date: 2009年11月04日

subject: 第一礼装の黒留袖・色留袖とは

from: 植田伊津子



今月のテーマは「礼装」。なかなか重いテーマですよね。
きものを着るという場合、一般的には「成人式」「結婚式」などの『人生の節目』であることがほとんどだと思います。

そもそも礼装って何なのでしょうか。
国語辞典には以下のような説明があります。「礼服を着用すること。また、儀式用の正式なよそおい」(『広辞苑』第4版 岩波書店刊)。儀式では、平服ではなく専用の衣装(式服)を身につけなさい、という意味になるでしょうか。

さて、この礼装のよそおいというものは、個人の感情や好みとは別の次元の話になると、私は考えています。
たとえば「こんなのダサイな」「老けてみえるわ」「きちんとしたものを持ってないから、コレで代用しておきましょ」と思うのは、個人的な理由。本来、ルールが求められる場所では、ルールにのっとったよそおいをするのが、「おとなのたしなみ」でした。

といっても、現代は儀式そのものが軽くなってきましたから、オカタイよそおいの対応ばかりではなくなっています。ただ、「ルールを知っていて、そのルールを解釈し直す」のと、「ルールをまったく知らない」のとでは、礼装の捉え方が変わってきますよね。

そこで今日は、第一礼装のきものの約束事をざっくりとお話ししてみたいと思います。というのも、礼装にもランクがあって、

1、第一礼装
2、準礼装(『略礼装』ともいう)

というふたつのステージがあるのです。

結婚式でも人前結婚式などが多い現代ですから、きものでも第一礼装より準礼装のよそおいのほうが増えています。いえ、もっといえば「きものを着ない」シーンのほうが多くなって、呉服業界はただいまたいへんな状況となっているそうです。
ともかく、もろもろの発端となる第一礼装についてから、話をはじめたいと思います。


[第一礼装]
結婚式といっても、自分が「主催者側」か「招かれる側」かによって着るものが違うのは、皆さんご存じのとおりです。たとえば「結婚式の親族として出席するような身内」=「主催者側」というのは、一番あらたまらなくてはいけませんから「第一礼装」のきものを着用します。

第一礼装のきものとは、簡単にいえば「黒いきもの」です。黒留袖ですね(第一礼装のきものとして着る色留袖は後述します。喪服については、日を改めて別項でお話ししたいと思います)。
意外に黒留袖の歴史は浅く、明治時代に既婚女性の式服とする習慣が広まったといわれています。

黒留袖に合わせる帯は昭和初期頃までは丸帯でしたが、今は袋帯が全盛で、礼装用としては西陣織の唐織や錦織、佐賀錦などがよく使われます。

また、黒留袖はもっともあらたまったきものですから、昔は下着を2枚重ねていました。こう書くだけで、重そうだし暑そうにも思われますが、それの名残で、留袖は比翼(ひよく)仕立てでつくられます。比翼仕立てとは、本襲のように下着を重ねて見える工夫をしたものを指します。


[第一礼装の紋付きの数]
黒留袖は、五つ紋付きで裾模様があります。背中にひとつと両袖の後ろ2つ、表側の胸に2つ、計5つの染め抜きのはっきりとした家紋(「定紋(じょうもん)」ともいいます)をつけ、上半身は無地ですが、腰下から裾にかけて、友禅や刺繍などでおめでたい柄を表します。

ところで、黒い色のきものであることが第一礼装の筆頭にあげられる最重要約束というわけではありません。
ポイントは「紋の数」です。紋がいくつあるかが礼装時の要点になるでしょう。

最上が「五つ紋付き」で、その次のランクは「三つ紋付き」、そして「一つ紋付き」という風に、カジュアルになるほど紋の数が減っていきます。ちなみに「四つ紋付き」とか「二つ紋付き」というものは存在しません。

「三つ紋付き」は、背中にひとつと両袖の後ろに2つにつけたもの。「一つ紋付き」は、背中にひとつだけ家紋をつけたものです。

じつは家紋の表現は、数の多い少ないだけでなく、表現方法が白っぽいか(明るく染め抜いているか=日向紋)、白っぽくないか(染め抜きでもカゲの多い表し方か=中陰紋や陰紋、もしくは縫い紋)によって、あらたまり度のランクが異なります。

黒留袖には、紋のあらたまり度でも最上のランクである「染め抜き日向紋」で五つ紋をつけるのが慣例となっています。


[色留袖は黒留袖と同格だけど……]
さて、黒地の黒留袖の地色を有色にしたものが「色留袖」です。黒留袖と違って地色に色彩がありますから、男性が黒い式服を着ている中にあっては、はなやかさをもたらしますので、祝賀感を演出するものといってよいでしょう。

たとえば昨日なども、叙勲のニュースがありましたね。
奥さまがご主人とともに宮中に行かれる場合、またそういう祝賀会に招待された場合なども、五つ紋付きの色留袖がふさわしいとされています。よくテレビなどで奥さまたちのきものを注意して見ていると、そういうよそおいをされています。

色留袖の五つ紋付は、黒留袖と基本的に同格です。ただ、慣例として5つまで紋をつけずに、色留袖には三つ紋(ただし、黒留袖と同様に比翼仕立てにする)をつける場合が多いようです。

ところが色留袖というのは、なかなか不思議なきもののひとつといってよいかもしれません。

「色留袖で、一つ紋付きの普通仕立てにすると、もっと気軽に着られますよ」と何気なくいわれる呉服屋さんがおられますが、もし手持ちのきもののなかに訪問着をお持ちでしたら、わたくしは色留袖の一つ紋付きというものは、さほど有効に使えないような気がします。

「留袖は儀式用の式服」ですから、複数紋(5つか3つか)で、比翼仕立てがセオリーです。主催者側(親族)の席に座る場合は、式服の約束が守られてほしいもの。
ところが、色留袖を先の呉服屋さんがいうように「一つ紋付き」の「普通仕立て」にしたら「訪問着」扱いとなって、準礼装のTPOで着ることになります。これは「お客さまとして招かれる側のきもの」となりますね。

準礼装の訪問着と留袖類(黒留袖・色留袖)は別のステージにあるものと考えて、儀式には複数紋の比翼仕立ての正式なものを着るほうが、理に適います。
ちなみに招かれる客が、五つ紋付の黒留袖を着て宴に出席するのは、当然のことながら遠慮します。


[未婚女性の第一礼装とは]
未婚女性の第一礼装となるきものは、「色留袖」の五つ紋付でしょう。

未婚でも年代順に例を挙げてみます。
兄弟の結婚式に出席しなくてはいけない立場のとき、30代前半の未婚女性ならば、かろうじて「振り袖」をお召しになるのが自然のように思います。といっても、その方の雰囲気もありますよね。痛々しい感じにならない振り袖姿かどうかは、ご自身で判断するほかないのですけれど……。

30代も後半になれば「振り袖」が着にくくなるでしょうから、格調の高い吉祥文様の「訪問着」(訪問着の三つ紋付が格としてふさわしいように思いますが、レアケースのきものになって、以後使い道に困りそうな気もしますので、一つ紋付きの訪問着でもよいかと思います)に、なるべくかっちりとしたハレ用の袋帯を取り合わせるのはいかがでしょうか。

40代以上の未婚女性なら、色留袖の三つ紋、もしくは正式な五つ紋付をお召しになるとよいと思います。色留袖の五つ紋付なら黒留袖の五つ紋付と同格になりますので遜色がありませんし、とてもよい着姿となります。
50〜60代以上ともなれば、甥や姪の結婚式に出席する主賓側という立場に変わってくるでしょうが、色留袖の複数紋付き、比翼仕立てというきものがもっとも落ち着くような気がします。


[黒留袖の思い出]
ところで、わたくしは5人兄弟の長女ですので、4人の弟や妹たちの結婚式に親族として出席しました。
これ以降は、これから20年ほど先に、今度は親や伯母の立場として、息子をはじめ、甥や姪10人以上おりますので、結婚式が複数回あるでしょう。ま、かれらが結婚するかどうかは、その頃になってみないとわかりませんけれどね。

弟妹4人(弟2人+妹2人がおります)の結婚式は、わたくしが30代だった10年ほどの間に経験しました。わたくしはすでに結婚していましたから、既婚女性の第一礼装といえば黒留袖となります。
私が結婚した20代のときは、夫の姉がすでに結婚していたので、結婚した当初は黒留袖をつくっていませんでした。

実母は、弟妹たちの結婚式における私のよそおいについて「この歳で黒留袖を着るというのは、どうだろうか。まだ若いし、色留袖をつくろうか」と、ずいぶん悩んだものでした。でも結局、母は「やっぱり黒留袖にしましょう」とひと揃いを準備してくれました。

なぜなら、弟嫁たちが黒留袖を用意していたからでした。
義妹たちはそれぞれ実家から黒留袖を持って、植田家に嫁入りしてきましたので、自分のときはともかく、それ以後の機会では当然それらを着ることになります。親族のバランスとして、義妹が黒留袖を着るのに、義姉に当たる私が色留袖で三つ紋のきものだと「少し軽い」と、両親は判断したのでした。

わたくし自身は、実母の判断について、その頃はまったくわかりませんでしたから、いわれたものを身につけて式に出席しました。

はじめて、白の長襦袢を着て、黒留袖を着、ハレ用の袋帯を大きめに結び、祝儀扇を胸に差して婚礼に出席したところ、これまで一度も味わったことのない「非日常的な気分」となり、弟や妹の人生の節目を親族として迎える現場に立ち会っているんだ、という厳かな心情となりました。「気持ちが入る」のです。
洋服だったり、きものでも訪問着だったとしたら、姉として、このような気持ちになったかどうかはわかりません。


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4番目の弟の結婚式にて。左から父(モーニング)、私(黒留袖)、姪、妹(振り袖)、母(黒留袖)を着ています。式服のきものは東京に実物がないため、写真しかないのです。私は母が若い頃に締めた扇模様の袋帯を締めています。それにしても、この頃の私はずいぶんと茶髪ですね(>_<)。


儀式の式服とは、粛然とした気持ちにさせる何かがあります。そして、黒留袖はまんざら悪いものではありませんでした。
どういえばよいのでしょうか。責任あるオトナという感じがするきものだったのです。

現在、兄弟が少なくなり、結婚をされない方も増え、また結婚式が略式化の一途をたどって、ますます留袖を着る機会が少なっていますが、「せっかくチャンスがあるなら、留袖を着てみましょうよ」と、わたくしはおすすめしたいですね。
人生で数回、あるかなしかの機会なんですもの。貸衣裳であったとしても、実体験されてみることをおすすめします。

たぶん、家の流儀やさまざまな地方のしきたりによって、式服の判断基準は多少違ってくるでしょう。しかし、第一礼装の黒留袖、色留袖のきまりは、上記に述べたようなことが基本となってくるかと思います。

あ、そうでした! 若い未婚女性(10〜20代)の場合の第一礼装は「振り袖」です。今回、振り袖についてはまったく触れませんでしたが、また機会が訪れましたらお話をしたいと思います。

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話題の『美智子さまのお着物』朝日新聞出版編刊を買いました。美智子さまの礼装の数々など見どころ満載です。右=昭和30年代のセレブのお嬢さんだった美智子さまの古典的な振り袖姿、いまなお素敵です。



さて、次回は略礼装のお話を。略礼装として扱う、色留袖や訪問着、付下げ、色無地などの紋付きについて考えたいと思います。ではまた。




date: 2009年11月08日

subject: 友人の結婚式での、今どきドレスコード

from: 樺澤貴子



植田さんの礼装講座、本当にいつもながら勉強になります。私自身はまだ黒留袖を着た事がありませんが、「非日常的な粛然とした気持ち」を、いつか味わってみたいものです。このブログでは次女役ですが、実際は3人兄弟の長女なので、妹と弟の結婚式にそのチャンスがあることを願って・・・・・・。

さて、現実的に私達の生活の中で礼装を意識するシーンの代表といえば、やはり結婚式ではないでしょうか。植田さんが結婚式の主催者側の装いについて書いてくださいましたので、今回は招かれる側の装いについてお話したいと思います。

本来、友人の結婚式に招かれた場合には、ルールからいうと未婚女性なら振袖か訪問着。既婚女性なら色留袖や五つ紋付きの色無地、訪問着というのがセオリーですよね(準礼装としての色留袖や訪問着、付下げについては次回に植田さんが解説してくださるので素通りします〜)。ですが、一言で結婚式といっても、昨今では洒脱なレストランウエディングから料亭での会食形式、格式を大切にしたホテルでの披露宴など、バリエーションに富んだ形態があります。そういった意味でも、招かれる方のきもの姿も多様化しています。

私も「多様化」の例に漏れず、ルールはわかっていながらも、フォーマルに括れない出で立ちで結婚式に列席しています。正統派の着こなしは長女にお任せして、「今どきの結婚式なら、こんなスタイルもありでは?」というエピソードをお届けします。

〔1.華やか小紋にお祝いの気持ちを込めて〕
最初のエピソードは、数年前にホテルでの披露宴に招かれた時のこと。きもので出席して欲しいという友人のリクエストに応えようとワードローブと向き合ったものの、色留袖や五つ紋付きの色無地など持っているはずもなく、訪問着はブルーグレーや黒地など濃地しか見当たりません。留袖の黒は儀式に相応しい格調の高さや、厳かな印象をもたらしますが、私の持っている訪問着の黒は、「粋」な表情が勝ち、「個性」が前に出てしまうというか、悪目立ちしてしまう感があります。
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宝尽くしの刺繍なので、柄行きは可愛らしいはずなのに・・・・・・誂えた後で黒地の訪問着はつくづく難しいと感じています。


また、結婚式では親族は黒留袖、男性もほとんどが黒尽くめ、洋装の方も黒のドレス姿の方が目立ちます。以前、マナーの先生に「お友達の結婚式で華やかな色を纏うことは、新婦の友人としての役割です」と伺った記憶が頭の片隅にあったこともあり、せっかくなら、きれいな幸福感に満ちた色で寿ぎの気持ちを表したいという思いに。

そこで、私が選んだのが「お呼ばれ小紋」「パーティ小紋」として活躍している蘭を描いた付下げ小紋。総柄ということもあって、全身からお祝いの心が溢れ出ているようなきものです。結婚式に小紋というと、かなりカジュアルダウンしているイメージに聞こえるかもしれませんが、この蘭の小紋の場合、描かれている柄行きが古典柄ではなく洋花であることからも、ドレス感覚=フォーマルな印象に映るようです。友人や新婦側のご親族の方からは華やかな色柄を喜んでいただけました。ご親戚の方は黒留袖か訪問着でしたが、新婦の友人は私のほかにも小紋や付下げなど軽めのきもので列席している方がいらっしゃいました。「格」は抜きにしても華やかなきもの姿で友人をお祝いしたいという気持ちが、周囲の目にも好意的に映っていたのでは?と、我が身の言い分も含め、勝手に解釈しています。
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コーディネートは格にこだわりすぎず、上品に見えることを心掛けました。左:同系色の龍村織物の織り名古屋帯を合わせて、甘めの雰囲気にまとめました。右:様々な書体で「寿」の文字をあしらった金地の袋帯で、お目出度い気持ちを演出。



〔2.きれい色に帯の格で端厳さを映して〕
場所によっては、蘭の小紋では浮いてしまう・・・という場合は、きものは色無地(または無地感覚の小紋)にして、格のある帯で礼を尽くします。3月の「おでかけきもののTPO」のテーマで、佐藤さんが淡いピンク色の無地の結城紬に唐織の帯を合わせてお友達の結婚式に出席されたエピソードがありましたが、それと同じような感覚です。友人という立場として出席するなら、帯を主役とした無地のコーディネートは「あり!」だと、私は思います。その際に大切なことは、きものの地色ではないでしょうか。佐藤さんの紬の色しかり、私もサーモンピンクや柳色など、「柔らかな色を纏う」とこで、お祝いの席を清々しく、優しく包み込んでくれるように思います。個人的な好みかもしれませんが、皆さんはいかがでしょう?
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左:一つ紋付きのサーモンピンクの無地暈しに、唐織の袋帯。
右:何かと登場している柳色の蛍絞りの小紋は、無地感覚のきものとして用いることが多々あります。存在感のあるアンティークの捻梅の綴れ帯を合わせて。



〔3.小物あわせも大切〕
礼装の際には、帯揚げは白の絞りか綸子、帯締めは白地に金銀模様か、金や銀一色のものというルールがあります。普段はビビッドな色を帯締めに効かせたコーディネートが好きな私ですが、結婚式などのお祝いの席では、白をベースにした小物合わせを心掛けています。ルールを念頭においていることもありますが、白という色には、特別な心地よい緊張感があります。
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礼装用の小物を持っていませんので、普段使いのなかでも、これらは、晴れの日にも便利に活躍しています。
左:白地に赤の飛び絞り、生成り地にピンクの絞り、白に近い淡いピンクの帯揚げが、お祝いの装いでの定番。
右:白、赤の冠組は、房の部分が紅白になるようにして誂えたもの。銀の佐賀錦、白×金糸×若松色のグラデーションの帯締めなども重宝しています。



〔4.今後欲しいフォーマルなアイテムは・・・〕
植田さんが『美智子さまのお着物』(朝日新聞出版社)をご紹介くださいましたが、フォーマルな装いを考えたときに皇室の方々の上品な着物姿は、参考になりますよね。とっても目の保養になりますが、でもやっぱり私には敷居が高いというか、私らしい装いとは少し違うように感じてしまいます。<礼装とは個人の感情や好みとは別の次元のもの>という定義からは、完全に思考が逸脱していますが(笑)。

そもそも、フォーマルのシーンが少ないがために、これまでは「フォーマルに見えるもの」で代用してきましたが、そろそろ年齢的にも自分らしい訪問着が欲しいと思うこの頃。とはいえ、何枚も訪問着を誂えるお財布の余力も、箪笥の余裕もありません。古典柄は大好きなのですが、王道の「ザ・古典」というデザインやコーディネートではなく、古典をベースにしながらも色合いや柄付けにモダンさがあり、帯によって軽やかにも着られる幅の広い訪問着に興味があります。

そこで私が参考にしているのは、歌舞伎役者の奥様方の装いです。ご贔屓のお客様の手前、華やかすぎず、かといって地味にならない。古典柄もこってりしすぎず、ほどよく控えめで上品な訪問着姿を雑誌の誌面や劇場でよく見かけます。透明感のある地色に、あっさりとした古典柄を描いた訪問着に、近い将来に出会えることを夢見ています。
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松本幸四郎夫人である藤間紀子さんの『私のきもの生活』(文化出版局)には、憧れのきものが沢山載っています。『京都で、きもの vol.5』(淡交社)のお誂え特集にて取材した、中村芝雀夫人の大冨玉緒さんは、可愛らしい古典柄を基調としながらもひと色抑えた引き算の表現が絶妙でした。


「礼装」というテーマからすると、かなりハードルの低い内容になってしまいましたが・・・・・・佐藤さんのリアルなフォーマルStyleはいかがですか?

date: 2009年11月13日

subject: 礼装遍歴 〜きもの好き以前

from: 佐藤文絵



植田さん、礼装講座をありがとうございました。本当に勉強になります。ご家族で撮影されたスナップも素敵でした。晴れやかに、厳かに黒留袖や振袖を纏った親族が並ぶ結婚式の光景には、日本の正しい礼装の姿を思い、いいものだなあと眺めています。

今月はただただお話をきいていたい気分なのですが、植田さんも、礼装に関して私はかなり保守的だと自覚している、どうぞ和らげて、とおっしゃっていました。正統派の第一礼装には憧れもあるけれど、私はもっぱら略礼装のみでいくつもの結婚式に出席してきました。

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記憶が正しければ振袖を着たのは成人式の一日だけ。第一礼装を纏った唯一の日です。従姉妹の振袖を着せてもらいました。桶絞り・鹿の子絞りと友禅、刺繍が施された古典的な振袖で、今思えばなかなか素敵なきものです。でも当時は特にきものに興味がなく「この色はあまり好きじゃない」なんて思っていました。ナマイキ(笑)。それにしても二十歳の写真なのに、私は今とあまり変わっていないような...。


娘のためにきものを用意するという意識が希薄のわが家には、私専用のきものは一枚もなかったのですが、大学生活が終わりに近づくころお茶のお稽古に通い始めたのをきっかけに、付け下げ訪問着を作ってくれました。分からないなりに百貨店でたくさん見せてもらって誂えた一枚はとても気に入って、これまで何度も袖を通してきました。今でも活躍しています。

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柄が絵羽付けになっている付け下げ訪問着は、一見訪問着と変わりません。共八掛がないことが唯一の違い。一般的な訪問着より少々柄付けが控えめかもしれません。


このきものには縫いの一つ紋を入れています。きもの好きになるまでは、いとこの結婚式、友人の結婚式、大学の卒業式(袴をはいて)、初釜など、この一枚で乗り切ってきました。教科書的には略礼装だけど、自分にとってはこのきものが第一礼装だったのです。

結婚式でいえば、黒留袖の方がずらっと並ぶような厳粛な式に出席したことはありません。でもこの略礼装を「軽すぎた」と感じることは一度もありませんでした。むしろ黒のワンピースにひらひらシフォンのショールなどを身につけるスタイルが多いなかで、きもの姿はまずご両親に喜ばれるし、きちんと礼をつくしていると思ってもらえるように感じています。

ところでお2人ともに書かれていたとおり、結婚式のスタイルは本当に多様化してますよね。神社で式ののちホテルで披露宴、ホテルのチャペルで式と披露宴、ゲストハウスで人前結婚式、牧師さんに来てもらってレストランで式&パーティ、会費制のガーデンウェディング・・・などなど。結婚式のスタイルによって、また結婚式とはどんな方々が集まるのか分からないために、軽すぎるかな、重すぎるかな、大丈夫かな、と常に頭を悩ませるものです。セオリーどおりの装いは却って大仰しく、浮いてしまうこともありますしね。

かくいう私も、自分の結婚式ではゲストを悩ませていたかもしれません。親族だけでなく友人たちも神社での結婚式に招待しました。式のあとはレストランで立食パーティ。最後に料亭で親族だけの食事。格式があるような、ないような。――困りますよね(笑)。
友人たちはなかなか変わり者が多いので、きっといろんな格好で来てくれるだろうと想像していました。実際のところじつに幅のある装いで、楽しかったです。洋服姿の方は礼服ありスーツありジャケットあり。きもののほうは両母親は黒留袖、実姉はなんとも分類しがたい個性派なきもの、義妹は結城紬の訪問着。友人たちは訪問着、小紋、無地紬の方も。

思い返すと、「きものというと結婚式くらい」という方は無難に訪問着系、普段からきものが好きでよく着ている方は上手にカジュアルダウンして参列してくれていたと思います。小紋や色無地、無地紬などを儀式の場にふさわしく、お祝いの場らしく装うには、ある程度の力量が必要。慣れぬ着姿ではうるさがたの視線が刺さりそうですが、慣れた着姿なら、わかっていてこの装いなのね、今様の着こなしね、とそんな視線をはねのけます。いや本当にカジュアルダウンは経験とセンスが問われるものだと思います。その点先日樺澤さんが紹介してくださった着こなしはさすが!

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神社での結婚式のあとに参列してくださった全員で撮った写真です。こんな小さな写真ではわからないかな。色とりどり、個性的です。それぞれ自分らしく装ってくれていたと思います。装いに無頓着な方もあったと思いますが。
びしーっと黒で揃えたなかに真っ白の花嫁さん、という光景は文句なく美しい。けれど、わたしにはこんなふうな和やかな雰囲気がとてもいとおしかったです。


さて結婚というと、昔は(いや今も家により地域により)家具やきものを一式揃えてお嫁入りするものだったとききますが、以前畳紙(文庫紙)などを扱うお店でこんな紙をもらいました。「お嫁入り和箪笥の詰め方」マニュアルです。
こんなふうに揃えたのか、こんなふうに揃えるのが理想の形だったのかと、とても新鮮でした。一番上の棚の寿アルバム、免状箱、というあたりもなかなか楽しいのですけど、箪笥のほぼ半分が「礼装ゾーン」なのですよね。私の箪笥には小物入れはなく8段なので、この和箪笥と正味同じ。でも礼装といえるきものが収まっている引き出しは1.5段くらいです。

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ここに書かれている礼装のうち、私の箪笥に入っているのは、付け下げと一ツ紋無地着物(袷と単衣)の3枚だけ。将来的に黒留袖が入る日がくるのかしら。う〜ん。どうでしょうね。私はおそらく親になり子の結婚式を迎えるまで「黒留袖」を考えるきっかけは訪れないと思います。私は三人兄姉の末っ子。加えて両親も三男&末っ子だから、いとこたちのなかでも一番下です。いわば末っ子of末っ子なんですね。ゆえに留袖とは縁遠い。もしかしたら一回きりかもしれないきものを何十万円かけて用意するというのは、あまり現実的ではない気がします。植田さんはおそらくお父様もご長男かと思いますのでいわば長女of長女。なんて対照的な(笑)。植田さんの留袖は何度も着てもらえて素晴らしいな。


今日は“きもの好き”になるまでの私の礼装についてお話しました。次は最近の礼装についてお話ししようと思っています。
ではでは、植田さんの略礼装講座をまた楽しみにしております。

date: 2009年11月17日

subject: 準礼装のきもの【その1】

from: 植田伊津子



おふたかたの原稿を拝読すると、わたくしの礼装に対する考え方がアナクロなのがわかり、自分自身でも苦笑しています。
たぶん、そのうち絶滅危惧種のひとりとして認定されるかもしれません。

いえいえ、けっして自分を自虐的に見ているわけはありません。
形式や型を必要と考える人もいれば、それらにさほどこだわらない人もおられます。

みんなが同じ「きもの観」なんて、気持ち悪いじゃないですか。
きものだけに限らず、だれしもが自分の価値観を大切にして生きています。それを互いに尊重するところに「人間のふれあい」がありますし、相手の価値観に啓発されるところがおもしろいのです。

あくまでルールは目安のひとつに過ぎません。
儀礼と虚礼の違いは、形式的な約束を必要なものとして生かせるかどうかの違いであり、形式や型をバネにできるほどの中身の充実があれば、それらは必要ないのだと気づかされます。
極端なことを言ってしまえば、「式」に真摯にのぞむ心があれば、何を着ても構わないかもしれません。

ただ、どんなに当人が敬意を払う気持ちを持っていたとしても、「なんでこんなよそおいで……」と周りに判断されたら、わたくしなら悲しいんじゃないかな、と思いますね。
「相手側(主催者)や周りがどう受け止めるか」も、人と相対する場では大切な要点ではないでしょうか。

さて、前回お約束したとおり、今回は略礼装のお話をしたいと思います。わたくしの場合、これもまた保守的な方向に針がふれるような気がしますが、その点はどうかご容赦くださいませ。


[準礼装のきもの、訪問着]
準礼装、略礼装ともいいますが、2つの言葉に大した違いはないでしょう。いずれも正式の礼装に対して、簡略にした礼装を指します。
具体的にいえば、留袖や振り袖などの第一礼装に次ぐポジションのきもので、厳密にいうと紋がつけられる格調の高いもの。

いちばんに思い浮かぶのが訪問着ですね。

留袖(色留袖)は、裾のほうだけに柄がつけられますが、訪問着は胸から肩、袖にかけて模様がつながって表現されます。
ちなみに留袖、訪問着、そして後述する付下げ訪問着など、柄が縫い目をまたがってつけられているものを「絵羽物」といいます。

訪問着といえば「イコール準礼装」。紋はあってもなくてもどっちでもよいことになっています。
結婚披露宴(招待される側)、授賞式、少しあらたまったパーティーなどに招かれた場合などには、やや重めの柄のそれに紋をつけておけば、まず間違いありません。

訪問着に紋を入れるときは、複数紋をつけるというよりも、染め抜きの一つ紋というのが一般的でしょう(後ヅケで、日向紋を縫い紋で入れることもできますし、きものと同色の糸で縫いの三つ紋を入れることもあります。また(中)蔭紋の一つ紋や三つ紋もアリ。ただし留袖のような染め抜き日向の五つ紋はつけません)。

では紋を入れない訪問着は、どういう位置づけになるのでしょうか。

礼装のきものをオカタク解釈すれば「紋付き」のきものがセオリーなので、紋を入れない訪問着は、ステージ的には「社交着」かなと思います。
「洒落着感覚の紋を入れていない訪問着は礼装のきものですか?」と問われたら……わたくしにしたら微妙な問題で、捉え方はさまざまなように感じます。礼装と洒落着を区別するラインは常に揺れていますものね。

オカタイ場所での結婚式に招待されたときなどは、紋をつけた格の高い訪問着のほうが正式でしょう。後述しますが、紋のない訪問着は、三つ紋の色無地より格下となりますから。

とはいうものの、紋をつけない訪問着(社交着)も便利な一品なんですよ。
古典的であっても少し軽い柄の訪問着には紋を入れないほうが使い勝手がよく、カジュアルダウンの機会が多い現代には、ご大層でない感じが使用頻度も高いと思われます。

ここまで読んできた皆さん、「紋ってややこしい!」と思われるかもしれないですね。

けれど、礼装のきものの紋とは、きものを格上にもするし、格下にもする「調整弁」のようなすばらしい役割もあるんです。
軽めの訪問着に複数の縫いの三つ紋をつけてきもののステージを上げながら複雑なよそおいを楽しんでもよいでしょうし、紋無しでつくったほうが着る用途が多いといわれる方もいるでしょう。

要は、紋の微調整をすれば、礼装をより自分に近づけて着ることができるというわけです。着られる方の立場や場所などによって、訪問着の紋を見直してみてください。


[付下げってなに?]
付下げとは、ひと言でいうならば「訪問着によく似たきもの」です。
景気の悪い昨年後半からは、付下げに人気が集まっているようですね。見た目が絵羽なのに、お値段が若干安く、手に入れやすいからかもしれません。

上前の合い口が続いている「付下げ訪問着」という種類もあって、これなどは、ぱっと見、訪問着と遜色ありません。
このように訪問着に準じる格調の高い付下げは、準礼装として扱います。

ところで訪問着をつくるときは、生地を裁って、きもののかたちにしてから下絵を描き、いったんほどいて染めをほどこし、再びきもののかたちにして店頭で売っています(それを仮絵羽といいます)。
付下げは訪問着に似ていますが、反物(巻物)で市販されています。

なぜならば、付下げは仕立て上がりを計算して、模様を一方向にそろえて柄をつけているのです。

たとえば「枝と花」のように柄の上下がはっきりとわかる模様は、肩山を境にして、きものの前後で逆さまになるのが常。でも前から見ても後から見ても、花が上、枝が下にくるように、あらかじめ考えて柄付けをするのです。

また、付下げは机上の予測の範囲で模様を表しますから、身頃や肩から袖にかけて、縫い目をまたがる柄付けにしません。そこが訪問着と付下げの大きな違いだといわれています。

付下げの中には、訪問着風に裾と胸・袖に模様を集中させるのではなく、柄を全体に散らしたタイプもありますね。
それを「付下げ小紋」と呼んだりします。上下のある柄を逆さにならないように配した「総柄系飛び柄」のきものですね。

付下げは、反物の柄の軽重によって、紋をつけたりつけなかったりしますが、一般的には訪問着よりも軽い柄付けが持ち味とされていますから、紋はつけずに社交着としてつくるほうが多いでしょう。それらは、かしこまらないおよばれの席やパーティーに活躍するものです。


さて、ここまで書いてきましたが、すでに長文になっちゃいました(>_<)。

樺澤さん、佐藤さん、申し訳ありませんが、色無地の紋付きの話を続けてしたいのですが、明日か明後日に原稿をアップしますので、続けて植田が書かせてもらってよいでしょうか。

喪服や半喪服のきものについてもまだ触れていませんし、礼装の帯についても……まだですよね。
果たして、どこまでお話しできるのでしょう。いやはやなんとも、申し訳ありません。

date: 2009年11月19日

subject: 準礼装のきもの【その2】

from: 植田伊津子



[礼装の色無地のきもの]
色無地のきものはご存じのとおり、紋意匠やちりめん、紋綸子などの生地を、黒以外の好みの色で柄をつけずに染めたもの。茶道をたしなんでいる人には、もっとも身近なきものといってもよいでしょう。

色無地は紋をつけることで礼装のきものの仲間に入ります。
ということは、紋のない色無地はどういう扱いになるのでしょう? 紋がなければ「普段着」のステージに分類されます。

現代、普段着のシーンで色無地を着る場合、よほど凝った地紋だったり、変わった色、もしくは見どころのある洒落帯などを合わせないと、礼装(紋付き)っぽく見られるんじゃないかと思います。洒落着として色無地を楽しむには、存外おしゃれの力量が必要なんですね。

私の場合も、たとえばふつうのお出かけなら、まず洒落着の小紋や江戸小紋、織りものなどに手が伸び、紋のない色無地を着るケースはほとんどありませんでした。
実体験からいえば、色無地のきものの場合は、紋をつけて着用するほうが利用頻度が多いのではないかと思われます。

[色無地の礼装度]
礼装の色無地のレベルを私なりに考察してみますね。

1、縫い紋で一つ紋
もっとも軽い礼装。
2、染め抜きの陰紋や中陰紋で一つ紋
軽めの礼装。
3、染め抜きの日向紋で一つ紋
軽めの礼装の一つ紋の中では格上の扱い。

4、縫い紋で三つ紋
中レベルの礼装だが、色無地に縫い紋で三つ紋を入れるケースは少ない。訪問着で地色共糸の縫いの三つ紋を入れるほうがあり得るケース。
5、染め抜きの陰紋や中陰紋で三つ紋
中レベルの礼装。訪問着の紋無し、または一つ紋付きより格上になる。格式のある式に使用できる。
6、染め抜きの日向紋で三つ紋
中レベルの礼装の中で格上の扱い。訪問着の一つ紋付より上となる。格式のある式に使用。

7、縫い紋で五つ紋
江戸時代のきものには散見されるが、現代は一般的に五つ紋を縫い紋では入れない。
8、染め抜きの陰紋や中陰紋で五つ紋
レアケースで、あまりつくられることはないが、ないことはない。色無地のきものとして重いものとなる。第一礼装として、式の主催者側に立つきものともなる。
9、染め抜きの日向紋で五つ紋
陰紋や中蔭紋の五つ紋よりあり得るケースだが、それでもつくられる数は少ない。訪問着の三つ紋より格上となる。色無地のきものとしてもっとも重いもの。第一礼装の扱い。


[紋の数、紋の表現]
ルールとして、礼装の扱いでは、訪問着や付下げといったきものの種類如何を問わず、紋の数を優先すると考えます。訪問着の紋無しや一つ紋付きより、色無地の三つ紋のほうを格上の扱いとするのはそのためです。

また五つ紋をつけると、基本的には第一礼装として扱うことになります。第一礼装は、黒留袖や色留袖、振り袖であると前々回に説明しましたけれど、色無地の五つ紋もそれに加わることになりますね。

ちなみに第一礼装は「日向紋を入れる」のがもっともポピュラーなケースですが、各家によっては、もともと中蔭紋や陰紋の家紋を定紋としているケースがあります。
その場合、中蔭紋や陰紋の表現がその家の正式な紋なのですから、わざわざ日向紋に変えてつけることはなく、その家にとっての正式な紋を五つ紋で入れるのが至当。

また関西地方では女性は控えめな紋で表現する風土がありますから(女紋という慣習もあります)、ご主人が羽織袴の第一礼装で日向紋の五つ紋をつけ、奥さまはそれの中蔭や陰紋の五つ紋を留袖につけるということもあります。
中蔭紋や陰紋で五つ紋というケースは「ないことはない」のです。

ただ、今は第一礼装のきものを着るケースに遭遇したとき、ふつうならば黒留袖や色留袖のほうを選ぶのではないかなと思います。
今は日向五つ紋で色無地の人といえば、日本舞踊の舞台上の方ぐらいしか、わたくしは見かけません。ですから、色無地の五つ紋は、とりあえずレアケースのきものであるといってよいでしょう。
(もし、色無地で日向紋の五つ紋をつくられるなら、個人的には第一礼装っぽく「比翼仕立て」にしてもよいように思います)

[式に色無地を着る]
ここで整理をしますと、たとえば結婚式に招かれる場合に色無地を着るときは、1〜6のどれかの色無地、そしてそれに見合う帯を締めるのが妥当ではないでしょうか。
式の内容に合わせて、縫い紋の一つ紋付きから染め抜き日向紋の三つ紋……どれもがあり得ると思います。

慶事に色無地を着る場合、ひと色ではなやかさも表現したいところ。ですから、色や地紋をはじめ、当然合わせる帯も大切な要素となります。

色無地の場合、あらかじめ染め上がったものから仕立てる場合と、白生地から好きな色に染める場合があります。染め抜きの紋を入れる場合は、誂え染めでつくったほうがきれいに仕上がりますね。

とくに色無地の場合は、きものに占める色の面積が多いわけですから、あまり地味な濃色よりも、ほのぼのとした明るい色が慶事にふさわしいといえます。
50代以上の方でも、結婚式などでは、渋さよりも穏やかで品のよいの色のほうが、場に合うでしょう。

地紋は、若松を口に加えた鶴を表した松喰い鶴紋や菊唐草、双葉葵や七宝繋ぎの小葵紋の他、正倉院文様にちなんだ鳳凰紋や唐花、また伝統的な道長取のようなものが、おめでたい柄としてよさそうです。
もちろん柄のないちりめん無地でもよいですが、その場合は発色のよい上等なものを選んでください。薄くて廉価なちりめんなどは、動いたときに跳ねて落ち着きませんので、注意が必要です。

若い頃は慶事の色無地だけを考えておけばよいのですが、わたくしのように40歳もすぎた頃になると、たとえば法事や追善茶会などに着る半喪のきものが必要となってきます。
慶弔両用の色無地を考えるならば、弔事にも使える柄、たとえば雲、波、紗綾形、檜垣文のような地紋の選択肢もあります。

さて、色無地のきものは帯に注目が行くよそおいですから、存在感のある帯を取り合わせたいですね。
やはり袋帯で、なおかつ織り文様が立派なもの。錦や唐織、箔使いの、私たちのふだんの感覚からしたら「多少ギョッとするぐらい」豪華で重厚なほうが、慶事の色無地にはバランスよく映るような気がします。

訪問着や付下げを着るならば、あっさりめの袋帯にして、総合的にバランスをとってもよいのですが、色無地の準礼装は、きものがあっさりしていますから、帯に力がないと辛くなってしまいます。帯のチョイスがポイントだともいえるでしょう。

[色無地の裏技、洒落紋もまた楽し]
準礼装の色無地を考えるならば紋付きであると先述しましたが、今様の式は自由な捉え方になっています。

わたくし的には、樺澤さんの蘭の付下げ小紋などは場を盛り上げる気持ちが主催者に伝わりますから「とてもよいなー」と感じますし、社交着の小紋などの中には結婚式にふさわしいものもたくさんあって、紋の有無や数など、本当のところ大した問題にはなりません。
友人のひとりとして列席するならば、「祝祭感のあるきもの」を着てうかがえば、どんなご家族も喜んでくださいますよね。

そうした風景を考えれば、色無地に刺繍の加賀紋を入れたものなどは式に活用していいんじゃないかなと感じています。
加賀紋でも、あまり遊び的な文様でなく、はんなりとした花丸や松、扇文などなら、色無地のよいアクセントになるような気がします。

加賀紋を色無地に入れたら、ステージ的には洒落着になるような気がしますが、第三者的な礼装(友人や知り合いのひとりとして出席する)には、よい着姿のように感じますし、わたくしもそういう色無地をつくってみようかな、とひそかに思っています。


一昨日に続けて今日も植田が担当し、これもまた長文になってしまいました。
礼装のよそおいについては、もっともわたくしが日頃尋ねられる事案で、いろいろなケースも拝見しているために、話が広がってしまいます。

「礼装の羽織物はどうしたらいいの?」
「礼装の履物はどうしたらいい?」
「色無地を慶事に着るときは、伊達襟を入れるのが決まり?」
……などなど、迷われる気持ちはよくわかります。

さまざまな立場のいろんな礼装のレベルをうかがうと、その幅は広いと感じられますね。
このブログをお読みの皆さんの礼装観も、気軽に教えていただければ幸いです。

ところで、お茶席の色無地については、来年1月の「習い事のドレスコード」のときにふたたびお話をしたいと思いますので、今日の原稿では割愛しました。ご了承くださいませ。

(カメラが壊れて、前回、今回と文章ばかりになっております。皆さん、ごめんなさい!)



date: 2009年11月24日

subject: きちんと感の決め手は髪型!?

from: 樺澤貴子



植田さんの礼装講座、とてもわかりやすかったです。カジュアルなきもののルールは、ある程度「それも、個性よね!」と済ませられることでも、礼装となると急に不安になる気持ち、とってもよくわかります。私も堂々と「お祝いの気持ちを込めて、蘭の小紋を」と書いたものの、実際はその場にいくまでドキドキでした。

今日はまずご報告を。我らが三女、佐藤さんが、現在発売の『きものサロン』にて登場しております!「本気モードで撮影してもらいました」と、語っていたお写真がとっても素敵です。<品よく可愛い 「ちょいと着」のお洒落技>という特集は、まさに佐藤さんにピッタリのテーマだと思いました。

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佐藤さんの記事は43ページ、ナチュラルな笑顔がとてもキュートです。本屋でちょいと立ち読み・・・ではなく、ぜひ自宅でじっくりとご覧下さい(笑)


紹介されているきもの姿は、パールグレーの蝶の縫い取り御召しに朱華色の菊の染め帯を合わせた、右のプロフィール写真と同じコーディネート。なのに、どこかいつもと印象が違います。そうです、髪型です!前面から側面にかけてはシンプルにまとめられていますが、後頭部にふわりと華やかなボリュームがあるだけで、上品なお出かけヘアに!

今回の礼装のテーマにおいても、きちんと感を演出するのに、髪型は重要なファクター。洋服のときよりも顕著に髪型の効果が表れると思いませんか?以前取材で、きものの熟練者の方とお話していた際に、「きものの時には、顔よりも髪よ」と言われたときには、目から鱗でした。ちなみに、その方は美容院までスッピンで出かけ、髪を作りながらメイクをするそうです。きものと髪型のボリュームを見て、顔の濃度のバランスを計算するそうです(笑)。私はプロフィール写真ではボブ風にまとめていますが、結婚式やお茶会、パーティなどへ行くときには美容院できっちりと髪を結ってもらいます。トゥーマッチになりすぎない高さやバランスは難しいのですが、数々の失敗を重ねて最近は美容師さんに的確にお伝えすることができるようになりました。私の場合、以下のことを気を付けています。

1)斜めに分けて片側はおろす
写真の佐藤さんのような感じです。以前は前髪も上げて、少し高さを出していました。きちんと感は出るのですが、後から写真を見ると老けて見えるため、少しでも悪あがきをするために前髪は片側をおろす傾向に。

2)サイドはスッキリと
以前はサイドもふっくらと張らせていました。きものの好みが古典6割×モダン4割というバランスに変わってきたことから、サイドはスッキリとするほうがスタイルに合っているように感じて軌道修正しました。

3)後頭部に高さを
これが一番大切なような気がします。鼻の先から耳の上を結んだ延長線上にボリュームを出すと、頭の形が美しく整って見えます。

こうした理論はわかっているので、なんとか自分でできないものかと、以前、植田さんに出張講師に来て頂きました。植田さんのヘアは、いつもビシッと決まっています!梳き毛を入れたり、逆毛を立てたり、何度もトライしているのですが・・・修練が足りず、未だに納得のいく仕上がりには近づけません。また、普段は髪飾りをほとんどつけませんが、よそゆきの時には極シンプルなものを効果的に使う事があります。

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左:てっさい堂の櫛・笄。麻の葉を掘り込んだ銀の縁取りの繊細さに惹かれて求めました。右:パーティには、少し粒の大きめなパールの簪を。



さて、今日はもう一つ<洗える訪問着>の話題を。
皆さんは訪問着で出かけなければいけない日に、雨に降られて困ったことはありませんか?私的な集まりなら、多少のドレスダウンはできますが、結婚式や初釜、相手の立場を尊重して自分もそれに順じなければならないパーティでは、ドレスコードは崩しにくいものです。その時に感じたのが「訪問着こそ、洗えるきもの必要なのかも!」ということ。

また以前、取材をした奥様でご主人の仕事の関係上、外交パーティなどに出席されることが多い方が、「パーティ会場では、すれ違う方の飲み物や食べ物がうっかり触れてしまうことも。正絹の訪問着を着ていると、ハラハラするわ。立食だとわかっているときには、洗える訪問着が重宝しているの」と仰っていました。これも「訪問着こそ、洗えるきものを」というエピソードのひとつ。

そこで、きもの英へ伺って、訪問着を見せていただきました。

【どこにお呼ばれしても安心な、はんなり古典柄】
英では、実に豊富な訪問着が揃います。全て手描きで仕上げた1点ものです。パーティや会食が多い方などは、着席すると裾模様がほとんど見えなくなります。そこで、胸元を華やかに演出するために、刺繍を加える方が多いそうです。

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重量感と美しい光沢を放つ緞子調の生地は、英のオリジナル。薄朱華色に、水辺に遊ぶ鴛と雅やかな楽器、松竹梅を配した上品な一枚。ところどころ金彩をほどこしたり、共八掛けの返りにも染め柄を施すなど、ディテールまでしっかりと手が掛けられています。訪問着のお値段は、仕立て代込みで25万円前後。


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左:帯は川島織物による英のオリジナル。同系色で優しくまとめたり、黒地で引き締めたり・・・袋帯のバリエーションも豊富でした。右:安価な洗えるの中には帯などは縫い袋なども見受けられますが、こちらは本袋で織られています。本袋のお値段は20万円前後。



【季節限定のものこそ、洗える訪問着を】
10月のテーマでもお話しましたが、季節の限られた植物文様はなんともいえない贅沢な気分を味わえます。ただし、わずか1〜2ヶ月の時期のために訪問着を誂えることは、とても勇気のいることです。英のお客様の中には、着る期間が限定された柄行きの訪問着こそ、わざわざ洗えるもので誂えるそうです。

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左:透明感のある柳色の地に、藤の花を描いた淑やかな訪問着は、4月〜5月上旬に纏う特別な一枚。右:柔らかなピンク色に、スモーキーな色合いで紅葉を描いた訪問着は10・11月限定。



雨の日にも、立食パーティの時にも、野点の時にも・・・安心して着られる訪問着。そんな選択肢について、改めて考えさせられました。

続いての佐藤さんは、ご自身の最近の礼装スタイルでしたよね。どんな今様コーディネートが見られるか楽しみにしていますね。


date: 2009年11月29日

subject: 礼装遍歴 〜きもの好き以降

from: 佐藤文絵



樺澤さんのおっしゃるとおり、礼装において髪型は本当に重要ですね。とはいえ私は結髪をしてもらったことが数回しかなく、髪型のオーダーはなかなか難しいと感じています。だってつい仕上がりが「よっ女将!」になってしまうのです。“前髪を上げて高さを出す”のは自分ではなかなかできない髪型。これぞ職人技!と結ってもらったときは嬉しいけれど、あとから写真をみると「う〜ん、やりすぎ!?」と思うわけです(涙)。だから樺澤さんがそれを避けているとのことに至極納得。
先日紹介してくださった『きものサロン』で結っていただいた髪は完全にお任せだったのですが、さすがにいいバランスをご存知なのでしょうね。華やかさがあり、それでいてトゥーマッチではなく。個人的にもう一度してみたい髪型です。


さて今日は先日のつづきを。きもの好きになるまでは、ホテルでの結婚式でもレストランウエディングでも、きもので出席するならこの一枚、と乗り切ってきたことをお話しました。そしてきもの好きになってからは、場に応じてすこしずつカジュアルダウンしていくようになりました。

なぜそうなっていったかといえば、まずはひとえに「結婚式のカジュアル化」ということなんだろうなと思います。教科書に書いてある“結婚式のセオリー”通りに装うことがむしろ求められていない場もあると思うのです。たとえば両母親のまとう黒留袖は、礼装における“最後の砦”と思われるのですが、今ではそれも省略されることがありますよね。
それから、百貨店的で優等生のきものを無難に着るより、自分らしく装いたいというおしゃれ心、言いかえればちょっとした野心(笑)もあるような気がします。

比較的軽めの場面では、無地の紬に袋帯を締めて出席。金箔を織り込んだ綴れの袋帯や唐織を合わせています。一つ紋の色無地にも唐織や刺繍の帯などを合わせて。
ともすると地味になってしまう無地のきものは、樺澤さんがおっしゃっていたとおり「色」が大切。清々しいきれいな色が、晴れやかな雰囲気にしてくれるように思います。またこってりした訪問着などの装いのなかにあるすっきりとしたきもの姿は、むしろ引き立つような気もします(ただ全員がこんな装いだと場がさびしくなりますよね。ということはつまりズルイ考え方なのですが...)。逆にきもの姿の少ない場では、洋服姿のなかでも、すんなり馴染みやすいと思います。

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上段2枚は無地紬、下段2枚は色無地。きものはどれも淡いきれい色。こうして写真に並べて初めて気づきました。帯がどれも草花なのです。ちょっと寂しい気がしてきました。


わたしの礼装はまだまだ発展途上。結婚式の装いを振り返って、またおふたりのお話をおききして、おめでたいメッセージ性を装い加えたい、という気持ちが今むくむくと湧き上がってきました。きものは無地でも、帯は末広がりの扇とか、松竹梅とか、格調のある吉祥文様を身につけてお祝いの気持ちを表したい!
少し反省。これからの課題になりそうです。ああ、また課題が増えてしまいました(笑)。

植田さんは軽めの場面ではどんな装いをされるのでしょう。礼装保守派・植田さんのカジュアルダウンのお話、よかったらおきかせくださいませ。


追伸:紅葉便りをすこし。この週末は両親と一緒に修学院離宮や真如堂など、みて歩きました。どこもかしこも秋真っ盛り。とてもきれいです。

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date: 2009年12月05日

subject: カジュアルダウンの礼装の一例

from: 植田伊津子



12月になっちゃいましたが、今回は佐藤さんから話題を振られた「礼装のカジュアルダウン」について、わたくしなりに考えてみたいと思います。

むむむ……。すごくむずかしいなあ。はあー。

というのも、わたくしや友人たちが結婚した頃というのは、まだかろうじて形式を重んじる時代で、仲人さんもいましたし、親族は黒留、未婚の妹たちは振り袖というのが定番でした。ホテルや結婚式場での式が多かったんです。
今流行りのレストランウエディングや人前結婚式というかたちが、ほとんどなかったと記憶します。ウエディングのかたちは、この10数年の間に多彩になりましたね。

そして今、40歳を越えたら、およばれの席がぐっと減っちゃいました。そのため私は、カジュアルダウンをほとんど実体験することなく、今に至っているような気がします。はい。

ですが、このところ仕事を通して、佐藤さんのように「カジュアルダウンの礼装」について聞かれる機会があるんです。ひと昔前は、何の疑いもなく決まりきったきものを着ていればOKだったのですが、「決まりにとらわれない自由」って不安なんですよね。「こんなのでいいのか、わからない!」って。

わたくし的には、「イマドキ何を着ていったって、文句をいう人もなかろう。きものを着ているだけで『エライ』って褒められるのだ。だいたい親世代でさえ、きものの決まりをはっきり知らないから冷や汗をかいているのに……」と内心思わないでもありません。

自分にとって気持ちのよいものを着る、好きなものを着たい……という人に、目をつり上げて注意をする人は、現在、それほどいないでしょう。それが若干寂しい一面もありますけれどね。
主賓が自由奔放に個性的な「おしゃれ」を追求するのですから、その場に参加する者も例外なく「おしゃれ」が求められる時代です。そっちのほうがかなり大変。さてどうしましょうか。

それはともかく、あまりカジュアルダウンをしないわたくしが、そういう場に招かれたとしたらどんな感じで行くだろうか、紋付きなどの礼装ステージの知識も全部無視して、自分の好みで軽礼装を考えてみたら……と仮定してみました。


[付下げ小紋]
ドレス感覚のきものといえば、やっぱり「付下げ」や「付下げ小紋」が便利で、気どらない披露宴や二次会、パーティ、ちょっと気張ったきものの展示会などの「軽めのハレの場」に重宝します。
さっぱりした柄なのに、絵羽付けという構成ですから「大げさでないおしゃれ」という感じがして使いやすいと思います。
柄がこってりしてないきものをベースにすると、どんな帯を持ってきても合いやすいですから利用範囲が広いですね。

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江戸小紋を付下げにアレンジして染め替えたきもの(に志田)に、唐織の帯(に志田)の帯を合わせて。この付下げは無地感覚なのに小さな色紙散らしのアクセントがあるので、帯を変化させれば茶席のきものとしても重宝します。伝統的かつ作行きに新しさを感じるタイプの袋帯を組み合わせました。


[軽礼装は帯で魅せる]
きものをあっさりめにしたら、帯は力のある帯を持ってきたいですね。といっても、ここで古典的な袋帯を組み合わせたら、一挙にスタンダードな礼装という感じになりますから、しゃれ袋帯の登場です。
このところの私の好みは、「古典と斬新がシェイクされたようなしゃれ袋」に目が行くのですが、そういうタイプがカジュアルダウンの礼装にとっても役立つような気がしています。

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左=すごく力のある帯に惹かれます。個人的には、帯は箔使いや錦よりも唐織が好みで、きものはキラキラ系の紋綸子や紋意匠といった取り合わせの軽礼装が好きですね。これは「舞楽菱」という伝統柄ですが、柄の処理の仕方が大胆なもの。帛撰さんで求めました。
右=付下げ風に染め替えをした松葉色の水玉(染めのみずぐち)に輪奈天鵞紋袋帯(誉田屋源兵衛)を取り合わせて。有栖川や青海波文様を切り嵌め風に散らした帯の文様がモール糸で表現されているので存在感が抜群です。礼装用の白金の帯締と金彩帯揚げでキラキラをプラス。


古典的な趣きは、たとえば直線と幾何学的な文様が整然と並んでいると、正統派、オカタイといったイメージになりやすいかもしれません。
それも小さめの柄だったりすると、普段着っぽく見えがち。蜀江や亀甲、七宝、唐花、丸紋などでも、大きさにメリハリがあったり、大胆なデザイン処理がされているとしゃれ感が出てきます。

[光沢Love]
ハレの席には、マットな素材感よりも光沢系の何かを身につけたい感じがします。たとえば無地っぽいきものでしたら「光沢のある御召」「天蚕糸の色無地」「紋意匠、紋綸子の大柄の色無地」……など、とにかく何かキラっとした輝き=ドレス感覚となります。

もしくは、帯留めに真珠や宝石を使ってもよいですよね。私は帯留めを持ってない人間なので妄想で語りますが。

と、くれば、ネイルのおしゃれもよいかもしれません。きもののコーディネートに合わせて、ラメやかわいいストーン使いも素敵。

指先をキラキラと飾るのは女性の特権だと思いますし、最近のネイルのテクニックは芸術作品ともいうべきもの。
ふだんは素爪のわたくしでも、パーティの場に出かけるならネイルをほどこして、気持ちも爪も「盛り」上げたいですね。ネイルは、宝石のリングに匹敵する強さがあると思います。

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左=ふだんによく使用するちりめんの帯揚げでも、この灰桜色の金彩散らしのデザイン(上の松葉色のきものにも取り合わせています。井澤屋製)ならパーティに重宝します。
右=もちろん紋綸子に絞りの帯揚げも、ハレの場によく使っています。


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草履もちょっとキラキラ。螺鈿が鼻緒にほどこされたミルキー色の軽礼装用。ハレの場には、明るくて白っぽい色の草履がおすすめです。
よく礼装用の草履といえば、バッグとおそろいの佐賀錦や、もしくは鼻緒が錦っぽい布製というものもあるけれど、これは大げさではない螺鈿のデザインが軽礼装に最適。東京銀座のぜん屋製。



こうやって皆さんにわたくしの軽礼装を紹介してみると、自分の好みが整理されてきました。

私は結構キラキラが好きなんですね。それもド派手なキラキラではなく、控えめのキラキラ。帯は力のあるもの。洒落ているのに古典柄、というタイプ。

今日はバッグを取り上げませんでしたが、軽礼装はバッグがポイントだったりもします。佐賀錦や、いかにも礼装用のおとなしいハンドバッグというより、洒落たクラッチなどを合わせるのが好きです。
パーティはクラッチでしょ、というまったく個人的な好みなわけですけれど……。

最後、最重要ポイントは頭ですね。
樺澤さん、佐藤さんがヘアについて語っておられましたが、まったくそのとおり。
髪の毛をどうアレンジするかで、着姿の総合点が3割以上アップすると思います。きもの雑誌は、きもののヘアが上手い美容室特集をぜひ組んでほしいなあ。
東京は、京都よりきもののヘアアレンジが上手い美容室が見つかりにくいと思っているのですが、それはわたくしだけが感じている感想なのでしょうか。

なんだか話が散漫になってきましたね。結局、わたくしは半喪服や喪服の礼装についてはお話しをしそびれてしまいました。またいつかそういう機会が訪れたらと思います。

それでは次回の樺澤さんより、12月の企画テーマ「染めと織り」についてはじめたいと思います。

date: 2009年12月18日

subject: アップヘアに便利な道具

from: 樺澤貴子



佐藤さんの紬に対する想い、とても共感できます。私も手仕事の温もりを感じる物はきものでも、器でも、暮らしの道具でも・・・大好きです。そして、それに携わる人々を取材することは、自分のライフワークにしていきたいと常々感じています。

さて、今回は植田さんの前にちょっと割り込ませていただきました。というのも、11月24日の私の記事にコメントを寄せてくださった方へのお返事が遅くなってしまい、お詫びも兼ねて、ご質問のお答えをさせていただきたいと思います。

質問は、「ようこ」さんからの下記の内容でした。

髪型・・・いつも悩ましいです。着付けよりも髪型を決めるのに時間がかかるほどです。ぜひ、うまく決めるコツや道具などをご紹介いただけるとうれしいです。また、簪をどううまくとめたらよいのか、教えてください。一目ぼれで買ってしまった簪がいくつかあるのですが、下手につけると落ちてしまいそうで、いまだに眺めるだけなのです。


これには私も同感。今は、髪を切ってしまったので、髪がまとまらないというストレスから解放されていますが、以前はまとめ髪に手間取り<髪型20〜30分・着付け10分>というアンバランスな配分でした(笑)。そんな私のお悩みヘア・ライフに、植田さんが便利なGOODSをご紹介くださったのが今年のはじめ。この1年間、とっても助けられました。今日は、皆さんに私が植田さんから教わった、便利なまとめ髪アイテムをご案内させていただきます。

【まとめ髪用コーム】
おすすめは、このリトルムーンのEコーム1本とU字ピン2本がついた「お手軽セット」。私はそれに「コーム6本櫛」を足した、4点を愛用。
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◆Eコーム◆
3本足の独特な構造によって髪のホールド感が高く、ある程度髪の長さがある方ならこれ1本できれいな夜会巻きが形づけられます。偶然、佐藤さんも同じタイプをお使いでしたね。
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◆コーム6本櫛◆
実は最初に購入したのは「お手軽セット」のみ。私が最初にこのセットを購入したときには、襟足の髪が4〜5cmと短めだったため、Eコームだけでは固定ができませんでした。そこで、買い足したのが6本櫛のコーム。Eコームで留めた後に、襟足の短い部分の髪を6本櫛のコームで夜会巻きの内側に押し込むだけで、きれいに後れ毛が収まります。
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◆U字ピン◆
最後に形を安定させるために使うのがU字ピンです。通常薬局などで購入できる細いタイプではなく、ある程度の太さと長さが7.5cmあるため、上部にはみ出した毛先を収めるのに、かなり安定性があります。また、両軸のウエーブ状の構造によって、髪への留まりがよいことも特徴。通常のU字ピンを使った場合、お辞儀をした時などにスルリと抜けてしまうケースがありましたが、そんな心配もありません。
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【簪を固定する】
簪を固定する場合には、前述のU字ピンが便利です。ピンの先端が丸みのある処理を施されているため、簪を傷つけないこともメリット。また、これらのセットを購入するまでもない場合は、通常のU字ピンを写真のように片方だけ折り曲げます。一度、奥まで差し込んでから、ちょっと戻す(抜く)ように使うと、折り曲げた側が髪に引っかかり固定されます。ちなみに、この折り曲げ式のU字ピンは前髪を固定させるときなどにも活躍します。
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【逆毛のポイント】
きものを着たときには、後頭部に高さを出すことで、全身のバランスがよく見えます。その後頭部というのは、鼻先と耳の上部を結んだ延長線の部分です(図のA)。ですが、なかなかうまくはいきませんでした。先日、ヘアをカットしてくださった美容師さんに、その旨を告げると、逆毛を立てる位置が間違っていることがわかりました。
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逆毛を立てる正しい位置は、左右の耳を結んだライン上(図のB)。意外にも前側であることに驚きましたが、実際にトライしてみると、Bの部分で逆毛を立てて櫛で馴染ませることで、サイドから見るとAの部分がふわりと膨らんで見えるのです。このポイントは、アップヘアの方にも、ショートやボブヘアの方にも共通して言えるので、ぜひお試しください。

そして、逆毛を立てるなら、できるだけ目の細かいコームを選ぶこともポイントです。私のコームは「本つげ」と書いてありますが、100円ショップで求めました(笑)。また、最終的にスプレーをかける前に、前髪やサイドの張りを固定するのには、写真右のようなコームが便利。
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左:コームにセット用のスプレーを吹きかけて逆毛を立てると、逆毛のボリュームがヘタりません。しかも100円ショップの櫛なら、惜しみなく水洗いできます。右:最終スプレーの前に、コームで仮留めする技も植田さんから伝授していただきました!もちろん100円ショップで見つけたもの。意外にきものヘアに使えるアイテムが揃っていますよ〜。



最後に、「ようこ」さん、「はな」さん、コメントにお返事をするのが遅くなって、本当にすみませんでした。
では、植田さんの回を楽しみにしていますね〜♪


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