい簡単に身丈が下りてしまいます。

その点、腰骨で締めていたら、空腹でお腹が凹んでいても紐は落ちませんよね。立ち振る舞いが雑なわたくしなので、そうしたところから腰骨派になったんじゃないかしら。
とくに重い縮緬や御召を裾線ギリギリで着付けているときは、裾が下りやすいので要注意かなと思います。

[寸胴体型を目指して]
さて、寸法の話はおふたりが詳細に話してくださいましたので、次の話に行きましょう。
着付けをどうするかです。その前に補整について記したほうがよさそうですね。

「マイ寸法のきものができた」なら、きれいな着姿への準備はほぼOK。ところが、こだわりの寸法できものをつくったとしても、きものは直線による構成であることに変わりありませんから、縫い線を斜めにとれば、構造上つれてしまいます。つれない程度にきもの寸法を微調整したとしても限度がありますよね。

ということは、もうこれ以上は、体そのものを着付けに最適な寸胴体型に近づけて着姿をきれいに見せる方法しかなさそうです。その下準備が「補整」だともいえましょう。

ところで、皆さんはどのぐらい補整をされているでしょうか? 補整具もたくさんの種類がありますよね。わたくしもいろいろなものを買ってみたり、自作したりしてきました。今日は、それらを紹介しながら補整について考えたいと思います。

[上半身の補整]
きものは楕円の筒型の土台で着れば、もっともうつくしく見えます。筒型にするためにさまざまな方法があるかと思いますけれど、わたくしは「痩せて見えるきもの姿」を目指していますから、基本的な考え方としては「足りないところを埋める」方法です。これは若いときから一貫して変わっておりません。
けれど、20〜30代半ば頃はどこもパツパツとしていましたので、胸はさらしや和装ブラジャーを使って「抑える」ほうにも主眼を置いていました。

胸が高い場合は抑えてなだらかにすればよいわけで、読者の皆さんもさらしや和装ブラジャーを使っている方が多いと思います。さらしは薬局などの他、和装小物店や呉服専門店で扱っています。

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さらしの巻き方は、笹島寿美著『キモノを着こなすコツ』(神無書房刊)に詳しく載っています。



さらしは、巻き方によって厚みを自分で加減できるところがすぐれています。
ただし、上手に巻かないと落ちてくるところが難点。また長い布なので、洗ったり干したりするのが意外に面倒です。干した後、しわくちゃのままでは次に巻くときに困りますから、またきれいに巻いておかなくてはいけませんよね。

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補整の場合、さらしの巾が広いので、2つ折りにするか、もしくは半分に切って使います。写真は半分にカットしたもの。少し切り込みを入れて割けば、繊維に沿って2枚に分かれます。
さらしは、長襦袢の先の調節布などにもなりますので、ひとつあればとても便利。


そこで、手入れが簡単そうな和装ブラジャーも購入してみました。これは装着が簡単です。わたくしが若い頃は、胸が張っていましたから中のスポンジを抜いて厚みを出さないようにして使っていました。
さて使い勝手はよかったのですが、なぜか和装ブラジャーをつけると肩こりになるのが唯一の欠点でしたけれどね。

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写真のスポンジは出し入れが自由。この和装ブラジャーは表側に収縮性がなく、カッチリと固定するタイプでした。ジャージなどのなるべくやわらかい素材のほうが、肩こりにはなりにくいかと思います。


30代後半〜40代にかけては、体のラインが変わりつつあるときで、だんだん肌のハリがなくなり下垂形のやわらかい胸に変わってきます。そのため、さらしも和装ブラも必要ではなくなってきました。そこで下の写真のように、生地を折りたたんで、胸のくぼみに置いたこともあります。

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なんだか変なイラストでごめんなさい(^_^;)。△に折った手ぬぐい、もしくはハンドタオルを図のように置いてから長襦袢を着ていました。


そして今、わたくし自身は胸の高さを抑える必要がなくなったので、サラシや和装ブラは使わなくなり、その代わりに肩や胸の脇などの凹みが気になる場所に肌襦袢の上から少しだけ脱脂綿を重ねて、上半身全体がなだらかに見えるようにしています。
歳をとってくると、胸が落ちて脇の横あたりが薄くなってきますし、肩も痩せてくるのです。そういう補整には脱脂綿が一番だと思います。脱脂綿は薬局で売っています。

また他人にきものを着せるときは、下のような手製の補整具を使ったりもします。1メートル強のさらしを半分に折り、その方の体の凹みに合わせて脱脂綿を間に挟みます。
衿は、はさみでV字にカット。切ったところはそのまま切りっぱなしで縫いません(縫い代を表にひびかせないため)。

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下部は輪になっていて、さらしの間に脱脂綿を挟みます。2枚になっている肩の1枚だけに紐をつけます。この構造なら脱脂綿が出し入れ可能。部分的に脱脂綿を厚めに重ねることができますので、その方の体に合わせて、鎖骨部分や胸の弛み、脇の凹みなどをデリケートに補整することができます。


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紐をつけたほうが表になるようにして、そっと2枚を重ねます。それを胸に置き、背中で紐を2、3度からげて交差させて、前で結びます。これは肌襦袢の上につけるものです。1枚あれば、どんな胸の人もきれいに補整できますよ。



[ウエストと腰の補整]
ウエストには紐がたくさん収まるとはいえ、やはり胸と腰にくらべると約20cm前後凹んでいますから、ほとんどの女性は補整が必要な部分ですね。
かくいうわたくしも、その昔、若くてお腹が凹んでいる頃はタオルをウエストに巻いていました。

といっても、痩せて見せたいものですから、1枚の厚いスポーツタオルを使用するのではなく、温泉地でもらうような薄いタオルを重ねる派です。薄いものを重ねるほうが、微妙な調整ができるんですね。

現在は、下写真のようなウエストパッドを利用しています(こちらのサイトで購入可能)。これは京都の着付師の山崎真紀さんに教えてもらったすぐれもので、ウエストパッド、ヒップパッドなどの種類があります。

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これはウエストパッド。ピップハッドも買えば、体型によって組み合わせて使ったり、1枚だけ単独で使ったりできます。


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タオルを使用する場合は、薄手を2枚用意。1枚は4つ折り、もう1枚は写真のように斜めに畳んだものを重ねて、お尻の上あたりに置いて腰紐で軽く止めておきます。



[補整のアリ、無し]
さて、補整はいずれも長襦袢を着るまでにおこないます。和装ブラだけは肌襦袢の下につけますが、タオルや脱脂綿、ウエストパッドなどの補整具は肌襦袢の上からつけて、長襦袢を着用します。
これらの補整をほどこしておけば土台が寸胴に近づいているはずですから、きれいな長襦袢姿に変化していると思います。
きものは長襦袢に沿わせるようにして着るといいますよね。ということは、土台がうつくしければ、おのずときものもきれいに着用できるでしょう。

ただ、いずれにせよ補整のやり過ぎは太って見えますので要注意。
また補整の姿はフォーマルの印象に近づくものです。総じて、やわらかものでは補整をしたほうがきれいに見えますが、織物のきものを着る場合は、極端な体型でない限り、ウエストの補整ぐらいだけ。やわらかものほどの補整はほとんど必要ないと思われます。

自分でフォルムを決められるきものは、衿の詰め方やシワが個性でもあります。だからといって、補整をまったくしないできものを着るのはそれもまたむずかしいこと。
どんな着姿を目指すのか、補整の程度は自分でベストな加減を探ってみてください。

わたくし自身も、「少し太ったみたい」「肩が痩せた」「今日のきものの生地はやわらかいので、補整を余分にしないと」と、着るときどきでちょっとずつ変えています。

さて、ざっくりと補整のお話をしましたが、着付けにまだ到達しそうにありません。どうしましょう! 樺澤さん、佐藤さん。

date: 2010年03月06日

subject: 着付けのプチ勘どころ〜私のお悩み編

from: 樺澤貴子



啓蟄も過ぎ、気温の変動は激しいながらも春の気配に包まれているこの頃です。東京の街なかでは、早くもウールのコートから薄手のトレンチコートに衣替えしている人を多く見かけます。3月はじめのお茶のお稽古日は冬が舞い戻ってきたような寒い日だったのですが、気持ちは思い切り春!水色の小紋にこんな帯び合わせで、穏やかな季節を待ち望んでみました。
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2回連続でアップしてくださった佐藤さんの寸法講座。とても勉強になりました。とくに前巾と合褄巾、衽巾の寸法の仕組みは目ウロコのことばかり。和裁本はこれまであまり手にしたことがなかったのですが、村林益子さんの『美しいきもの姿のために』(筑摩書房)はぜひ読んでみたいと思いました。そして、植田さんの補正のお話は、着付けのプロのようですね。お手製の前掛けのような胸当てなど、素人とは思えませぬ。

さて、今日は着付けのお話です。皆さんそれぞれに、体型によって着付けのお悩みは違うと思うのですが、私の場合体型&着付けのお悩みは下記の5点。
お悩み(1) 上半身は痩せていて、下半身は安定型
お悩み(2) 鳩胸(女将さんのように立派に見えてしまう)
お悩み(3) 衿元が決まりにくい
お悩み(4) 背中心がずれる
お悩み(5) 着丈寸法によっておはしょりが決まりにくい

細かなことを言い出すと、まだまだあるのですが、今日はひとまずこの5つのポイントに絞ってお伝えします。

【お悩み(1) 上半身は痩せていて、下半身は安定型】
これって典型的なエイジング体型ですね・・・・・・(涙)。これを解決してくれるのは、やはり補正。私は体の幅に対して厚みが気になる体型のため、補正をしすぎると一層樽のようになってしまうため、下記のように最低限の補正しかしません。

◆胸・ウエスト部分

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左=写真上は両脇の胸のつけねのくぼみに置くもの。肌襦袢の上にのせるだけ。写真下のチャンピオンベルトのようなものは肌襦袢をとめつつ、ウエストの補正になるもの。中央の山高の部分が胸の谷間のくぼみにフィットします。
右=以前ご紹介したラウンドタイプの帯板も、ウエストの補正に一役買っています。


◆ヒップ部分
ヒップからウエストにかけてのカーブには、植田さんのように専用のパッドやタオルを使用する方もいるかと思いますが、私は帯枕用の晒に手拭いを入れて使っています。これでお太鼓のたれの跳ね上がりも防止できます。
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どちらも汗をかいても手軽に洗えて便利。



【お悩み(2) 鳩胸】
胸は雀の涙なのに、骨格だけは鳩胸。きものを着るに際して、鳩胸はむしろ利点では?とよく言われるのですが、着付けのポイントを誤ると下記のように。
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30代のはじめころなので、今より肉付きもよかったかもしれませんが、なんだかパンパンです。衿を詰めすぎて、帯も高めに締めているため、息苦しい様子です。


◆衿合わせと帯の位置
上前と下前が交差しているV字の下部から前帯までの距離が少し長めのほうが胸元がゆったり見えるというのが私の持論。衿合わせのVはやや浅めで、長襦袢の半衿は細めにすっきりと見せます。そして、前帯をほん少し(1.5〜2cmの感覚)低くします。といっても、全体に低くするというよりは、背部から前に向かって少し下げるかんじです。単に低い位置で締めると、おのずとお太鼓の高さも下がり老けて見えてしまいます。前下がりに締める際には、前帯の下部は体にフィットしつつ、上部に少しすきまができるように手拭いを入れて帯を巻きます。後から手拭いをはずすと、前下がりに見えることとあわせて、帯枕のガーゼや帯揚げを入れるスペースも確保できます。そして、帯締めも平行に締めてから、中央の結び目だけをちょっと下げます(写真では大袈裟に写っていますが・・・)。
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置き撮りだとうまく表現できないのですが、前帯の位置や帯締めの一工夫で、胸元が窮屈に見えなくなりました。帯締めの結び目をちょっと下げるというのは、小唄のお師匠さんに教わりました。

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左=手拭いは着付けの際に何かと活躍するお助けアイテムです。右=付け帯の場合は、前帯を少し低めにするとお太鼓の山も下がりがちになるので、俵型のクッション付きの器具に帯枕を乗せると、ちょうどよい塩梅に。


◆伊達締めの結び方で、前帯の中がスッキリ
伊達締めの結び方は、二回絡げて左右に振り分けるというのが一般的ではないでしょうか。長襦袢の場合はそれでもよいのですが、きものの伊達締めの場合は、帯枕のガーゼやら帯揚げやらを上から押し込むため、極力フラットな状態になるようにしています。写真は長襦袢で撮ってしまったのですが、ご参考までに。
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左上=まずは二回絡げる→右上=左右を重ねて一本にして、内側に折り畳む。左下=余った部分を下から入れ込む。こうしておくと、上から帯揚げなどをぐいぐい押し込んでも、伊達締めの結び目が邪魔になることがありません。



【お悩み(3) 衿元が決まりにくい】
衿合わせの角度や衣紋の抜き加減は、まだまだ修業が必要。きっとこれから年齢を重ねることで、また変ってくると思いますが、現段階でのポイントをいくつかご紹介します。

◆長襦袢の衿芯
まずは、悪い例の写真をご覧ください。衿が首から離れすぎて浮き、首が短く見えます。これは、プラスチックの衿芯を使った際の現象で、芯自体のハリが強すぎて長襦袢の衿の部分が体に添わず浮いています。角度によっては肌襦袢が見えてしまうほどでした。衿元がキリリとした着こなしに憧れて、しっかりとした芯を使ってみたのですが、前述のような弱点がありました。植田さんも以前、衿芯のお話を書いてくださいましたが、現在はクリアファイルのようなソフト素材のものを使っています。
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◆肌襦袢の一工夫
肌襦袢は下前で左の胸を、上前で右の胸を包むようにすると、次のステップの長襦袢の衿が安定します。ある日、何気なく購入した晒の肌襦袢を着てみたら、十分に胸を包むことができない・・・・・・。しばし箪笥に眠らせておいたことろ、『七緒』から出ている『大久保信子さんの着付けのヒミツ』(プレジデント社)を手にとったら、解決法が載っていました。
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左=市販のスリットの開きは、こんな具合が一般的。ガーゼ素材のタイプは生地が少しのびるため、今まであまり気になりませんでした。右=大久保先生の着付けの奥義がたっぷりと詰まっており、とても参考になります。


その解決策とは、両脇下のスリットの部分が約20cmほどになるよう糸をほどくという方法でした。その話を何人かの着付けのプロに伺ったところ、全て糸を解いたほうが、より柔軟性があると伺い、私は後者を選択。とくに胸の大きな方は、すっぽりと胸を抑えることができて便利とのことです。
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左=両脇下のスリットの部分は「馬乗り」と呼びます。私は糸を全てほどきました。右=すると、このように自在な角度で衿合わせが可能に!


◆着崩れた場合の衿の直し方
お茶のお稽古での所作や車の乗り降り、観劇などで長時間座っていたりすると、衿元や崩れやすくなります。そんな時にパウダールームなどで必ずやることは、<長襦袢の衿先を引く>ことと、<緩んだ衣紋をピッと引っ張る>こと。何気なくおこなっている事ですが、実はちょっとした勘所があります。私が今まで間違っていた位置と、着付けの先生などに教えていただいた正しい位置を写真で比較してみました。

1) 長襦袢の衿先を引く
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左=動いているうちに衿が浮いてくる場合、緩みをとろうとして衿先を下に引きがち。でも、下に引いてしまうと衿合わせの角度が変ってしまいます。右=正しくは必ず衿先のアウトラインの先端を持って、斜め下に引きながら横へ引くということを教わりました。これを肌襦袢の下前→上前を整えてから、長襦袢の下前→上前という順で行います。


2) 緩んだ衣紋をピッと引っ張る
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左=着付けを覚えてしばらくは、背縫いの部分をひたすら引いていました。そのため、衣紋が妙に鋭角に。右=衿肩あきの下の延長線上を引くことで、背中部分の生地の弛みも解消されます。大久保先生いわく、こうすると胸元の弛みの引っ張られてすっきりするとか。ちなみに、これは最初に長襦袢を着た際にも行う工程で、笹島先生は「空気抜き」と仰ります。この工程も、肌襦袢→長襦袢で整えてから、最後にきものの背の部分をおはしょりの下を引いて長襦袢に添わせます。



【お悩み(4) 背中心がずれる】
きちんと着付けて出かけたつもりでも、きものを着て動いていると、片袖から長襦袢が出てきてしまう・・・・・・という経験はありませんか?私はお茶のお稽古をしていると、どうしても右腕だけ長襦袢が出てきてしまうため、「おかしいな」と思い終わった後に教場の鏡でチェックしてみたら背中心が少し動いていたということがありました。そのため、最近では、長襦袢をマイナス3分のサイズで仕立てる用にしています。前回書いたように、私のきものの寸法はまだ統一されていないため、一衣舎さんが計測してくださった裄丈1尺7寸7分から長襦袢の裄丈は3分引いて1尺7寸4分にしています。お師匠さんからいただいた1尺7寸5分のきものですと、着方によっては襦袢が顔をのぞかせてしまいますが。

話はずれてしまいましたが、後々ずれるとしても最初の着付けの段階で、背中心をしっかりとキープすることは着崩れを最小限に抑えると思い、以下のことに留意しています。

1)長襦袢の下ごしらえが重要
まず、長襦袢の背中心をきちんと定める事が大切ということは、皆さんご存知のとおり。私は長襦袢を着る際にこんな一工夫を取り入れています。一つは、長襦袢を羽織った際に袖口を両手で軽く引くことです。前述の『大久保信子さんの着付けのヒミツ』(プレジデント社)では、これを「奴さんのポーズ」と名づけていました。これは、きものを着た際にも行います。二つめは、背中の弛みやシワをきちんと取ることです。伊達締めの下のあたりで背縫いから左右に引き、それから衿肩あきの下の延長線上を引いて「空気抜き」をします。
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ちなみに、『大久保信子さんの着付けのヒミツ』では、伊達締めのぐしゃぐしゃは補正の変りにもなるためOKとされていますが、私は伊達締めは後ろで折り込むようにして締めます。以前佐藤さんが、博多織の伊達締めはアイロンをあてると滑ってしまうと仰っていましたが、折り込んで先ほど紹介した結び型をすると緩むことはありません。


2)クリップ活用法
面倒なようですが、きものを羽織ったあとに、背縫いの部分をクリップでとめています。帯を締めたり片づけをしたりと動き回るうちに、必ずずれてしまうからです。きものより長襦袢を1〜2分ほど下げて衿を調整することもクリップを使うとうまく整えられます。
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体の硬い私には、ちょっとしんどいです。また、髷を下で結う方には不向きかもしれませんね。



【お悩み(5) 着丈寸法によっておはしょりが決まりにくい】
おはしょりをモコモコせずにきれいに整えることや、ベストな長さに調整することは、着姿の印象を大きく左右します。笹島先生が『きものサロン』(’09−10冬号)の「一寸の美学」(P143〜145)でおはしょりの長さについてお話されていましたがが、着付けを追求していくとほんの少しの匙加減とバランスが大切なのだと考えさせられます。

私はおはしょりをきめる際に、またまたクリップを活用。上前のなかに余分な生地の弛みを入れ込んで、おはしょりの幅と位置をきめたらクリップで留めてしまいます。それを基準に上前の身頃を上にもちあげ、伊達締めで抑えるとスッキリとしたおはしょりが完成します。
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クリップは帯を締める際にも大活躍。着付けに欠かせないお助けアイテムです。また、お出かけの際にもクリップだけはバッグにしのばせています。


最後に、前回の記事によせられたコメントで、私のバラバラなサイズに対して「コートや羽織ものはどうしているのか」というご質問がありました。お恥ずかしながら、現段階では長襦袢の調整まで。道行コートは裄丈1尺7寸8分のため、同寸のきものの場合は少し出てきてしまいます。雨コートは裄丈1尺8寸に仕立ててあるため、今のところ問題ありません。長襦袢はきものの裄丈マイナス3分、コート類はきものの裄丈+2〜3分というように考えているのですが、コート類に関してはもう少し試行錯誤が必要です。

長々と紙幅を費やしてしまいました。着付けのお話を静物撮影でするのは、これが限界(笑)。何かのご参考になればと思います。では、佐藤さんにバトンタッチ。




date: 2010年03月11日

subject: 八掛と胴裏

from: 佐藤文絵



植田さん・樺澤さんの補正と着付けのお話、とっても参考になりました。
私は晒でくるんだタオルをウエストまわりに1枚、背中のくぼみにタオルを1枚&腰パッド、という3点セットがいつもの補正です。先日母から「鎖骨のあたりがさびしいから、柔らかもののときは胸元にも補正したほうがいいわよ」といわれて、今度からそれも加えようと思っているところです。
補正はとても大事なんだけど、できるだけシンプルにしたい気持ちもあります。脱脂綿はプロの着付けの方がよく使われますね。形も厚みも自由自在だから、とても合理的。樺澤さんが紹介してくれた三角型のもよさそうです。私も胸元の補正に何か見繕おっと。


さてさて今日は、きものの裏地のお話をさせてください。
というのは、以前長襦袢の話を伺いに京都のメーカー、浅見さん(公式サイトはこちら)を訪ねた際(→2009/08/28の記事参照)、八掛と胴裏のことも、多く教えていただいたのです。恥ずかしながらまったく頓着していなかった部分で、新たに知ることばかりでした。ほとんど受け売りかもしれないのですけど、ご紹介したいと思います。

まずは八掛について。
八掛はおしゃれアイテムでもあるから、こだわりをもって選ばれている方も多いと思います。ちらりと色がのぞいた瞬間、にくいっ!と唸ってしまったこと、何度かあります。
自分についていえば、八掛のおしゃれは先の楽しみと思っていて、無難に共色か、共濃・共薄に染めてもらっています。すくないワードローブで着まわすには、八掛で遊んでしまうと、コーディネイトがしずらくなってしまうのです(それは私が全体的に色数を抑えめにしたいからかもしれません)。

色のことはさておき、機能的に大事なのは〈すべりがよいこと〉〈伸び縮みしないこと〉、この2点であると教えてもらいました。
すべりがよい=裾さばきがスムーズにするために。伸び縮みしない=裏地が収縮すると裾が“袋”になりやすいから、ということですね。

素材のほうは、実はいろいろバリエーションがあるようですが、一般的には、柔らかものに薦められる後染の「精華パレス」、紬用に薦められる先染の「駒撚り」、この2種類になると思います。

【紬につける八掛】
紬用に作られている「駒撚り」の八掛は切れやすいという弱点があり、避ける方も少なくありません。薦めない呉服店もあります。私も一枚駒撚りの八掛をつけた紬があるのですが、着ている回数に比べてだいぶハイペースで傷んでいくなあと実感しています。
「紬だから紬用で」とあまり考えずに選んでしまったのだけど、精華パレスにしておけばよかったと後悔。ほっこりとした紬とつるんとした精華パレスとでは、たしかに風合いの違いは大きいです。でも、それより強度を優先したいです。

ところが、強度もあり、風合いもぴったりの八掛があるんですね。真綿紬の八掛は、風合いがあって、後染ができ、摩擦に強いとききました。

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左=ざっくりとした風合いのある紬用の八掛。既成の色から選ぶのではなく、別染ができるのがうれしい。こちらの八掛、気になるお値段は、精華パレスなどの1.5倍くらいとのこと。=棚にずらりと並ぶ八掛の図。なかなか壮観だったので、思わずパチリ。


例として無地紬の八掛を想像してみると、きれいな感じで着るなら精華パレス、ほっこり素朴モードで着るなら真綿紬――そんなふうに選ぶといいのかなあと思います。で、こちらの久米島紬など、洗い張りの折には、ぜひ真綿紬の八掛に取り替えたい候補ナンバーワン。

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無地の八掛だと、裏うつり(八掛と胴裏と色の境目がうつってしまう)してしまうかも、とのアドバイスでぼかしの八掛に。仕立てあがってみると、紬の風合い、絣の色合いと、精華パレス&ぼかしの八掛はどうも違和感が…。八掛の色(別染なのですが)が明るすぎて、逆に表地の色がくすんで見えてしまっている気も。


【ぼかしの八掛】
ぼかしの八掛は歴史が浅く、戦後に生まれたもののようです。薄い色のきものが流行し、それに合わせて作られるようになったと言われています。
ぼかしの八掛は、洗い張り後に、汚れた部分、擦り切れた部分を縫いこむには限度があり、天地をひっくりかえして使うこともできないから、もったいないのですよね。
でも薄い色のきものには仕方がないのか…。
と、あきらめることなかれ。長尺の八掛という選択肢があります。

【長尺の八掛】
普通、八掛の長さは1丈強(訪問着などに用いられる八掛付きの反物を四丈物、普通の反物を三丈物といいますよね。実際はもう少し長いようですが)。仕立てると、八掛の長さは標準で裾から1尺6寸になります。
いっぽう長尺の八掛は1丈5尺ほどあり、主にお引きずりのきものや、胴抜き仕立て(胴裏を使わない仕立て)* に使われているようです。これを普通のきものに使うと、おはしょりで隠れるところまですっぽり八掛が覆ってくれて、胴裏との境界線が表にひびきません。具体的には、衽についている八掛のラインと同じ高さに、一本に揃えることができます。
ただし胴裏・八掛の継ぎ目に腰紐の位置が重なるとゴロゴロしそうだから、そこは気をつけたほうがいいかもしれませんね。

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浅見さん曰く、
「日本人の体型に合わせて反物の巾や長さは変わっていっているのに、八掛の長さだけが取り残されているのかも知れません。」
とのこと。そして長尺の八掛もあるということを知ってほしい、とおっしゃっていました。
うーん、なるほど!

* 胴抜き仕立てにはいくつかバリエーションがあるようです。丸富さんのウェブサイトにその説明がありました。
http://www.shitatemasu.com/modules/news/index.php?content_id=29
(長尺の八掛は選択肢にないようですが、いかがなものでしょう?>富田さま)

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ふと見ると、一枚のきものは長めの八掛がついていました。「今の方だと1尺6寸より長いめにしたほうがバランスがいいですね」と話すのは仕立ててくださった呉服店の方。裾から2尺1寸ほどあります。
また、こちらは真っ白の胴裏をよしとせず、表地に沿う色に胴裏を染めるのもこだわりのひとつ。



【胴裏にとって大事なのは?】
さて最後に胴裏について。同じく浅見さんによれば、胴裏にとって機能的に大事なのは〈表地との一体感〉そして〈長襦袢との一体感〉にあるといいます。胴裏は、きものと長襦袢をうまく繋いでくれるものでなくてはいけない。うまく繋いでくれると、着崩れが生じない、ということなんです。つまり八掛とは求められる機能がまったく違うんですね。

「胴裏は、表地と長襦袢、双方に沿って馴染むことが大事です。つなぐ役目だから、本来つるつるしていてはいけない。昔は裏絹(胴裏のこと)に羽二重は使わなかったのです。裏絹といえば、節絹あるいは玉絹がふつうでした。
ただ節絹は太い糸で織られていたため、目が粗く、最終段階で強度をもたせるためにでんぷん質の糊で固めていました。当時は家庭でまめに洗い張りをしていましたから、それでよかったのですが、めったに着物を着ない、虫干しをしない、家の中の機密性が上がっていく…という生活の変化で、胴裏にカビが生じる結果となり、廃れていったのだと思います。
当社では経糸と緯糸の密度をうんと密にすることで、後加工をしなくとも強度のある節絹を織ることができるようになりました。残念ながらあまり一般的ではなく、本当にこだわっている方にお使いいただいている…という商品です。でも、本来胴裏として優れているはずの節絹の良さに、もう一度気づいてほしいと願っています。」


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こちらが浅見製の胴裏。節のあるものと、節の目立たないものとがあります。またまた気になるお値段ですが、なにしろ定価のないきものの世界のこと。価格はお店によるため一概にはいえませんが、特に高価なわけではなさそうです。胴裏もピンからキリまで。松竹梅の松クラスというところでしょうか。
現在流通している胴裏の多くは「グラフト加工」という後加工がされています。これは増量加工とも言われます。加工することで、つるつる、なめらかな風合いになるのだけども、そういった加工無しの、いわばすっぴんの絹、ギシギシとした手触りのものこそ、きちんと繋ぎの役割を果たすはず、ともおっしゃっていました。


胴裏とはつるつるしたものだと思っていたから、このお話は目からウロコでした。確かに昔のきものには、節の目立つざらざらとした胴裏、紅絹が使われています。それにはちゃんと理由があったのですね。次にきものを仕立てるときには、“節絹の胴裏”をつけて、その着心地を味わってみたいと思っています。


月をまたいで続いている〈着付けと仕立て〉のお話。私が書かせてもらうのはたぶんこれが最後です。またまた長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
では、また。

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寒さがゆるみ、ふたたび暖かくなってきましたね。これはチンゲン菜のお花。かわいいでしょう。食べ損ねたチンゲン菜(笑)、きれいに咲いてくれました。

date: 2010年03月19日

subject: 結ばない腰紐の締め方

from: 植田伊津子



佐藤さんの胴裏と八掛のお話、興味深かったです。真綿紬の八掛があるなんて知りませんでした。どんなものか一度使用してみたいですね。

ところで、わたくしも御多分にもれず、裏の生地についてはずっと呉服屋さんで調達してもらったものを言われるがままつけていました。でも、よくきものをつくるようになったら、これらの生地には値段に幅があり、いろんな種類があることを知ったのです。
探せばインターネット上でお得なものをたくさん見かけますね。

それで自分で実際にいろんな価格帯のものを試してみたら、よい胴裏と八掛が見えてきました。パッと見は変わりないのですが、生地なじみがイマイチだからフガフガしちゃうもの、生地が割れるなど強度が弱いもの、収縮率がきものと違っていて「袋」になってしまうもの……。

何千円かをけちって不具合が生じるたびに仕立てを直すのと、裏物も洗い張りをして長く使うのと、どちらをとるかといえば、しっかりとしたものを買うほうが、長い目で見て安上がりだったりします。
ただ、廉価な普段着に最高級の裏物をつけるのは馬鹿らしいですよね。きものづくりの原則は、表地の質に合わせて裏生地を選択するのが本来だと思っています。

望ましいのは、確かな品質のものを安くに手に入れることですよね。ですから、裏物を購入したときに商品写真を撮っておくのも手。
そうすると「わたしはこの前にどんな裏地を買ったっけ?」という記憶がはっきりします。気に入った胴裏が見つかったら、それと同じ商品をネットやバーゲンで探してもよいかもしれません。

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自宅にある裏地の一部。白生地専門店などで胴裏を「匹(ひき)」という単位で買えば、3枚分とれますからリーズナブル。昔は匹で買うと、衿裏の生地がとれずにバチ衿になったものだという話を聞いたことがありますが、今はそんなことはないですよ。


さて、前置きはこのぐらいにして着付けの話に入ります。
今日はとくに腰紐の締め方、留め方を取り上げます。
ほんとうは衿合わせやおはしょりの処理の仕方、帯結びについても個々に詳しくお話ししたいのですが、写真挿図が用意できませんでした。ご容赦くださいませ。

[腰紐のツボ]
腰紐の位置は大事。腰紐は何度か着るうちに、おさまりよい場所が定まってくると思います。各人がその快適な場所を見つけてみてください。
さて、わたくしは腰紐を下目に締めるタイプ。腰紐の留め方はいろいろありますが、結び目をつくらないで留めています。というのも、下目に締めたときに結び目をつくると、やはりおはしょりがゴロゴロする場合があるんですね。
早速「腰紐を結ばないで留めるやり方」をご紹介しましょう。

1、長襦袢を着用してきものに片袖ずつ手を通したら、共襟の縫い目を合わせて、長襦袢と後ろ衿の中心をクリップで留めます(きもののほうを1cmほど長襦袢より出します)。

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共襟の縫い目を持って軽く前に引くと、後ろの背縫いが真ん中にきて、襟が長襦袢にも添います。


2、衿は、左右とも衿先から15〜20cmほどのところを人指し指を内側、中指他3本を外にして持ちます。この手つきで衿先を持つと、上前下前の褄先を上手に上げられるのです。

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衿先を持つ手付き。


3、裾を開いて、左の脇縫いを横に決めたら、上前側を左に引いて、後ろがたるまないようにします。このとき引っ張り過ぎると下着の線があらわになりますし、また引き加減が弱いと後ろにたるみが出ますので、静かにお尻のあたりに布を添わせる感覚です。

引きが強いと細身の包み込みにはなりますが、生地の遊びが少なくなるので、たとえば正座をしたときに背縫いの負担が強くなりすぎて、ビリッと破れたりしますから、この裾線を決めるときの上前の引き加減は意外に重要です。


4、それから、右手の下前を決めます。下前の褄をはじめから上げるのではなく、左脇につくまでは平行にして、最後に褄を上げると右脇が斜めになって、まず右の脇線が裾すぼまりに斜めに入ります。
薬指と小指を跳ね上げるようにして、褄先をアップさせる感じといえばよいでしょうか。


5、それから左の上前を重ねて上前の褄を上げて、内側の下前の余分な生地を上に上げたり逃がしたりして、左手で2枚の重なりを押さえてから腰紐をとります。このとき、腰紐はかならず長さの半分あたりを持ちます。
腰紐の締め方は「前は下げぎみ、後ろは上ぎみ」にして紐を回します。背は衣紋を抜きますから、上方向に紐を回さないと、おはしょりをつくったときに前後水平になりません。


6、紐の結び方は、上前下前と同じ重なり方にしますから、左の紐を上、右の紐を下に持ってきます。

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これは腰紐、胸紐、伊達締めや帯締、みんな共通のきまり。この写真ではカメラ撮影の関係で、左手の一手で左右のひもを持っています。


腰紐はまず腰をひと回りし、ふた回りめにきたら、前で左を上、右を下にして、2本一緒に重ねてからげます。1本だけでからげるとゆるみますが、2本一緒ならゆるみません。
ひとからげ、ふたからげをしたら、そのまま残りの紐を腰紐に添ってのばし、端を軽く挟んで留めます。

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左を上、右を下にして、2本一緒にひとからげ。紐がきついでしょうが通しきって、ギュッと締めます。


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2度からげたところ。そうしたら、左右の紐を入れ替えたりせずに、そのまま胴囲に紐を添わせます。この残り紐はたるませません。残り紐をゆるいまま挟んでいると、何かの拍子に端が落ちてきますので要注意。


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結ばないけれどしっかり留まります。ただポリエステル製の腰紐はどうかはわかりません。写真の腰紐は「きんち」という絹製のもの。モスリン(毛)製でもすべらないので大丈夫。


7、衽線をチェックします。
・衽線の延長線が、上前の右足の端ぐらいの位置か?←右足の端より外側だと上前が回りすぎていて不恰好。それより内側だと、正座をしたときに上前が開いて長襦袢が見える可能性があります。

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※これは鏡の姿を撮影しているため、上前が逆に写っています。


・衽線より先の部分だけ褄が上がっているか? 前身頃から褄が上がっていないか?←前身頃から斜めに上がっているようだと上がりすぎ。裾もすぼまりすぎの可能性大。
衽線までは写真のようにほぼ床と平行で、下前がのぞいたりはしません。やわらかものは床のギリギリぐらいの長さにして、草履を履いてちょうどよいぐらい。織物はもう少しだけ上げます。
裾すぼまりはきものの大切な要素ですけれど、あまり角度がきついと品よく映りません。そのため、やわらかものでも極端に上前を斜めには上げません。


・上前の衿先の角度が、裾に対して斜めすぎないか?←下の写真の赤い横線が、極端な斜めになっていると衽部分に斜めに筋のようなシワができたり、褄が上がりすぎたりします。

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衽線や衿先の角度は、腰紐を締めてから調整します。


うーん、モデルさんかボディがないと、写真挿図がつくれないので解りにくいような気がします。ごめんなさい(>_<)。今回は、結び目をつくらない腰紐の結び方のみ説明しましたが、長襦袢の着方やおはしょり、えりの重ね方、帯の結び方などにもポイントがあって、とてもここではご紹介しきれません。

わたくしはいい加減な着付けですから、たぶんプロの着付け教室などでは、もっとていねいに教えてもらえるでしょう。最近は大手の着付け教室でなくとも、インターネットでよさそうな着付け教室をいくらでも見つけられますし、呉服屋さんでも広報の一環でそういう教室をされていたりもします。

わたくしは、器具を使った着付けやコーリンベルトを使う方法でもよいので、まずどんなやり方でもチャレンジしてみたらよいと思っています。基本的なきものの構造さえ解ってしまえば、あとは経験の積み重ねによって自信がついてきますし、他のやり方について受け入れる余裕もできるではないかしら。

ともかく、「着られなくてははじまらない」のがきもの。別に先生と呼ばれる人でなくても、きものをよく着ている人はたいがい教えられますから、「教わりたい」と身近なところで声を挙げてみてはいかがでしょう。
きものを着たいという人には、きっと周りの人は手を差し伸べてくれると思います。


さて、1年続いてきました「きもの*BASICルール」も、ひとまずこれでおしまいです。本ブログを通じてたくさんの方に出会いましたこと、わたくしにとりまして望外の喜びでした。
ご愛読いただきましたすべての皆さんに厚く御礼申し上げます。


                              植田伊津子拝


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