date: 2010年01月07日

subject: 初釜のきもの

from: 佐藤文絵



みなさま、新年あけましておめでとうございます。よいお正月を過ごされましたでしょうか。
わたしは元旦から東京と横浜に帰りました。薄茶をいっぷく、お雑煮をいただいて、それからヒコーキに乗って、ビューン。元旦はどこにいてもすがすがしく思えるものだけど、飛行場はまた特別に気持ちがよいのです。

そうこうしているうちにもう七日。今月のテーマは〈習い事のドレスコード〉。ここでいう習い事は、お茶、香道、小唄、鼓、仕舞・・・等々、もちろん和の習い事のこと。
きものを好きになって和の習い事を始める方は多いと思うし(私もそのひとり)、その逆の流れの方も多いと思います。きものも和の習い事も同じベクトルにあるから、両方に惹かれていくのでしょうね。今のところ私はお茶ただひとつだけど、興味はたくさん広がっています。仕舞も書道も友禅教室も、余裕があるならぜんぶ習いたい!


さて今日はひとつご相談させてください。
この週末に初釜があり、何を着ていこうかと思案中なのです。
友禅のきものは昨年着てしまったから(一度着たら二度と着ないなんていうことはないけれど、ただ連続は避けたくて)別のもの。そうすると自動的に一つ紋の色無地となるのですが、きものが無地なら帯は華やかにして、お正月らしい装いにしたいところ...。

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一番好きな椿の唐織の袋帯と。初釜ならと紅の帯揚げを合わせてみたけれど、紅はちょっときついかなあ。いずれにしても、なんとなく物足りない感じも。いやしかし30代半ばならこんなものでしょうか。

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刺繍はどうかしらと合わせてみたのがこちら。だいぶ明るく華やかになりました。こちらのほうがよさそう。だけどこの帯、名古屋なのです。うーん。袋帯ならよかったのですが。


植田さん、樺澤さんだったら、どちらを選びますか?
読んでくださっている方もぜひご意見お寄せくださいませ。
初釜は「金糸銀糸はあり?」「色無地は地味?」「振袖はあり?」・・・といった迷いやすいポイントがいくつかありますね。おそらく、これまで三人で話し合ってきた結婚式などと同じように、その場の雰囲気、集まる方たちの雰囲気次第という部分も大きいと思います。ちなみに私が参加させてもらう初釜は、さまざまな縁で多くの人たちが参加される初釜ゆえドレスコードも一様ではなく、きっとどちらでも大丈夫だろうなあという感じがしています。それでも自分なりの基準を身につけていくためには、あれこれ思案したほうがいいですよね。みなさまのご意見もきかせてもらえたら嬉しいです。


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何はともあれ、足袋や懐紙などは新しいものを。初めておろすきれいな足袋は、無条件でしゃきっとした気持ちにさせてくれますね。今年もしっかりと習うことができますように。大事に思っている本に『おのれを磨く日々のけいこ』(堀内宗心著)というものがあります。これは世界文化社の「お茶のおけいこ」という24冊シリーズの24冊目の本なのですが、シリーズの最後の最後で、いまいちど原点に戻るといったものなのです。例えば袱紗のたたみ方が丁寧に書かれています。何が大事なことなのかも。
これで充分できると自分で意識したとき、もう一回同じことを繰り返す、それがけいこである――いや私はとてもそこまで到達していないけれど、この教えを念頭に、また一年励みたいと思っています。

date: 2010年01月12日

subject: 初釜のきもの

from: 植田伊津子



習い事のきものといえば、わたくしにとっては茶道のきもの。
習い事をするうちに「じゃあ、お稽古をするなら、きものを着られるようになろう」となるか、それともきものが好きになったから「それなら和の習い事でもしようか」となるか……は、鶏が先か卵が先かみたいな話ですけれど、きっかけはどちらでもいい、とわたくしは思っています。
日本の伝統衣装を身につけて、日本文化に親しむって素敵なことなんですから。

さて、わたくしが慣れ親しんでいる茶道のきものの世界では、お茶会や炉開き、初釜などといった催しがあり、そういう場合は日頃のお稽古では洋服を着ている場合でも、きものを着てうかがうのが通例です。

結婚式や卒業・入学式できものを着なくなって久しい現代、習い事での催しにおけるハレの場は、「衣装によって相手に祝意を伝える」「『ハレ』と『ケ』をあらためて知る」という貴重なチャンスのような気がするんですね。制度的なきものを着る場として、習い事の世界はいまだ有効に機能しています。

[初釜のきもの]
たとえば、茶の湯の世界で1月の大切な行事に初釜があります。佐藤さんが先日初釜のきものをどうしたらいいのかな、と迷われていましたね。わたくしも一昨日が自身の稽古場の初釜でした。

ちなみに、茶道における初釜という行事は、一年のいちばん最初のお稽古始めをいい、習っている人たち一同が顔を合わせて瑞祥を祝います。

内容は茶会形式で、師が濃茶を練り、薄茶となります。薄茶の点前をする人はさまざまで、先生が点前されることもありますし、社中の誰かが代表しておこなうこともあります。もしくは複数人が札を引き合って、薄茶点前を順におこなったりもします(七事式)。
そして懐石形式(もしくは略式のお弁当)の食事で一献、というケースが多いのではないでしょうか。

この初釜は寿ぎの会でもありますので、ハレ的なきものを着てうかがいましょう、という慣例があります。
では、ハレ的なきものとはどういうものなのでしょう。

ハレのきものといえば、やはり「紋付き」「絵羽もの」がポイントだと思います。一般的な礼装のきものの約束事は以前に書いたことがありますね(訪問着色無地)。
そして、なごや帯よりは袋帯。袋帯でも遊び的なしゃれ袋はくだけますので、格式が問われる場では古典的な柄行きが好まれます。
これもふつうのきものの世界の約束と同じです。

といっても、第一礼装の色留袖は、この場合ほとんど用いられません。初釜のきものは、紋付きの色無地か訪問着、付下げ、振り袖の中から選択するというケースがほとんどといってよいでしょう。

一つ紋付きの色無地+袋帯の組み合わせがお茶の世界の「制服」のように扱われている今、初釜のきものには、プラスの要素として「はなやかな趣き」が求められるような気がします。
他人から見て「明るい」「きれい」「場を盛り上げる」「はなやか」といった祝祭感のあるきものが、初釜の席にはふさわしいといえます。


[初釜の装い一例]
さて、では実際にどんな装いをされているか、わたくしのお稽古場のみなさんを例にとって紹介してみましょう。
わたくしが通っている教場の初釜では、全体の4割が色無地(もしくは江戸小紋)一つ紋付き、5割が絵羽物、1割が小紋や洋服といった装いでした。

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26歳未婚のSさん。こちらのお母さまが20数年前につくられたという訪問着を着ていらっしゃいました。紋綸子の朱地に唐花や抽象的な草花を友禅で描いたもの。千總さんのものだそうです。とってもはなやかで、見とれてしまいました。

帯は振り袖用の袋帯をふくら雀に結んで。若草色の総絞りの帯揚げ、朱茶地の亀甲の帯締です。かさばらないちりめんや紋綸子の帯揚げを使うと大人っぽくなり、絞りの帯揚げを用いると、若々しさが出て愛らしくなりますね。

20代の方が、こういう明るいきものでいらっしゃると、その場所にパッと花が咲いたように感じます。ああ、きれいでうつくしいきものって、なんていいんだろう。


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30代後半、既婚で小さなお嬢さんがいるTさん。昨年こちらの方が色無地の一つ紋付きをつくりたい、とのことで、わたくしが相談に乗りました。
年齢や顔立ち、お茶会の頻度、これからどういうふうにきものをそろえていくか……など、いろいろ考慮して、明るいけれど、冴えすぎないサーモンオレンジのこの色に決定。
地は牡丹唐草の紋意匠です。はじめての色無地は遊びすぎず、着回しのきくタイプの格調の高い柄をおすすめします。これなら、かなり長く染め替えをしないでも着られるでしょう。

帯は、唐花七宝繋ぎの袋帯で、七宝の重なり部分が雲形の唐織というもの。地は紗に近い薄地で、凝った素材を軽やかに組み合わせているのが現代的な印象です。

この帯選びのご相談にも乗ったのですが、Tさんがお求めにならなかったら、私が即買いしたいと思うほど、この帯はお茶のどんなシーンにも役立ちそうでした。古典柄だけど、糸使いがしゃれているのです。
「初釜に、この組み合わせで着てきました」とTさん。Tさんの雰囲気に合っているのを確認して、わたくしもホッとしました。


[芸のある色無地]
ところで「初釜に色無地はさびしいですか」という質問をよく受けますが、地紋と色味の選択次第で、色無地でもけっしてそうとはなりません。
ただし、洋服とちがって色面積が大きいのが色無地のきものですから、これには「芸」のある色のチョイスが重要だと考えています。

たとえば、ナチュラル系やアースカラーなどのシンプルな色味は、AプラスBみたいな場合の組み合わせの一色としては有効ですが、色無地としてその一色が映えるかどうかをシビアに考えてみると、少し物足りないように思っています。

「芸」のある色味といえば、インパクトのある強い色を思われるかもしれませんけれど、そうではないんですよね。
茶道ではとくに、茶道具や茶室などさまざまな要素による「調和の美」というものがあります。

ハーモニーの一端を担う、落ち着いたはなやかさ……要は「品」というものが、日本文化のたしなみ事の場には、やはり求められるような気がしています。


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50代後半のSさん。さきほどの26歳Sさんのお母さまです。親子でお茶をされているのです。ぱっと見、唐草模様の小紋かな、と思ったのですが、絵羽付けのきものでした。上前に矢羽の羽根、後ろに的というおめでたい作行きです。

それにしても、木綿風呂敷のような伝統的な唐草の地紋がおもしろいですね。
最近は白生地の地紋も小紋の柄も、消極的ご時世を反映してか、細かくて小さいものが多いのです。そういうきものの中で、大きな染め地紋が人目を引いていました。帯は朱地の笹丸紋の唐織の袋帯。


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30代後半のWさんは、ベビーピンク地の桜菊刺繍訪問着。右側の写真は袖のアップです。
金彩のラインで菊を表し、ピンクのグラデーションの面刺繍で桜を描いています。帯は振り袖の金地の豪華な袋帯を合わせていました。

お茶席のきものはにじったりする動作が頻繁なので、膝下に刺繍のあるきものをさける傾向がありますが、スタッフ側ではなくおよばれの席で、さほど動かないのが判っているのなら、刺繍のきものもうまく生きるものです。

「よく似合っているわね。写真を撮らせてもらえる?」と声をかけると、「母のきものなんです」とWさん。いつものマニッシュなイメージとは180度変わった姿。こういうきものを着ていたら、新年から気持ちがおだやかになりそうです。「馬子にも衣装って、このことですね」……と本人が照れていましたね。


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最後は40代前半のわたくし。いろいろ悩んだ結果、18歳のときに母がはじめてつくってくれた鮫小紋の一つ紋付きにしました。こうして他の皆さんにくらべると、だいぶん地味かもしれません。

初釜に祝祭感が求められているということは判っていたのですが、わたくしの今年のお茶のお稽古は、「一より習い十を知り、十よりかえる元のその一」という初心に立ち返って過ごしていきたいと思って、お茶のきものとして最初につくってもらった一枚に袖を通したのでした。

たかがきもの、されどきものです。個人的に思い入れの深いこのきものを着たら、気持ちを刷新できるような気がしたのです。
帯は輪奈天鵞紋袋帯。帯揚げは桜色の輪出し、それに真っ白の帯締を合わせました。

きものは、記憶を呼び覚ましたり、またさまざまな思いを託せることもできます。そして母から娘へリレーして譲り渡すこともできます。
「命あるきもの」という思いをあらたにしますね。


date: 2010年01月15日

subject: 初稽古の装い

from: 樺澤貴子



植田さんのお稽古場の初釜のご様子、とても素敵ですね。皆さん、それぞれに初春の茶会を寿ぐ趣向を凝らしながらも、「個」が前に出すぎず、華やかさの匙加減がとても参考になりました。私はおふたりに遅ればせながら、17日(日)に稽古場の初釜を迎えます。皆さんの着こなしと、稽古場の雰囲気を考えて下記の2案を考えてみました。さて、どうしましょう。ご報告は、また後日に。

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左:色無地に仕服の刺繍をほどこしたきもの+唐織の袋帯。白地に朱赤の飛び絞りの帯揚げと若竹色の帯締めで新春らしさを演出。きものの雰囲気が少しカジュアルなような気もしますが・・・私のお稽古場は先生がきものに対して厳しい事を仰らない方で、怖いお姉様もいらっしゃらないので、「着たい!」という実の気持ちを優先させてもよいものか?
右:白茶から裾や袖下に向かってオリーブ色へと暈した地に、梅と蛍袋を描いた付下げ訪問着+同じ唐織の袋帯。きものの地色がシックなので、サーモンピンクの帯揚げと曙色の帯締めを効かせて全体をトーンアップ。



さて、今日は私が習っている小唄・小唄三味線、書道も含めて初稽古の装いについて触れたいと思います。具体的なお話をするまえに、お稽古の装いについて私が大切にしていることを少しお話させてください。それは、「教えていただく」という謙虚な気持ちを装いに込めることです。自分が主なのではなく、あくまでも先生が主。だからといって、まったく個性が出せないスタイルだけではつまらないですよね。私がポイントしていることは、帯まわりに甘さをひと匙プラスすることです。これは以前、笹島寿美先生に教わったお稽古のコーディネートのコツです。

笹島先生曰く、「お稽古の装いにおいては、教える側からみて可愛らしく見えることが大切。それには帯が重要なのよ。面積の広いきものは年相応の色柄が問われるけれど、帯は年齢なしのアイテム。年齢を重ねた方が可愛らしい色柄の帯をしていると、かえって、おおらかな人柄が映し出されるように、お稽古のシーンにおいては教えを請う素直さが表現できるのよ。赤い帯締めなども、和のお稽古らしい装いのキーアイテムといえるわね」とのこと。この言葉は私がお稽古のきものを選ぶ際の支えとなっています。では、実践編をご覧くださいませ。


[小唄・小唄三味線の初稽古]
実は6年間続けた小唄と小唄三味線のお稽古を、昨年12月の上旬で一度休会しました。引き続き発表会のお手伝いやら師匠へのご挨拶は続いているため、それを踏まえてお話させていただきます。

私が教わっていた師匠は赤坂の元芸者さんだったため、着こなしは華やかかつ粋な要素を大切にされています。きものの好みや色合わせにも、赤坂芸者の独特なルールがありました。例えば、以前もご紹介しましたが、帯揚げは必ず「ピンク」が決まりでした。うっかり「きれいな色だからいいかなぁ〜」と自分なりに考えて水色の帯揚げを締めていった際には、チャッキリとした江戸っ子らしい物言いで放送禁止用語が飛んできてビックリ!今考えると、水色は新橋芸者を代表する色でもあるため(緑みのある冴えた青を新橋色といいます)、特に目についたのかもしれません(笑)。その後は無駄な抵抗はやめて、素直にピンクのバリエーションを買い揃えました。

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小唄のお稽古の装いには、どこかにきりりと江戸っぽさを感じさせながら、師匠がお好きな華やかさをどこかにワンポイント加えることが必須。今年の初稽古には、こんなコーディネートを考えています。

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左:プロフィールでも着ている師匠からいただいた江戸小紋に、金彩による雲がお目出度い雰囲気の段暈しの染め帯。
右:新春らしい柳色の蛍暈しの小紋に、捻梅の綴れ帯。帯締めに鮮やかな色を効かせるコーディネートも、師匠のお好み。私もすっかり影響を受けました。



[書道]
書道のお稽古歴は、まだわずか1年半。お軸の変体仮名が読めるようになりたくて、通い始めました。今は古今和歌集・高野切第三種をコツコツと写しています。稽古日が平日の早めの夕方ということもあり、きもので伺うことは少ないのですが、それでも初稽古にはきもので行くようにしています。ほとんどの方が洋服なため、悪目立ちしないようにシックな紬が稽古場の雰囲気にしっくりときます。

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左:茶系の結城縮に椿の織り名古屋帯を合わせた昨年の装い。お稽古の時に締める帯締めの赤は、笹島先生の仰るとおり、可愛らしさと素直さが生まれます。
右:同じきものでも、今年は帯と帯締めを柔らかなトーンにしてみようと思います。



[お茶]
お茶の初稽古は初釜なのですが、その翌週からスタートする通常稽古は、初釜のお礼のご挨拶も含まれているため、普段の稽古よりも少しきちんと感の増した装いを心掛けています。きものは柳色の蛍絞りの小紋を選んだのですが、帯で迷っています。

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左:昨年もご紹介したに志田で誂えた唐織の名古屋帯。ペールピンクや水浅葱の帯締め透明感が、新春らしい清々しさを感じさせます。
右:目白のアンティークサロン花邑(銀座のアンティークモールにあるお店の姉妹店が昨年秋に目白にてオープンしました)で求めた、銀座世きねの未使用品。雪輪どりのなかに松竹梅の上品な刺繍がほどこされています。洗朱地に白で染め抜いた鹿の子絞りが、ほっこりと可愛らしい様子です。雪輪は私が通う江戸千家の紋でもあり、お茶のお稽古にぴったりと思って求めました。


色からすると、左のような。でも、右の松竹梅柄は出番の時期が限られているため、こちらを優先させるべきか・・・。どちらも、まだ一度も締めていない帯だけに悩みます。


お稽古の上達は遅々として進みませんが、きもののコーディネートを考えるのは、毎回大きな楽しみのひとつ。今年は小唄のお稽古を休止するエネルギーを、お茶と書道に注ぎたいと思います。そんなわけで、書初めに利休百首を! ゆっくりと墨をすると気持ちが鎮まり、改めて今年の決意を抱きました。

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左:手本にしているのは植田さんから戴いた『書いて覚える利休百首 毛筆で味わう、茶のこころ』(綾村捷子書・淡交社編)。右ページに上からなぞれるように薄墨で書かれた和歌があり、同じ和歌が解説つきで左ページにあるという、初心者に優しい構成となっています。直接なぞるのが惜しいので、私は半紙をのせて写しています〜。
右:近所の公園の紅梅がほころびました。寒波のニュースが流れるなか、嬉しい春の便りです。

date: 2010年01月20日

subject: お稽古小紋&洗えるきもの

from: 佐藤文絵



ああ、みなさん本当にすてき。植田さんの初釜レポートを楽しく拝見しました。樺澤さんには2つの候補があったけれど、どちらにされたのかな。個人的にときめいているのは樺澤さんの初釜翌週の初稽古のきもの。どちらも品よく可愛く上質感があり、大人らしいです。うっとり。
私は先日ご相談させていただいた結果、支持の厚かった白の唐織のほうを選びました。夫にも写真をみせたら「絶対こっち、おめでたい感じがする」と即答。やはり初釜の晴れやかな雰囲気にはすがすがしい白の唐織が合っていたように思います。今回みなさんの装いを拝見して、初釜において大事なポイントは“抑制のきいた華やかさ”なのだとしみじみ思いました。
ご意見くださったみなさま、ありがとうございました。

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写真で報告をしたかったのですが、ばたばたしていて撮るチャンスがなく、同じものを再掲です。草履はクリーム色。台と鼻緒が同色なのもあっておとなしめの印象だけど、蝋引き特有のパール感の効果か控えめな華やかさも。初釜のようなシチュエーションにぴったり。この日は帯締めと色がリンクしてくれて、なお嬉しい。


ところで初釜の一日は普段にも増して長時間の正座をすることになるから、膝の後ろがシワシワになりがち。そんなとき、どうしてますか?
私は手ぬぐいなどを当てて、多少の水分を使いながら(霧吹きなどで)アイロンをかけて伸ばしてました。でもある時からアイロンがけより、軽く蒸気を使うほうがきれいになると思うようになりました。参考までに、紹介しておきますね。

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この写真は夏に撮ったもの。素材は絽ちりめんです。お茶のお稽古後の状態なのですが、夏の汗のせいかしら、かなりしっかりとシワが入ってしまいました。

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アイロンの蒸気を当てて、手で布の表面を撫でるように手のしで伸ばします。これを何度か繰り返すと、すっきりシワが取れました。蒸気の影響でほんの少し堅い感じになるけれど、気にならない程度。当てていい水分は蒸気のみ。ボタボタと滴が垂れぬよう、充分気をつけてください。



前置きが長くなりましたが本題に。今日はお稽古の装いについてお話したいと思います。
私がお茶を始めた頃は、それこそ自分の好みをそのまま反映したきもの=紬、かつ汚すのを恐れてできるだけ濃い色目の紬を着てお稽古に出掛けてました。しかしこれは先輩のおばさまがたの眼には大層地味に映るようで、その色はいつまででも着られるわね、若いのに渋いわ、まあ地味――などと言われること度々。それならばとその後あっさり「お稽古小紋」に方針転換しました。

もちろん、そこにはお茶のお稽古には身体に添う柔らかもののほうが適しているという理由もありました。でも、たぶんそれより、わざわざナマイキにみられることもないし、おぼこくいこうというヨコシマな、あるいは軟弱な思いのほうが強かった気がします。
こんな行動はいかにも日本的で、私はついヨコシマ、軟弱などと自分を揶揄したくなるのです(笑)。だから先日樺澤さんが紹介してくれた「お稽古の装いにおいては、教える側からみて可愛らしく見えることが大切」とのきっぱりとした笹島先生の言葉にどきっとしました。でもまさにそのとおりなのですよね。至極納得、膝を打つ思い。胸を張っておぼこくいきたいと思います!

そんな経緯で、お稽古用にと急いで用意した小紋はこの2枚です。新調したものではなく、どちらも新古品でみつけた「きもの英」のもの(英のきものは以前に樺澤さんが紹介してくださっています。→2009/5/132009/11/24)。水滴や抹茶をこぼすこともあるし、ひどい雨の日もある。洗えるきものは本当に強い味方です。洗濯機でまわしてただ干すだけなのに、シワが生ずることなく、仕立ての狂いも見られない。これにはただただ感動しました。

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ここで合わせている帯はどちらも二部式。やはり着付の時間が短縮されるから出番が多いです。
化繊のきものは好まないという方もあるけれど、私にはすごく有難い存在。定評あるきもの英さんだけでなく、シルックのきものも、ぱっと見、絹と区別できません。肌触りは絹のようにはいかないけれど、それはそれ、これはこれ。弱点といえば冬場に化繊は寒いことと静電気が起こることの2つでしょうか。


ふだんのお稽古はこんなふうに、おぼこく&実用優先がコンセプト。格の高いお稽古やお茶会となるとまた装いが変わってきますね。植田さん、樺澤さんはどんなふうでしょうか?

date: 2010年01月25日

subject: やわらかものでお稽古

from: 植田伊津子



初釜席の着こなしって楽しいですよね。やはりハレのきものは特別だと思いますし、「特別」があるからこそ、ふだんの「日常(お稽古)」のきものも生き生きとして、よそおいにメリハリが生まれるように思っています。

さて、前回は佐藤さんがお茶のお稽古に着ている「洗える小紋」の話をしてくださいましたが、今日は引き続き、わたくしがお稽古着に対して感じていることをお話ししてみましょう。


[総柄の型小紋]
わたくしは身内がお茶に嗜んでいることもあって、比較的昔からお茶のきものが親しい存在でした。
身内からのお稽古着のお下がりの大半が、やわらかものの「総柄の型小紋」。具体的にいえば、江戸小紋や蒔き糊、縞小紋をはじめ、六つ目や小花、松葉、萩などといった小さな柄がつけられた京型小紋です。

昔はお稽古着といえば、このタイプと相場が決まっていたような気がします。飛び柄模様はおしゃれな街着という扱いで、お稽古でこの手を着ているのは、ちょっときばったおしゃれな方だったと記憶します。


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左=わたくしのお稽古着の一部。これらはお下がりの京型小紋です。普段着はこうした趣き約15枚ぐらいを使い回しています。
右=前にも掲載した写真ですが、お稽古に行くときはこのような総柄小紋に気どらない9寸なごや、もしくは8寸の織りなごやを締めて。



というのも、総柄の型小紋はいろんなタイプがありますが、総じて無地感覚ですから何にでも帯が合わせやすいのです。帯を変えれば、ややあらたまった感じにも、遊びの風にも変化させることができます。
そして初心者から通まで、どんなタイプの人でも着こなせることができます。「行き着くところは型小紋」とは、よくいったものですね。

わたくし自身も、今、いちばん安心するのはこういうきものです。季節を問わずに着られますし、織り帯も染め帯もどちらものります。ですから、お茶のお稽古着に何を買ったらよいか、と聞かれると「型小紋がいい」とアドバイスをするのですが、近年「これは」と思う型小紋が容易に見つからなくなりました。


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お稽古帯はほとんどなごやで、袷のものは約20数本。今回はじめて数えてみましたが、結構ありますね。お下がりが半分ほどです。私がこれらを購入するときに大切にしているポイントは、お稽古着でも品よく映るもの、遊びやおしゃれはほどほどの味つけで、全体的に「堅気に」見えるように、という部分です。
左=いちばん右端は龍村美術織物の有職文様の9寸なごや帯。あらたまった風に他人から見られたいとき、たとえば一つ紋付きのきもので奥伝の稽古にのぞむ場合や、研究会に行くときに締めたりします。お茶会ほど前に出ないけれど、お茶の世界に特有のあらたまったシチュエーションに、この手の織り帯は一本は必要ですね。
右=下の真ん中はタッサーシルクの無地。生成りと白の帯は、ごちゃごちゃしそうな組み合わせのお助け帯。


「型小紋」の主な特徴は、単色、もしくは1、2色の染色なのですが、最近はもっと複雑な染めがほどこされて上等になっているのです。そうするとたいがい高額になってしまって、お稽古着の値段ではないように思われます。
ですから、「ああ、いいな」と思って反物を取り上げてみても、値札を見て「高いなあ!」と驚くことがよくありますね。

お稽古着は普段着で、枚数も要りますから、高いものは手が出ません。
わたくしの目安は、着尺代に仕立代、八掛や胴裏代込みで10万円前後をひとつの目安にしています。ただし、これはほんとうにお稽古着というもので、「お稽古のあとに銀座に出かけよう」みたいな、お出かけにも着ていきたい用途も考えるならば、もう少しの出費を考えますね。

ただ、純粋にお稽古だけを目的としたきものならば、高価なものはまったく必要ありません。
身内のお下がりでも、アンティークでも新古品でも構わず、やわらかものでも織物のきもの、木綿でも何でもよく、とにかく「きもののかたち」をしていたらOKだと、わたくしは思っています。

趣味でジョギングをするのに、ユニクロのスポーツウエアでも、ナイキの最新型でも関係ないのと同じです。

きものから入って、きものを着る機会を得るためにお茶をやってみようか……という方は、そもそもきものにこだわりを持つおしゃれな方だと思いますが、お茶からきものへと興味が移っていった人は、きものへの興味の持ち方がさほどでもないかもしれません。でも正直、それでもいっこうに差し支えないでしょう。

実際のところ、高価でおしゃれなきものを着ているからといって、早くお茶に通じるわけではありません。というより、おしゃれなきものを着ているのに点前さえもおぼつかなかったり、茶会の受け答えがボロボロのようだと、結構そっちのほうが恥ずかしかったりします。
おしゃれな方ほど、お稽古をがんばらないと、まわりから目立つかもしれません。

お茶の道に入って、滞りなく物事を進められるようになったら、その人が着ているものは気にならないと感じています。
「きものの趣味は問われないけれど、きものを着てお稽古をするという気持ちが大切」というのは、ある種の真実です。だって、たしかにきものの立ち振る舞いは、洋服では体得できませんから。
(ちなみにお茶をしていて、茶道具の取り合わせといい、点前といい、人へのもてなし方といい、総合的に「すてきだな」と思う人は、たいてい趣味のよいきものを着ておられるものです。そういうところは、一本何かが通じているようです)

[やわらかもの]
ひと昔前は「お茶のお稽古にはやわらかもの」といわれたものですが、最近はお稽古のきものに関しては、まったくうるさくないのが現状でしょう。

なぜ「お茶のお稽古にはやわらかもの」といわれたのかといえば、織物のきものは身体に添いにくいので、点前の途中、身体の向きを変えるときに、堅い袖が棗の上に置いていた茶杓を引っかけて落としたり、道具を持ち運びするときのバサバサとした裾さばきが好まれなかったりしたからでした。

ところが、きものを着てお稽古にやってくるだけで貴重に思われるようになったり、また紬の流行などもあって、今のお稽古場では染めと織りのきものが半々というところも少なくないと思います。
とくに関東は、研究会や茶会といった催しでも、織物を着てお越しになる方が関西よりも目につきますね。

わたくしの場合、やわらかもののお下がりが多かったものですから、それらに袖を通し、教場へ向かうのは自然なことでした。
また、着付けに関してもそんなに苦労せず、着付けの本を何冊か買って、夏休みのある日、冷房を締め切った中で何回か着たり脱いだりしていたら、やわらかものでもスグに着られるようになりました。
あとは毎週きものを着てお稽古にうかがっていたら、それなりに板についてきたのです。わたくしは、人がいうほど着付けのむずかしさをまったく感じなかったんですね。

しかしお稽古場に次々と入門した若い方たちが、きものを着てお稽古をしている諸先輩たちに触発されて、「きものが着られるようになりたい」と一念発起しているのを見て、「どうもわたくしはきものと相性がよい人間だったのだな」と思うようになりました。
というのも、彼女たちは着付けを習得するのにすごく苦労をするのです。


[きものと相性がいい人、そうでない人]
彼女たちの何人かに着付けを教えて差し上げる機会がありましたが、おもしろいほど個人差がありました。
きものと相性が悪いと、何度やっても腰紐がうまく締められない、おはしょりの処理ができない、衿が決まらない、帯が背中にのらない……。
それでも何度もチャレンジをしていたら、誰もが必ず着られるようになります。それは間違いありません。

でもきものとの相性がよい人よりは、着られるようになるのにかなり時間がかかるのですから、「うまく着られないのがトラウマにならないだろうか。お茶がきらいにならないだろうか。きものを着てお稽古にのぞんだら、ちがう世界が開けて、もっとお茶も好きになるだろうに」とわたくしはやきもきしたものでした。

「きものを着るのが苦手な彼女たちに、どうしたら自信を持ってもらえるのだろう?」
グズグズにしか着られない自分の姿を見ていたら、きものを着るのがいやになりますよね。

ならば、それを解消するのは織りのきものかな、と次第に考え方が柔軟になってきました。織りのきものは、やわらかものより着付けがしやすく、おはしょりなども上手に整います。

ただ織りのきものは、お茶の所作に当てはめてみるとしなやかさにやや欠ける部分があって、わたくし的には「お稽古にはやわらかものを」とアドバイスしてきたのです。
ですが、着付けがつらい彼女たちの現状を目の当たりにすると、「きものを着るのが楽しい」と思える現状にならなければ、和の文化そのものの興味を失ってしまう、まず中に入ってもらわないと……と思うようになったのです。

ですから人によっては「織りにもいろんな種類があって、しなやかなものもあります。お茶にはそういうものもいいですね」とアドバイスをするようになりました。

もともと、やわらかものに親しんできたわたくしではありますが、たとえば織りのきものの中でも「御召」という種類は、お茶の人たちにもっと取り入れられてよいものだと思っていました。

なぜならば御召は、先染めでありながら染めと織りの中間あたりの着心地で、タレ感があるのに着付けもしやすいのです。それにお茶では立ったり座ったりが頻繁であるのに、何千回転という強撚糸を使っていますから、まったくへたらない丈夫さが持ち味。もちろん裾さばきも、やわらかもの同様に快適です。
それに、わたくしがみずからを実験台にして、大枚をはたいて長年研究してきた結果、御召は「やせて見えるきもの」なんですね。

御召については、詳しく次回、取り上げたいと思います。

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【ちょこっとお知らせ】
来月の20日(土)・21日(日)の2日間、東京・自由が丘の大塚文庫「選りすぐりの御召展」を開催します。
御召好きのわたくしが、たまたまこのような展示会のプロデュースをすることになりました。


この展示会では、終日2日間、会場で皆さんのご相談にのります。わたくしが大好きな取り合わせである「織りのきものをやさしく着こなす染め帯」も多くとりそろえる予定です。

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表が縞、裏が格子のリバーシブル御召(矢代仁)に桜の染め帯(犬飼千賀子作)。リバーシブル御召は単衣で楽しんでも。
御召のきものに落ち着いた感じのしゃれた絞りの帯も素敵ですね。


お茶の方面のきものはもちろんのこと、洒落着のおしゃれ、フォーマルのご相談、帯の取り合わせ方など……何かお悩みがございましたら、その方にもっともふさわしいものを一緒に考えさせていただきますので、物見遊山のひとつにお出かけください。

期間中は会場内茶室でお呈茶サービス(呈茶券500円)があります。お点前などはなく、蔭点の一席ですが、京都の老舗からおいしい主菓子を取り寄せますから、ぜひこちらもご賞味ください。

ちなみにこのお呈茶席でお茶をお出しをするみんなが、御召のきものを着用しますので、足もとの裾さばきにも注目くださいね(^_^)。



date: 2010年01月29日

subject: お稽古のきものと着付けの工夫

from: 樺澤貴子



佐藤さんが新古品で求めた「きもの英」のきものは、お買い物上手ですね〜。どちらもお茶のお稽古に活躍しそう。私は英のきものは、夏物と単衣しか用意がないので、袷の江戸小紋などを検討中。お稽古はもちろん、雨の日の茶会にも気兼ねなく着て行けそう!と目論んでいます。

そして、植田さんの総柄の型小紋のお稽古着は細雪の世界のようで素敵すね。「総柄の小紋は堅気に見える」という感覚がよくわかります。確かにこの手のきものは、最近あまり見かけませんね。私も何枚か総柄の小紋を持っていますが、「手描き&多色使い」のため、私のなかでは華やかパーティ小紋のカテゴリー。色数を抑えた総柄の型小紋というのは、お稽古着を選ぶ、新たな物差しとなりました!

おふたりのエピソードを読みながら、自分のお稽古きものについて考えてみました。柔らかものと織りものの割合でいうと、〈柔らかもの:織りもの〉の割合がお茶は7:3、小唄では3:7という感じです。

お茶のお稽古で柔らかものが多い理由は、植田さんも触れておられましたが、お茶のお稽古に織りものを着ると、点前の未熟さが露呈するからです(苦笑)。私は何度袂を建水に浸け、柄杓の合をお釜に水没させ、茶杓を茶器から落下させたことか・・・。柔らかものなら「はらり」とかわせるものが、織りものはそれを許してくれませぬ。そういう意味では、基本の点前をある程度心得た方なら織りものでも支障はないように思いました。私のお茶の先生はお稽古で織りものを御召しになることも多いため、つい便乗していましたが、やはり柔らものの方が、お茶の動きには実用的だと実感しています。と、理屈は分かっていても、仕事から戻って慌しく着付けをしてお稽古に出かける際は、時間短縮のために織りものを選んでしまうというのも現実です。

そのほか、柄付けやアイテムについて、私なりのルールがないかとワードローブを見直してみたら、ちょっとしたポイントが見つかりました。

[格子柄]
柔らかもの・織りものを問わず、「これはお稽古向き」と分類されているきものに、格子柄が多いことに改めて気付きました。格子柄は、私の中でチャッキリとした闊達さと可愛らしさがバランスよく共存した印象。仕事でくたびれながら気忙しくお稽古に通う自分の心情を映すと同時に、どことなく素直そうに見える柄行きのように思えて・・・・・・習い立ての時期に好んでお稽古に着て行きました。

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左が格子のきものシリーズ、右が帯シリーズ。お稽古に慣れて少し装いが変わってきた今は、出番が少ないのが正直なところ。でも、初心に戻って謙虚な気持ちでお稽古に向かいたい時には、格子柄を取り入れるような気がします。


[ピンクの帯]
ピンクという色が、大人の可愛らしさや「お稽古をつけていただく」という謙虚な気持ちを代弁してくれるような気がします。自分が心地よく、素直になれるテーマカラーは、人によって違うと思うのですが、私の場合はピンクなのかもしれません。きものだと私のキャラには甘すぎるのですが、帯だと取り入れやすいと感じています。また、植田さんも書いておられたように、お稽古とはいえご挨拶に伺うシチュエーションや同門の方の奥伝の稽古を拝見させていただく場合など、相手に敬意を表したい場合は改まった印象の織り名古屋帯が便利だと感じました。洒落袋では個性が前に出すぎるし、袋帯では重過ぎるという時に、ほどよい「きちんと感」を演出してくれるように思います。まだ数は多くありませんが、これからもう少し買い揃えたいと思っているアイテムです。

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自然と惹かれるのでしょうか?何気に多いピンク系・・・。きちんと感のある織り名古屋帯から染め帯、綴れ帯、洒落袋などが揃います。


さて、アイテムとは別に、着付けにおいてもお稽古事によってルールが異なる体験をしましたので、ご紹介させてください。ブログを読んでくださっている皆さんには、小唄のケースなどは参考にならないかもしれませんが、「ちょっと粋で洒脱な印象」に着付けたいときのコツといえると思います。

[1.衿合わせ]
お茶ではお辞儀をした時に肌襦袢が見えないように、長襦袢の前合わせを深めに着付けます。ちょっと「おぼこい」感じの衿合わせですね。一方、小唄の時には、きっちり衿を詰めていると「素人くさくて、色気がない!」と言われたものです。「だって〜素人だもん!」と心の中で思いながらも、少し鋭角な衿合わせに。

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静物撮影だと表現しにくいのですが、左が小唄、右がお茶。見た目にどれほどの違いがあるわけではないのですが、自分の気持ちの上で区別するということも大切な気がします。


[2.お太鼓の大きさ]
小唄のお師匠さんの着付けを見て、まず印象的だったのが「お太鼓、デカッ!」ということ。立ち姿のバランスよりも、座ったときに華やかに見えることを計算しているのかなぁと思ったのですが、お師匠さん曰く「この方が華奢にみえるのよ。お尻も小さく見える見えるでしょ」とのこと。

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左が小唄、右がお茶(これがレギュラーサイズです)。ほんの5〜6分ほどの差なのですが、座った時の印象は意外に違いが出ます。小唄のお師匠さんは私のレギュラーサイズのお太鼓よりも一寸は大きいように思います。これは、静物撮影なのでお太鼓を角ばったまま撮影していますが、着付け終わった最後に「両端の角を落とす」ということも、小唄の着付けのルールでした。


[3.前帯の幅と角度]
小唄のお師匠さんは前帯を斜(×になるように)に結びます。舞妓さんや芸妓さんたちも、出のお衣裳の時などに前帯を斜に結んでいますよね。これまた、お師匠さんの中のルール。年齢を重ねた方で、片側だけを斜めにずらす舟底形の前帯結びで洒脱な着こなしを演出されている方などはお見かけしますが、両側とも斜に結んでしまうとさすがに玄人気風に見えすぎてしまうため、小唄のお稽古の時に限られました。

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左が小唄、右がお茶。帯締めの色合いも、小唄の稽古ではシックな色は禁物、その場で師匠の私物と取り返させられて、なんだか得するお小言でした・・・(笑)。道明の鶸色の帯締めもお師匠さんからお説教とともに戴いたもの。


お太鼓の大きさに比例して、前帯の幅も小唄のお稽古の場合は少し広めにして結びます。お師匠さんから譲っていただいた付け帯と、自分で誂えた付け帯を比較すると3〜5分ほど幅が違います。

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端を比較すると3分ほどの差ですが、胴前にくる部分は5〜6分ほど幅が広くなります。それを斜に結ぶわけですから、かなり帯のボリュームが感じられます。



今日は最後に、先日の初釜の装いのご報告を。初釜の2日前の段階では、仕服の刺繍を施した付け下げ小紋と、梅と蛍袋を描いた付け下げ訪問着を候補に考えていました。でも、実際は、こんな装いに。

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まったく想定外の黒の宝尽くしの刺繍の訪問着となりました。黒の訪問着は、そもそも小唄の発表会のために誂えたため、他のシーンで着る場合は「粋筋に見えないかしら」という事を心配して出番が少なかった一枚。しかも、黒という色は12月の気忙しい季節には「気持ちが引き締まる色」という印象だったため、これまでは新春に着るという発想がありませんでした。


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実は、黒地の訪問着を誂える際に、「粋に見えない」ように、仕立てに少し工夫をほどこしました。左=通常は1尺3寸の袖丈(オレンジのきもの)を、1尺5寸に。袖丈が長くなることで小振袖感覚のたおやかさが生まれます。角の丸みも、大きめの1寸丸みにして可愛らしく(オレンジのきものは5分丸み)。右=袖丈1尺5寸の長襦袢をつくるほどの余裕はないので、きものの袖の内側に長襦袢の袖をつけました。


黒地の訪問着を選ぶに至る経緯は、ブログをアップした日の夜、写真を見た植田さんから届いた一通のメールから始まりました。そのメールの内容とは、「樺澤さんが候補にしている2案よりも、黒の宝尽くしの訪問着のほうが、初釜に厳粛な雰囲気をもたらすのではないかしら。黒が粋に見えてしまうのをご心配しているなら、明るい色の伊達衿をして、水色か明るいグリーンの総絞りの帯揚げをすると素敵だと思います」とのこと。しかも、植田さんの手元に水色系の総絞りの帯揚げが2枚あるので譲ってくださるという、ありがたいお申し出。「黒地のきもので初釜かぁ・・・」という先入観を捨て、お姉様の提案を受け入れることにしました。これが、ホント、大成功でした。

黒地のきものに、堅気らしい可愛らしさを演出してくれた小物は、この2つ!
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左=植田さんから戴いた、水浅葱色の総絞りの帯揚げ。「総絞りの帯揚げは成人式の時の結び方のように帯上に出さず、通常結びで、しかも結び目を中に押し込んで両端をふんわり見せることがコツ」というアドバスも伝授してくださいました。右=サーモンピンクの伊達衿


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植田さん曰く、「このきものの場合、白地に朱赤の飛び絞りの帯揚げを合わせるとかえって玄人っぽく見えてしまうわよ」とのこと。なるほど、比べてみると、その違いがわかります


初釜の当日は、先生も宝尽くしと吹き寄せを描いたを黒地の訪問着を御召しでした。しかも、帯揚げは紫の総絞り。総絞りの帯揚げを合わせられるのは成人式まで・・・と思っていたのですが、色を選べば年齢問わずという、よいお手本を見せていただきました。黒地の訪問着で初釜はOK!という安心感と同時に、「しまった、先生とかぶっている・・・」という焦りも(笑)。でも、これで出番の少なかった黒地の訪問着は救われました。植田さん、ありがとうございます!

最後におまけ。佐藤さんがきれいなお草履のお写真を載せていたので、私も撮影したくなりました〜。

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左=私のお茶会の履物の定番は、他の人と重なる率の少ない五段重ねの畳表のお草履。淡いピンク地にたっぷりと乱菊の刺繍をほどこした鼻緒ですが、抑え目の色によって品よくまとまっています。難点は、足袋カバーを履くと歩く時に、畳表の上で足が滑ること。これはいずれ解決した課題。どなたかよい方法をご存知ですか?
右=銀鼠のエナメル細型のように、重なりやすい場合は、鼻緒どめを忘れずに持参します。京都のハイアットーリージェンシー内にあるセレクトショップ京で求めたもの。1,575円とお値ごろで、きもの好きの方へのプチプレとしても重宝しています!


長々と紙幅を費やしてしまいました・・・最後までお付き合いをありがとうございます。今月のテーマはここまでかしら?2月は、いよいよこのブログの最後のお題「きものをきれいに着る仕立てと着付け」です。植田さんや佐藤さんのこだわりがたっぷりと伺えそうなテーマですね。楽しみにしています!

date: 2010年02月09日

subject: 御召のきもの

from: 植田伊津子



佐藤さん、樺澤さんと一緒にはじめたこのサイト。日を追うにしたがって、たくさんの方に御覧いただいています。こちらがちょっと驚くぐらい。ありがとうございます。もう一年も経つんですね。あと少し、がんばります(^_^)。

さて最後のテーマである〈着付けと仕立て〉に入る前に、わたくしは先の予告どおり、御召のきものについてお話をしようと思います。


[御召とは]
前回、私は「お茶のお稽古にはやわらかものがいいな」とは思うものの、着付けが苦手な方にはケースによって織りのきものをおすすめするようになった、と記しました。

紬が好きな方は、クラフト的な素材感に惹かれてもいるでしょうが、「紬なら上手に着られるのです」「着付けのときに、衿もとやおはしょりがきれいに整うので」と、着付けのしやすさを一番に挙げられる方が多いように思います。
おはしょりを腰紐で止めるときに、やわらかものはスルリと落ちてしまうことがあります。その点、表面に凹凸がある織物のきものは、初心者でも扱いやすいものといえるでしょう。

わたくしが織物のなかでも好ましく思っている「御召」という生地は、もっとも高級な〈先練り・先染め〉のきものです。
染めの縮緬地(ちなみに白地の縮緬は、〈後練り・後染め〉です)によく似ていますが、これよりもシボが控えめで、紬よりは目が詰んでおり、落ち着いた光沢が特徴。縞御召、絣御召、無地御召、紋御召、風通御召、絵緯御召、縫取御召などの種類があります。
大正・昭和初期頃は、山の手の奥さまやお嬢さんたちのお出かけ着として活用されてきました。この頃の日本画には、御召を着たモデルを見ることができます。

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左が上代縞御召。右が絣御召(どちらとも矢代仁製)。御召といえば女学生の矢絣御召というほど、絣の印象が強い人がいるかもしれません。また縞も代表的な御召の柄といえます。その昔は、棒縞、やたら縞、子持ち縞など、メリハリのあるはっきりとした柄が好まれていました。
しかしこの頃はそうした大胆な柄は影をひそめて、遠目からは無地に見えるやわらかい縞や絣が多くなってきています。わたくしは大胆な柄が着たいと思うほうですが、落ち着いた色合いも使いやすいでしょうね。上代(じょうだい)とは、緯糸に御召緯(後述)と紬糸を用いて、生地に紬風の表情を与えたもの。


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表と裏で表情が異なる縞格子の御召。江戸小紋でも表裏で模様が異なるものを単衣にするケースが多いと思いますが、同様にこれも単衣向きの御召。
落ち感にすぐれて、裾さばきのよい御召は、まず単衣につくってから、のちに袷に仕立て直すことも多いそう。


そもそもこれは、京都の西陣で300年ほど前からつくられていたそうです。徳川11代将軍家斉が好んで着用したのが「御召」の呼称の所以であるとか。

御召と呼ばれる反物の条件は、
(1)まず織る前に糸を染めた先染めであること
(2)緯糸に「御召緯(おめしぬき)」という1メートルに2500〜3000回転をかけた強撚糸を使用すること
(3)同じ回転数の右撚りと左撚りの御召緯を交互に同数ずつ織っていること
この3点を約束としています。

また経糸は、ほとんど撚りをかけない極細の糸を3000〜4000本、もっと密なものなら8000本も使用するのだそうです。
織り上げたのちに生地を湯に浸けて糊を落とすと、糸の撚りが戻って細かなシボが立ちます。その後、ギューッと狭まった生地を蒸気をかけながら丈出し・幅出しをして反物幅に仕上げます。


[御召との出会い]
わたくしがはじめて「御召」に出会ったのは、自分がきものを着はじめるずっと前。たしか20代前半でした。
仕事で知り合った先に、なべ家という江戸料理のお店の女将・福田敏子さんがいました。
福田さんは、わたくしの母とほぼ同年代。この年代の方にしては上背があり、ややふくよかな体型でしたが、いつもこざっぱりとした、かといって働き着に傾きすぎない感じのよいきものを着ていらっしゃいました。

あるとき、きものについておしゃべりをする機会を得たんですね。
その際に、福田さんがふだん着用されているきものは「御召」なのだと教えてもらったのです。

「御召っていいわよ。裾さばきがよくて動きやすいの。やわらかものもよいけれど、わたくしの働き着はあんまりフワフワしてないものがいい。かといって紬じゃくだけた風に見えなくもないでしょう。料理屋をしていますから、すぐにへたるようなものはダメだし……。
 その点、御召はきちんとした感じがして、お席でも失礼にならないし、内向きにもお出かけにも重宝するわね。適度にハリがあって、着付けもしやすいの。植田さんも一度着てごらんなさい」

御召っていうんだ! そのときはじめて聞いた言葉でした。私は福田さんのカッコイイきもの姿を見て「いつか着てみたいな」と、胸の内に御召の名前を深く刻み込んだのです。
それから、わたくしがきものを着はじめて数年も経った頃、物は試しとばかりに御召のきものを一枚つくってみました。そうしたら福田さんのいうとおり。見事にはまったんですね。


[やせて見えるきもの]
もとは平らな四角い布で、着付け方や素材によって、太くも細くも見えるのがきもの。
カッティングがほどこされた洋服は、それ以上のシルエットを追い求めることはできません。その点、きものは着ながら生地を折り畳むようにして体に巻き付け、ラインを生み出していきます。

きものの生地選びや着付け方次第で、細い方でもふくよかさんよりも丸太ん棒のようになることもありますし、ふくよかさんでもやせて見えることにわたくしは面白みをずっと感じてきました。
ですから、やせて見えるにはどうしたらよいのか、何を選べばよいのかについて、きものを着はじめた頃より探求してきたのです。本テーマは、いわばわたくしのライフワークなんですね。

江戸小紋をはじめとして、京友禅や絞りの染めもの、大島紬、結城紬、浴衣、木綿、ウール、銘仙、御召、ポリエステルなど、いろんなきものを自分を実験台にして着続けてきた結果、やせて見えるきもののひとつが御召でした。

わたくし的には、着付けが上手い人ならば、いちばん痩せて見えるのはやわらかものだろうと思っています。
といっても代表的な縮緬なら一越のようにシボが小さいもの。もしくは紋意匠、紋綸子のようにシボがないものですね。鬼シボ縮緬はかえって厚みがありますから、これはやせては見えません。どちらかといえば体の薄い方をソフトに見せるものです。

ただ、やわらかものは両刃の剣で、細くも見せますがシルエットを絞ってきっちり着付けると、身動きがとれません。かといって、やわらかく着たら時間とともに着くずれしやすいので、お手洗いに立つたびに修整が必要となります。
動かなくてはいけない場面で、やわらかものを自在に、そして程よくやせて見えるように着るのはなかなかむずかしい。織物以上にきもの寸法を見つめ直し、かつ着付け方を工夫することが必要のように思います。

大島紬は、折り紙をするようにしてきものを体にまとう感覚があります。織物の中では薄地で、スッキリしゃっきりと着られるのでおしゃれ着としては素敵ですが、やわらかものの体の添い方には今ひとつ及ばないでしょう。
ウールは毛織物。あたたかいけれど、着た後に空気を含んで次第にシルエットがゆるんできますね。
できたての結城紬は前にも書いたとおり、経緯ともに手紡ぎ糸ですから存在感が強い。最高級の紬です。けれど、着はじめて10年近くはガザゴソしますし、一般的に大島紬などよりもコンパクトには見えにくいように感じています。

わたくしの場合は『体に添う』ことが、やせて見える点からも、また茶道のきものとしても重要でした。
ですから、御召に袖を通す回数を重ねるにつれて「体に吸い付くような感じ」「時間が経っても着くずれしにくい」「タレもののようにしなやかなので、シルエットがきれい」「『普段着の上等』『よそいきのカジュアル』、『無地の上代御召なら縫い紋一つ紋付きとしても』というラインは、マルチかも」と実感し、驚かされたのでした。

そうしたところ、作家・青木玉さん(幸田露伴の孫、幸田文の娘)のエッセイの中にこんな一文を見つけたのです。

 母の気性は固めの着物を好む。好きで着るといえばお召、縮緬のやわらかい着心地のよさはよく解るけれど、ぎゅっと引きしまる強さが無い。紬はしっかりとした着物だけれど厚みがちっと邪魔になる、体が一トかさ突っ張っていかつい感じになる。お召は体に添うが、だらつかずすっきりと着られるということだ。
            青木玉著『幸田文の箪笥の引き出し』(新潮文庫刊)


そこには、こうも記されていました。

 縮緬の柔らかさは着物を着なれないものには扱い切れない難物だ。その点、お召はしっかりと体を包んでくれる安心がある。


まったくそのとおり、と共感したわたくし。やせて見える素材とは、ハリとタレ感の双方のバランスが大切なんですね。ハリに傾いたものは角張って見えますし、薄地でやわらかな染めものは体のラインをあらわにします。
着付けに難渋しているきもの初心者や、やせて見られたいという人は御召というきものを一度試してみる価値があると思っています。


[御召の弱点]
さて、最後に御召の弱点もご紹介します。どんな種類でも、組織の構造上、ある条件下に置かれたら変化が見られたりします。また結城の原稿のときもそうでしたが、ある人にとっては長所に映るところも、別のある人にとっては短所になるかもしれないことは、これまでに何度も書いてきました。
フラットに判断するためには、生地の特性を心得ておく必要がありますよね。

・水に弱い
縮緬や御召(本塩沢なども)の強撚糸を使う組織は、水分を得たらその部分が収縮します。
『昔の御召は縮んだけれど、今は縮まないよ』……っておっしゃる方もおられますが、それは何千回転もさせた本物の御召緯を使っていないか、薬品で加工をほどこして絹糸を変化させている可能性があります。

わたくしはある蒸し暑い日に単衣の御召を着用し、帰宅後脱いでみたら、汗をかいた背中や腕を折り曲げていた袖の内側が縮んでいました。その後、悉皆屋さんにきものを見せたところ「これは本物の御召ですね」との言葉に変に納得したものです。

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上代細縞の御召の端切れに水を落としてみました。水を落とした時点が上左の写真。しばらくすると、立派なシボが立ち、周りが波打ってきました(上右)。
乾燥しかけているところが下左の写真。水を吸った部分がこれぐらい縮みます。それだけ強い撚りがかかっているのだと解ります。

お手入れでは、小さな水シミならば、横に引っ張りながらアイロンをかけたら元に戻ります。背中の大きなシミなどは、やはり悉皆屋さんに手入れを頼んだほうがよいかもしれません。よく水ハネをさせる人は、濃色を選ぶと目立ちにくいはずです。


絹のきものもメンテナンスを怠れば、シミや汚れが落ちにくいですし、箔も欠落することがあります。麻のきものならシワに悩まされたりもします。
自然素材はメンテナンスが付物なんですね。けれど、短所をはね除ける魅力がそれぞれあることも、皆さんはよくご存じだと思います。本物から得られる満足度、幸せな気持ちってありますよね。
御召の場合、強撚糸だからこそ、着付けのしやすさ、生地の丈夫さ、シワになりにくい長所へつながっています。

・仕立てに注意
はじめての御召は単衣でつくることが多いのにも関係しているかもしれませんが、御召の仕立てに悩まされる方たちに何度か出会ってきました。
「御召で単衣をつくったのだけれど、仕立ての一部がツレていた。どうしてだろう?」「何度直してもすぐに表地と裏地の八掛の釣り合いが悪くて『袋』になってしまう」とおっしゃいます。
そのため、次第に御召の仕立てはむずかしいんじゃないか、と思うようになりました。
念のために、御召という織物の知識・経験とも豊富なところに仕立てを頼むのが安全なように思われます。


さて、今日は話が横道にそれて御召の話をしてしまいました。
前の原稿にも書きましたが、この2月20日・21日は『選りすぐりの御召展』という会場に常駐して、きもの選びのアドバイスをさせていただきます。

今回はびっくりするほど多種類の御召を並べますし、「御召 共の会」価格でお求めになりやすいものもご紹介する予定です。
「御召を実際見てみたい」「昔の御召は知っているけれど……」という方。お出かけや普段着に重宝し、もちろんお茶の場面でも最適な今の御召を一覧されるのに悪くない機会だと思います。

そして、御召といえば男性もの。茶席で男性が着るきものは、御召をおいて他にありません。その日は約30本以上もの男性用御召、袴地、男物の夏御召などを取り扱いますので、日頃お悩みの方は、本展をのぞいてみてくださいね。

はい。ようやく次回より今月の〈着付けと仕立て〉テーマ談義に参戦したいと思います。
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