date: 2009年08月04日

subject: 基本の肌着

from: 植田伊津子



8月夏本番となりましたが、全国的に不安定な気候が続いていて、東京もカラッとした天気になりません。どうしたのでしょう。陽射しが少ないと、薄物も涼しく見えませんよね。

さて、今月のテーマは「肌着・長襦袢」です。きものを着はじめた頃は、表のきもののことばかりを気にしていましたけれど、肌にじかに接し、身体のラインを整え、体温調節の要ともなるこれらをないがしろにすることはできません。
皆さんはいったいどのような肌着や長襦袢をお使いなのでしょう。まずは話のとっかかりとして、私の肌着についてお話ししてみましょうか。下着の話をオープンにするのは恥ずかしいのですが、どうかお付き合いください。

ところで、本題に入る前に大前提のお話。
きものの下は、基本にこれら2つの肌着をつけます。
1、肌襦袢(上の肌着。きものの打ち合わせをしたもの)
2、裾除け(腰巻き状の肌着の布)

肌襦袢の下は、和装ブラジャーやサラシをまいて補整をしたりしますが、ブラジャーなどの洋装の下着は普通はつけません。補整下着をつけない人は、肌の上にすぐ肌襦袢となります。
また、裾除けの下は下着(ショーツ。ごく稀に「湯文字」という昔の下着をつける人もいます)になりますが、個人的な好みでステテコや東スカートを用いる人もいます。


[肌襦袢]
私が持っているのは、「さらし」と「ガーゼ」です。
ベースは「さらし」で、ガーゼは12〜2月の寒い季節に使用しています。
きものを着はじめた頃は、一年中、さらしだけを使っていたのですが、冬に肩が冷えて仕方がありませんでした。そこでガーゼに代えてみたところ、温かくてよかったのですね。ガーゼの温効果は絶大なので、私は真冬しか使いませんが、おそらく冷え性の方はガーゼをベースにお使いになっているのかもしれません。

手持ちの肌襦袢は一般的な既製品で、後ろを引いておかないと、きものを着用したときに後ろの襟ぐりから肌襦袢が見えるときがあります。ですから今度新調するときは、次に挙げるような商品にしたいなと思っています。
婚礼用共袖肌着」は、衿を抜いた着付けでも肌着が見えないように深めの襟ぐりです。「細衿共袖肌着」もよさそう。こちらは肌襦袢衿がなく身体に添う構造。これも後ろが詰まっていないので、私の着付け方に合うと思います。
ともに和装肌着を豊富に扱う「ゑり正」の商品です。


[あしべ織汗取り]
5〜10月頃の暑い日は、あしべ織汗取りを肌着として使うこともあります。単衣のかかり→単衣→盛夏→単衣→単衣のおわりの時期にあたります。ほんとうは、あしべ織汗取り→肌襦袢→長襦袢の順に着るものなのでしょうが、私はあしべ織汗取りをつけたら、いきなり長襦袢を着ることが多いですね(その場合、裾除けはつけず、ステテコを用います)。灯芯のキルティングが身体の凸凹を補整し、かつ汗もおさえてくれます。

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佐藤さんと同じく、あしべ織汗取りは私のきものライフに欠かせません。冬でも、暖房がきいた室内を動き回るようなときはつけています。



[裾除け]
裾除けにはキュプラや綿などさまざまな素材がありますが、私の裾除けは一衣舎製の絹です。
きもの愛好家が裾除けに望むのは、裾さばきのよさと蒸れの解消ではないでしょうか。その点、絹の裾除けは、文句のつけようがありません。

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通気性に富み、静電気の起きない絹の裾除け。一衣舎製は、かつてパラシュートの生地に使用していたという羽二重を使っているため、最強の強さです。正座を繰り返すお尻の負担にこれほど耐えられる絹の裾除けは、他に見あたらないと思います。
こちらのものは、絹の上部に木綿の布がついていて、これでしっかりとお腹と腰を覆う構造。ただ、この木綿の幅が、私にはちょっと狭いのですね。もう少し幅広のほうがしっかりときつく巻けて、お腹もへこませることができるのにと思っています。


[ステテコ]
汗をかく夏の時期に愛用される方が多いのかもしれませんけれど、私は1年を通じて「楊柳の木綿のステテコ」を裾除けの下に使用しています。ステテコをつけると、太ももがいつもサラサラで、快適なのです。ひとつ難をいうならば、洗濯をして干すときに……あまりの色気のなさに物悲しい気持ちになるだけでしょうか。
夏用の本麻や、トイレでの脱ぎ着が楽なローライズのステテコもあるようですが、私はまだこちらを試したことがありません。

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楊柳(クレープ)のステテコは洗い替えを含め、何枚かを常備しています。



[和装スリップ]
洗い替えの肌襦袢+裾除けがないときは、これらが一体化したスリップ型の下着も便利に使っています。

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きもの初心者の方は、意外に肌襦袢+裾除けをつけるのがむずかしいといいます。肌襦袢が乱れる方は、スリップ型のほうがよいかもしれません。これならストレスなく着られると思います。


スリップ型は、「上はさらし+裾除けはキュプラ」が多いと思います(「キュプラ」と「ベンベルグ」は同じ再生セルロース素材ですが、異なった言い方をしているだけです。ベンベルグは旭化成での呼び名。和装肌着を語るときによく耳にする「デシン」は、素材名ではなく織り方の名称です。デシンは緯糸に強撚糸を使って密に織り上げてシボを表現。そのため、きれいなドレープが生まれ、身体に添いやすいのです)。
吸湿性があり、静電気のまとわりつきもなく、耐摩耗性にすぐれてたキュプラ(ベンベルグ)は、おもに高級服地の裏地などに使われています。

私が使っているのは、ゑり正のベーシックな着物スリップですが、こちらもよさそうなので、一度試してみたいと思っています。日清紡のスーピマコットンという超長繊維綿を使っていて、汗取り機能がついているのに惹かれますね。単衣と袷の変わり目に用いたい感じ。

以上が、あらかたの肌着話です。自身の好みからいうと、近年、肌に触れるものは「絹」に勝る素材はないと、ますますその念を強くしています。
実際、私は、絹の生地でステテコを自作してみたこともありました。けれど、ふつうの絹の平織りでは、肌着としては絶対的に強度が足りませんでした。自作のステテコは、すぐに縫い目が裂けて、破れてしまうのです。

肌着は「洗う」のが前提ですよね。もちろん見た目もかわいらしくあってほしいですが、実用的なのかが問題。肌触りや吸湿性、放湿性、通気性、強度のどれもが大切なのです。
木綿のステテコは、汗を吸ったらずっと湿っている点がありますが、強度は絹に勝りますので、結局今のところ、私は木綿を使っています。
肌襦袢なら、ステテコの股繰りのように負担のかかる箇所がありませんから、絹製でも大丈夫かもしれません。絹でできた襟ぐりの深いかたちを見つけたら、ぜひ使ってみたいと考えています。

長襦袢については、これからおいおい触れていきましょう。樺澤さん、佐藤さんともそれぞれこだわりがおありのはず。お二方のお話も楽しみです。

ところで今月は、「きもの*BASICルール」のメンバー3人が、交代で夏休みを頂戴する予定です。更新の間が多少空きますことをご了承くださいませ。よろしくお願い申し上げます。


date: 2009年08月07日

subject: 基本の肌着 その2

from: 樺澤貴子



8月のはじめに新潟・長岡の実家でプチ夏休みを過ごしてきました。2、3日は長岡の花火大会。この時季にできるだけ仕事の休みの照準を合わせ、家族揃って河原で団扇片手にビールと枝豆で花火鑑賞というのが樺澤家の夏の恒例イベントなのです。もちろん、ゆかた姿で!と、言いたいところですが、今夏は天気予報がかなり怪しかったので雨合羽持参で洋服で出かけました。予報は的中。2日は中盤から花火の輝きに呼応するかのように雷が光る始末で、終了間際には土砂降りの雨でした。3日はなんとか無事に鑑賞できました。

東京に戻りパソコンを開いて、佐藤さんのお洗濯メールに感動。すっかり「洗い」のプロですね!ちょっと影響されて、まずは手始めにと、今までクリーニングに出していたスカートをお洒落着用洗剤で手洗いしてみることに。ところが、この始末です。

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深い紫のドット柄が色落ちして、生成りの地色がピ・ピンクに(涙)。かなりへこみました。今年も私はゆかたを悉皆店に預けることになりそうです。


そこで、佐藤さんに質問です。紺地のゆかたは色落ちしても白抜きの柄が多少にじむ程度かと思うのですが、白地のゆかたは私のスカートのようなことになりませんか?皆さんは失敗談などありませんか?

気を取り直して、今月のテーマに。植田さん、基本の肌着について体系的に整理してくださってありがとうございます。植田さんも書いていらっしゃいましたが、きものを着始めた頃は表にばかり目がいくものですよね。私はかなり長い間、表にしか関心がなく、肌着や長襦袢、仕立てのことはどは、やっと気を配るようになった次第。ですので、今月はあまり語るべきことはなく、逆にお勉強させてください!

[肌襦袢1]
今日は肌襦袢のお話をほんの少し。
身頃の素材ですがは、私は袷の時季は「ガーゼ」をベースにしています。特に冷え性というわけではないのですが、私は補正下着などをつけず素肌の上に直接肌襦袢を羽織るので、肌触りが優しいから・・・という理由が大きいかもしれません。単衣〜夏の頃はさらりとした肌触りが心地よいため、「クレープ地」のものを愛用しています。

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左:肌に張り付かないため心地よいクレープ地。右:掛け衿もちゃんと絽目になっており、涼やかな印象です。


[肌襦袢2]
もうひとつ、少し変わりネタが、紬やカジュアルな小紋など・・・・・「ちょい着」用に愛用している淡いピンクの掛け衿タイプ。これは小唄の師匠に教わった赤坂の和装小物店「吉の家」さんで求めました。芸者さんや踊りの関係者の方もお客様に多いため、きものを着る事を商売としている方に便利な通なアイテムなども揃います。

この肌襦袢を求めたきっかけは、数年前に我が小唄の師匠の姉弟子にあたる、赤坂芸妓組合の会長をされているお姉さんが、お稽古に見えたときのことです。お辞儀をしたとときに、長襦袢の内側に一筋きれなピンク色が見えたのです。ほんのりとピンクが薫り、イヤミのない色っぽさに心が動かされました。お尋ねしたところ、掛け衿がピンクになった肌襦袢のことを教えてくださいました。

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掛け衿と袖に、上品な桜色が使われています。身頃はさらし、衿と袖の素材はキュプラです。熱に強い化繊なのでアイロンで強い蒸気を当てても安心です。同じくピンクの衿でも、素材が絹のタイプもあります。ただ絹の場合は4段階ほどの色の濃淡のバリエーションがあれど、ピンクの色がやや濃いめでした。


なぜ掛け衿がピンクなのかしら?芸者さん好みの商品なのかしら?
吉の家さんに尋ねたところ、「衿の汚れが目立たないので毎日着物を着る方が好んでお求めになります」とのこと。ちなみに、同店では掛け衿に朱赤を使ったものもあり、それはあくまでもプロユースで踊りの方が求められるそうです。

私の場合は、完全にお洒落感覚で着ています。特に紬などのかたいものを着る際には、衿の内側に一筋の桜色が柔らかな印象となります。もちろん自分では見えませし、私は衿をあまり抜かずに着つけるため、人からもめったなことでは見えないと思うのですが・・・。気付いた人にだけわかる、ひと匙のお洒落というのは、きものに限らず洋服においても楽しいものです。


[裾除け]
これは植田さんもご紹介されていた一衣舎さんの絹地。佐藤さんもお持ちとのことで、おふたりに影響され4月の一衣舎展で求めたものです。植田さんの原稿を読んでパラシュートの生地に使われていたほど、強度のある羽二重とは知りませんでした。軽さといい、肌を滑るような感触といい、足さばきのよさといい、とても快適です。植田さんがおっしゃるように、私も腰布の幅は少し狭いですね。今まで使っていたものと比べても1寸ほど狭かったです。

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上・左下:一衣舎さんの絹地の裾除け。私は藤色を購入しましたが、ほかにも生成りや淡いピンクなど、カラーバリエーションがありました。裾の部分をかがっていない一枚仕立てです。(両サイドが5ミリほどかがってあるだけ)右下:着付け教室で最初に求めたまま「なんとなく」使っていたキュプラ地のもの。裾は20cmほど折りあげられていて、サイドも10cmずつほど生地を折ってかがってあります。この生地の分量を比較しても、軽さの違いを感じるわけですね。


この裾除けは、本当に目からうろこでした。人目に触れない部分への小さなこだわりは、きものの場合、肌着や腰紐ひとつとっても、快適さや着姿の仕上がりに違いが出るのだとわかってきました。そんなお話の続きとして、次回は、私がきものによって使い分けている腰紐や伊達締めをご紹介したいと思います。

date: 2009年08月10日

subject: ちょっとでも涼しく、夏の着付け小物

from: 佐藤文絵



樺澤さん、スカートが大変なことに! これはへこみますね(涙)。
でもでも、なぜ手始めに洋服からいってしまったのでしょう...。おそらく洋服のほうが素材や染料がいろいろありすぎて、トラブルが多いのではと想像。ゆかたとて最近のプリント風のものは同じことかもしれないけど、樺澤さんのゆかたはきっと注染のちゃんとした染めのものばかりだと思うので、そちらのほうがずっとトラブルは生じないと思うのです。
紺地・白地・絞り、どれも自分でお洗濯していますが、これまで色落ちしたことは一度もありません。唯一の失敗談というと、広衿で仕立てたゆかたの「衿裏」。化繊の衿裏の場合は、木綿である表地が少し縮むため、化繊の衿裏が少しだぶついています。逆に晒(木綿)の衿裏は、衿裏が表地より強く縮んでしまって、表地がひきつったようになってしまいました。衿裏が余るのはいいとして、縮みすぎてしまうのは困ったもの。衿裏に晒を使う場合は要注意です。
だけどこれ以外はノープロブレム。ちょっと前まではドライクリーニングなんてものはこの世になかったのだから(日本では昭和20年代に広まったとか)、樺澤さん、これに懲りずにお洗濯してみてください!


さて、肌着のお話。私の夏の肌着ライフは前に書かせてもらいました。袷の時期は、おふたりと同じく肌触りのやさしいガーゼ。裾よけも同じく一衣舎製の絹の裾除けを使わせてもらっています。
裾よけの上部についている木綿の部分がもっと幅広ならなおよし、との意見にナルホドと思いました。ガードル的な効果、本来は湯文字がその役割を担っていたのでしょうね。植田さんは裾よけを自分で改造されるとおっしゃっていました。お裁縫は避けたい私は早速リサーチ。京都の和装小物専門店「ゑり正」の裾よけは、ものによっては「腰布35cm」とあります。これなら十分ですね。

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左=肌襦袢、裾よけ、ともに種類豊富。右=既出のあしべ織汗取り。ゑり正では、本麻楊柳のきものスリップバージョンや、芸舞妓さんのために作ったという胴のみバージョンも見かけました。


肌着の物色中に、おもしろいものをみつけました。へちまを使った帯板です。へちまの帯枕は愛用者も多いと思うのだけど、帯板は初めて!
夏の帯板というとメッシュのタイプが思い浮かびます。通気性はよいけれど、柔らかすぎて帯がしわしわに。帯板の役目を果たしていないんですよね。とはいえ、いかにも蒸れそうないつもの帯板はしたくないし...。夏のちいさな悩みのタネでした。

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左=こちらがへちまの帯板。帯枕に続く新商品です。右=夏の着付け小物というとメッシュが一般的。だけどメッシュの帯板は柔らかすぎて、いまいち頼りになりません。


嬉々として買い求め、使いはじめたへちまの帯板。使い心地はとてもよかったですよ。とてもしっかりしています。分厚すぎるかも、と思えた厚さも気になりませんでした。

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表は麻の楊柳、裏はメッシュ。薄くしたへちまの繊維がサンドイッチされています。


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へちまの帯枕は自分で手作り。へちまのタワシを水に浸けて柔らかくしてから、洗濯バサミやゴムを使って、背中に沿う、帯枕らしい形に整えました。ガーゼは医療用のものを薬局で購入。


もうひとつ気になっているのが紗の伊達締め。みなさんはお使いですか?
たとえ気休めとしても「ちょっとでも涼しく」と小さな努力を重ねたくたくなる夏のきものまわり。試してみたい気持ちは満々なのに、贅沢な気がして踏みとどまっています。そしてシンプルな一色無地の独鈷柄が発売されるのをひそかに待っています。

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左=数年来気になっている紗の伊達締め。お値段は7000円強。右=色合いだけでも涼しげに。いただきもののブルーの伊達締めは幅も狭く、夏専用にしています。


そんなことで、現段階の私の夏の着付け小物はこんなふう。
この夏は懸案だった帯板が解決されて、快適度がだいぶ上がった気がしています。

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date: 2009年08月12日

subject: コーディネートを楽しむ!My着付け小物

from: 樺澤貴子



長女の植田さんがお盆休みのため、樺澤が佐藤さんに続きます。前回の予告どおり、今日は腰紐&伊達締めのお話を。それにしても佐藤さんの夏の着付け小物、涼やかですね。お箱の中が、白とブルーで統一されていて爽やか。へちまの帯板や帯枕、紗の伊達締めなどは、目に映る夏模様として美しいですね。ホントのところ、実感として暑さも軽減できるものですか?ならば私も来夏にむけて検討しようかしら?

私は実のところ季節ごとに道具を使い分けていません。そのかわり、<ちょい着>と<よそゆき>とで腰紐や伊達締めを使い分けているというのが、現状の私のスタイルです。きものをき始めてからしばらくの間は、腰紐に伊達締め、長襦袢から肌着の果てまで、着付け教室でセット販売されていたものを何の疑問も持たずに使っていました。きものの専門誌に携わるようになって、現場で着付け師さんが使うものや取材に伺わせていただいた達人たちのお気に入りを見て、少しずつ自分好みのものを集めるようになりました。まだまだ、機能よりもコーディネートにアンテナが向いている発展途上な段階ですが、今の<My着付け小物>の全容はこんな感じです。

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収納は「薄め」がキーワード。使用して1日汗をとばしたら、アイロンをあてて4つ畳みに。使うときにも、仕舞うときにも、大雑把な私にはストレスのない簡易な収納スタイルです。帯を購入したときの空き箱を、収納箱として利用しています。それにしても佐藤さんの収納箱は几帳面で美しいですね〜、性格が表れますな・・・お恥ずかしい(笑)。



[腰紐〜ちょい着編]
1)三河芯入りモスリン地
腰紐で一般的なものがモスリン地のタイプ。私が愛用している腰紐は、モスリン地の紐の中央部に60cmほどの三河芯の入っているもの(銀座の伊勢由製)。私の場合、いただくきものは1〜2寸自分の寸法よりも着丈が短いことが多く、その場合は腰骨のあたりで紐を結びます。腰紐の位置が低くなるほど、おはしょりに響きやすくなりますよね。このタイプは、胴前の部分にちょうど三河芯がくるため、腹部の生地のもたつきや、おはしょりをすっきりと処理することができます。織りものや気軽な小紋を着るときに使っています。

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透かしてみると三河芯が入っているのがうっすらと見えます。収納地に小さく畳まずに、4つ畳にしているのは芯がはいっているということも理由のひとつ。白とピンクを持っていて、きものの雰囲気に合わせて使い分けています。


2)幅広の楊柳地
これは『きものサロン』(’02年秋号)にて、「旅先で着くずれないためのひと工夫」というテーマで笹島寿美先に取材をした際に、ご紹介してくださったアイテムです。タクシーの乗り降りや、立ち座りなど、腰は動作の起点になる箇所。特に旅先では着くずれを防ぐために腰紐をきつく結びすぎて、それが疲れにつながります。幅広の楊柳地は、紐が緩みにくいため、強く締める必要がなく、体への負担を軽くしてくれるのです。特に幅広のタイプは、芸妓さんや女将さんなど、きもので立ち働く人が愛用しているそうです。実際に老舗のうなぎ店の女将さんに取材した際にも、同じタイプを愛用していました。そこで、私は立ち居の多いお茶の稽古の際には、この幅広の楊柳地を使っています。

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伸ばすと約20cmほどになる幅広の楊柳地の腰紐(銀座の伊勢由製)。古来より細く長いもので7色のものを身につけると厄から逃れられるといわれていますが、私も30代前半の厄年を前にして購入しました(笑)。


3)幅広の縮緬地
笹島先生曰く、楊柳地よりもさらに緩みにくいのが縮緬地のタイプ。私は訪問着や付け下げなど、よそゆきのきものの際には、縮緬地の腰紐を合わせます。柔らかものは、生地がすべりやすく腰紐で位置を定めるのに苦労を強いられることがあります。そのストレスを軽減してくれたのが、銀座の伊勢由製の幅広の縮緬地の腰紐です。モスリン地同様に胴前にくる部分に三河芯が入っているため、おはしょりと、生地のもたつきもすっきりと処理できます。

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モスリン地の腰紐が幅5cmなのに対して、幅広タイプは7cm。自分の<よそゆき>の色柄を考え、比較的どのきものにも合いそうな淡い柳色を求めました。



[伊達締め]
腰紐ほど機能性を追及されない伊達締めは、色柄の楽しさに好みが傾きます。私はちょい着には独鈷柄の伊達締めを、よそゆきには綸子の伊達締めを合わせています。きものに合わせて着付けの道具を変えることは、きものの贅沢の楽しみのひとつですね。取材させていただいた達人の言葉で印象に残っているのは、「華やかな訪問着に博多の伊達締めでは、どこか違和感があるでしょ。ニオイが違うのよね、それは帯合わせと一緒よ。着付けをする際はもちろん、出先から戻り帯を解いたときの姿を鏡に映したときにも、きものの雰囲気と伊達締めのバランスがとれていると、心地いいわよ」ということ。腰紐や伊達締めはきものを着るための裏方だけれども、色柄や素材の美意識をひと匙加えるだけで、きものの楽しみが増すことを教えていただきました。

ちなみに、私は腰紐や伊達締めの長さは、やや長すぎる感があります。特に伊達締めの余った部分の処理は、後の帯枕のガーゼや帯揚げを帯の内側に押し込む際に影響しあいます。達人のなかには、市販の伊達締めを自分サイズに左右を短く切って処理している方もいらっしゃいました。これは、今後の懸案事項です。

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左・ちょい着用に使っている独鈷柄の伊達締め。「着付け小物は派手なくらいがいい!」という誰かの助言を聞いて、白地に赤とピンク地のタイプを使っています。でも、正直ときにはきものの色と合わずに、むず痒いことも・・・佐藤さんのように白一色のものを揃えておくと便利かもしれませんね。右・よそゆきに使っている綸子の伊達締め。麻の葉地紋に飛び絞りと、鱗地紋に7色の2本を、きものに合わせてコーディネートします。


[帯板]
最初に着付け教室で求めたものは、長さがやや短めで、ちょうど体の幅より少し広めのタイプでした。板が体に添わずピンと張ってしまうため、帯を結んだときに太めに見えてしまったり、帯板の端のラインが前帯に響いてしまうという難点がありました。

本職の着付け師さんたちは、ボール紙や薄めの樹脂ボードを使った手製の帯板を使っていました。長さも自在に調整でき、ピンと張らないため帯への影響が防げます。ただ、それは一時の撮影用だから?長時間きものを着ているとボール紙の場合は汗や体温の湿気でヘタリそう・・・。

どうしたものかと思案していたときに見つけたのが、邪道かもしれませんが、体を一周するお太鼓前結び用の帯板。この帯板のメリットは、(1)体を一周するので、以前ストレスを感じていた帯が太く見えてしまうことや、帯板のラインが響くことがない。(2)帯を前で結ぶため、結び目のふくらみやタレの部分のシワを整えたりするのに、細やかに処理できる。(3)帯を後ろに回したあとに前帯の染め柄の位置を微調整する際にも便利。といったところでしょうか。

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私は結ぶところまで前で行い、クルッとまわして、お太鼓は後ろで作ります。表地のがサテンのような滑りのよい素材なので、帯をまわしても衿元の着くずれなどはほとんどありません(左から右に向かってまわすのがコツ。逆にすると、上前の衿が多少くずれてしまいます)。


植田さんは、ご自身で腰紐を作られていたように記憶していますが、さまざまなこだわりがあるのでしょうね〜。

さて、次回は以前コメント欄によせてくださったluteceさんの「夏のきものに合わせる下駄をチョイスするなら、どんなものがよいのか」というご質問について、楽艸の高橋さんに取材した内容をお届けしたいと思います。私も明日から、新潟へ里帰りしてきます〜!皆さんもよいお盆休みをお過ごしください。

date: 2009年08月19日

subject: 長襦袢の種類・ルールについて

from: 植田伊津子



夏休み終了。長いこと失礼をして、ごめんなさい(^_^;)。
この間、ずっとパソコンのないところにいましたので、留守中にアップされた原稿を読んでいなかったのですが、帰京後にサイトを確認すると、佐藤さんによる充実のお洗濯動画、樺澤さんのかわいらしい着付け小物の記事に釘付けとなりました。

さて、今日は長襦袢について取り上げたいと思います。まだお休み気分が続いていて、慣らし運転をしている感じですが、うまく展開できるでしょうか。不足のところがあったら、ご遠慮なくご指摘ください。

長襦袢といえば、基本的に袷用と単衣用、夏用の3種を使い分けますよね。ただし昨今の気候では、袷の時期でも単衣を着たり、また夏の長襦袢を先取りしたり、みなさんもきものの下の長襦袢で温度調節をされていると思います。表側のきものにくらべると、長襦袢はもう少し自由に着分けているのが現状のようです。
とはいうものの、ルールや種類についてもひととおり踏まえておきたいもの。まずは、長襦袢の基礎知識からいきましょう。


[袷の時期(10月〜4月)の無双・半無双]
この時期は、きものと同様に袷の長襦袢を着ますが、袷といっても胴は一枚仕立ての単衣で、袖が二枚になっていて裾返しがあるものを、袷の長襦袢と呼んでいます。
それが「無双(むそう)」、もしくは「袖無双(そでむそう)」といわれる長襦袢です。昔は寒かったので、胴の部分も二枚重ねにした総裏の長襦袢がつくられていましたが、今は寒冷地以外、ほとんど見かけなくなりました。

また「半無双(はんむそう)」という袖のバリエーションもあります。無双は表地と同じ分量の用尺を裏側にもつけますが、半無双は外から見えるところのみ、部分的に表柄が見えるようにして仕立てます。裏の分の用尺が少なくて済みますので、気軽な長襦袢はこの方法で仕立てることもあります。こちらにも詳細が記してありますね。

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袖無双の長襦袢。内側も表地になっています。



[関西衿・関東衿]
女性用長襦袢で一般的なのが「関西衿」で、これはきものと同じく別衿をつけます。「関東衿」は通し衿というかたちで、衿が裾まで通じていますから、衽や衿先がありません。主に男性用の長襦袢に用いられるかたちです。

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『図解速習講座 きもの早わかりハンドブック』寺西正文著 寺西和裁研究所発行より複写。



[おはしょり型]
長襦袢といえば対丈で、身丈に合わせたものですが、まれにきもの通の人は、おはしょり型の長襦袢を愛用されていたりします。これはきものと同じく丈をたぐり上げて、おはしょりをつくります。

たとえば洋服を例にとってみましょう。外にシャツを出して、シャツの上からベルトをとめたスタイルのとき。ベルトに余裕がなければ、腕の上げ下げをしたらシャツの裾が上がったままだったりしますよね。
これが対丈の特徴です。対丈は上半身の動きがダイレクトに影響する構造といえます。
ところがおはしょりというものは、クッションの役目をしますから、動きを吸収。ですからおはしょり型の長襦袢なら少々動いても、衿が開いたり、ゆるんだりしにくいのです。また細身の体型の人は、おはしょり部分の重なりでウエスト補整もできます。

京都の呉服店「に志田」の西田郁子さんは、おはしょり型の長襦袢を愛用されていて、とても使い勝手がよいらしいですね。「植田さんも一度使ったら、やみつきになりますよ」と勧められるのですが、基本的に暑がりの私は未体験です……。


[単衣の長襦袢(5・6・9月)と薄物(6・7・8・9月)
非常に季節の区切りがしにくいですが、透けない布の一枚仕立てが単衣の襦袢と説明したらよいでしょうか。袷の時期は袖が二枚仕立てでしたが、単衣になると袖が一枚となります。
そして盛夏。透ける布の一枚仕立てが薄物の襦袢ですね。6月と9月は、透けない襦袢と透ける襦袢を両用使いする感じです。

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単衣の長襦袢。一枚仕立てで、表地を裏側に縫い返しています。袷襦袢とは袖が一枚だけの違いなのに、衣更えをすると身も心も軽くなります。



[長襦袢の生地]
ポリエステルの洗える長襦袢については、別の回にお話ししたいと思います。とりあえずここでは横に置いておきますね。

袷や単衣に使う絹の長襦袢地は、きもの地よりやわらかく、しなやかな組織で、身体に添う薄さが大切です。組織名でいうと「紋綸子」や「精華」、平織りの「無地」などでしょうか。あまり重いと肩が凝りますが、かといってお安い薄地の襦袢地の場合、使い方次第ではすぐに目割れが起きてダメになります。しっかりと打ち込まれた適正な厚みの生地を選ばれるほうが、長い目で見てお得です。

また、「おはしょりがつくれないぐらい丈が短い」「昔のものだから、きもの地が痩せているみたい」というようなお下がりのきものをお持ちの方。それらは長襦袢に仕立て替えてもよいですね。

単衣の時期は、袷用の襦袢地以外では、肌につきにくい「楊柳」が人気。薄物の季節に突入したら、絹なら「絽」や「紋紗」、高級木綿である「海島綿」、「麻」など、豊富な種類があります。

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左=今夏、ぎをん齋藤で見せてもらった紋紗の長襦袢地。右=夏の絽麻の長襦袢。涼しいし、自宅で洗濯できるのがうれしいところ。ただしシワになりやすいので、袖や裾などの目につくところは、アイロンがけが必要です。


原則として、やわらかものにはやわらかもの(絹の絽や紋紗)、堅物のきものには堅物(綿や麻)を使うのが約束です。素材を合わせないと、袖の振りから堅い麻の襦袢が顔を出すことになりますから。
海島綿の長襦袢地は京友禅の千總が専有に扱っている商品で、西印度諸島で収穫された最高級の長繊維綿花「シーアイランドコットン」を使用。麻よりもしなやかで、さらっとした風合いが特徴なのだそうです。こちらは、私は未経験。


[二部式襦袢]
二部式襦袢は、長着の襦袢を上と下のふたつに分けたもの。その上半身を「半襦袢」と呼びます。
半襦袢の胴体が綿さらしで、袖に長襦袢地を使ったものが「うそつき」。外から見ると、通常の長襦袢と変わりありませんから「うそつき」というわけです。

「うそつき」と「大うそつき」の違いをご存じですか?
5、6年ほど前までは、さらしの胴体に袖を縫いつけたタイプ、「うそつき」が主でした。けれど、きものに合わせて長襦袢をコーディネートしたい場合に「袖を着脱可能にして、いくつもの替え袖を付け替えられたら便利じゃない?」として考えられたのが「大うそつき」。大うそつきは、うそつきの進化形ともいえるでしょう。こちらは、袖がマジックテープやスナップで取りはずせます。現在は大うそつきのほうが人気のよう。

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佐藤さんがお持ちの「大うそつき」。佐藤さんは袖と裾よけは麻を使われているみたいですが、これに冬用の袷の袖をつけても構いません。うそつきの身頃は綿で、通年使用します。
お古のきものなど、袖丈がまちまちの場合にも大うそつきが重宝。


私は一時期、二部式襦袢を自作していましたが、あるとき熱がぱったりと止み、全部差し上げたり処分したりしました。当時は自分好みの布で袖をつくり、銀座の津田家などで売っていた袖無し胴体に縫いつけていたのです。けれど小紋を着ることが多い私は、「自分には、こんなにたくさんの種類は要らないな」と気づいて……。
紬などのしゃれ着が多い方は襦袢とのコーディネートを重視されるでしょうから、袖のバリエーションが楽しめる二部式襦袢はとても便利じゃないかと思います。


[長襦袢の色柄]
留袖や色留袖、喪服などの礼装用……白の無地(地紋は可)。
訪問着、紋付き、付下げなど少々改まったもの……薄色。柄が目立たないもの。無地感覚。
小紋などの普段着……薄色〜濃色。無地感覚〜オシャレ柄など。
紬……薄色〜濃色。無地感覚〜オシャレ柄など。

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薄いピンクベージュ地の長襦袢。紋付きのきものなどに合わせているベーシックなもの。


色柄に関しては、上記がお約束ですね。とくに守りたいのは礼装用の白。留袖に薄ピンクの長襦袢を合わせる方が少なくないといいます。原則として、改まった装いになるほど「白」に近づくということでしょうか。
たとえばお茶をされている方で、師がお亡くなりになって、通夜・葬儀の席に出向く場合、一つ紋付きの地味な色無地を色喪服として用いる(黒共帯を締める)ならば、やはり白の長襦袢がよいのではないでしょうか。

では「白の長襦袢を、常着の小紋などに用いてもいいか?」と尋ねられたら、私は「白じゃないほうがいいのでは」って答えるでしょうね。夏は透ける問題があるため絽の白地の襦袢も用いますが、袷の小紋に「いかにも」礼装というような紋綸子などの長襦袢は、避けたほうが無難だと思います。
白という色は、きものの世界ではいろいろな意味で場所を限定するイメージがあるからです(婚礼衣装・経帷子〈死装束〉・神事の白装束など、「礼」をたださないといけない色なので軽く扱えないからでしょう)。

紺や茶系統の紬には、白っぽい薄色の長襦袢よりも、中間色で色目があるもののほうが落ち着くと思います。飛び絞りの長襦袢でも、真っ白な地に色を絞ったものではなく、少しだけ地色を薄いベージュ色などに汚してあるほうが、白の照り返しが抑えられて紬に馴染みやすいはず。

date: 2009年08月25日

subject: 長襦袢の衿について・その1

from: 植田伊津子



あれだけ騒がしかったセミの泣き声が弱まり、日が落ちると、鈴虫たちの合奏に耳を澄ますようになりました。知らない間に、秋が一歩ずつしのびよってきているみたい。さて、植田が今回も担当します。


[おはしょり型長襦袢の追レポート]
樺澤さんから「おはしょり型の長襦袢」について質問を投げかけられました。丈の長さや着方の工夫についてです。私はおはしょり型の詳細がわかりませんので、実際にお使いになっている「に志田」の西田郁子さんにうかがってみました。

「おはしょり型の長襦袢は、きものの着尺より、もう少し短めに仕立てますね。また腰紐は、きものと重ならないところに締めるほうがよいと思います。たとえばきものの腰紐を『腰』で締める人なら、おはしょり型長襦袢の腰紐は『おなか』あたりに、という具合に。肌襦袢をつけて、おはしょり型長襦袢の腰紐+伊達締めで『衿』を安定させ、きものの腰紐+伊達締めで『おはしょり』を整えます。

これは、〈着くずれしにくい〉点が最大の長所。きものを着てあまり動かない方には、対丈でも変わりないでしょうが、たとえばお座敷で舞われる芸妓さんなどには、おはしょり型のほうが大きな支持を受けています。
対丈は、舞いで足を開けば上の衿も連動して動くわけですが、おはしょりのクッションがあれば、上半身に影響を及ぼしません。後ろの衿の抜きも、動いているうちに対丈ほど詰まってこないのです。胸が大きすぎて前の衿元が開きがちの方にもよいでしょうね。

おはしょり型は痩せている人にもおすすめなのです。私もそうなのですが、身体が薄いと、着付けのときに何枚ものタオルをお腹に入れて補整しがちですけれど、これはおはしょり分の厚みが意外に効くんですよ。

痩せている方の長襦袢は、内揚げ(内部に縫い込まれる縫い代)を多めに残して、胴部分に厚みをもたせる工夫もします。
いろいろ補整具を使うというよりも、『地厚の生地を選ぶ(落ち感があって裾さばきがきれいに見える利点もあります)』『おはしょり型長襦袢に代える』『縫い方にも工夫をほどこす』などで、きわめて自然な着姿になるかと思います。ただし対丈以上に用尺が必要な分、1.2倍ほどのお値段になりますが、悩める方々には目から鱗のおはしょり型です」


郁子さん、ありがとうございます。私もスレンダーな後輩に着付けを教えたことがありますが、彼女は子どものようなウエストサイズしかなく、「ふくよかな方とは別の深刻な悩みがあるなあ」と思いましたね。



さて今日は、長襦袢の半衿について、衿の付け方や抜き方も含めてあれこれお話をしたいと思います。まず実用的な話に入る前に、半衿の背景について少しだけふれておきましょう。

[半衿今昔]
戦前の女性たちは、きものの衿を開き気味に着付けて刺繍半衿を大きく見せていて、衿が重要なおしゃれポイントだったことがわかります。
京都の呉服店や和装小物店には『ゑり○』という名前がついているところがありますが、それらはもともと主に半衿を扱っていた商売の名残りなのだとか。1920年代の雑誌には「きものにかけるお金の3分の1ほどを半衿代にかけるのが本当の衣装通」というような記事もあるほどですから、〈きものを汚さないための実用品〉という以上の付加価値をもっていたものでした。

これら凝った半衿は、大正から昭和初期にかけて人気を博しました。豪華な刺繍半衿以外では、友禅半衿、絞り半衿などがつくられていたようです。無地でも、白ではなく有色が好まれ、白を使うのは礼装時ぐらいでした。

あるとき(財)奈良家記念杉本家保存会杉本節子さんに、家に伝わってきた戦前の半衿をいくつか見せてもらう機会がありました。どれも色衿に細かな刺繍がていねいにほどこされていて、きものの付属品というよりも美術品のようなたたずまい。旧家の底力を感じましたね。

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杉本家の明治大正時代の刺繍半衿。『京都で、きもの』(05年11月号)特集 都の洒落きものより(淡交社刊)。


ところがあれだけ流行した刺繍の柄半衿が、戦後になると白の無地半衿にとって代わられます。高度経済成長からはじまったきものブームでは、礼装やお出かけ着の高級きものの需要が高まったせいもあって、半衿は「白の無地」が定着。現在もなんの違和感もなく、どんなきものにでも白の半衿を合わせているのはご存じのとおりです。

一応現在は、色半衿や柄半衿はおしゃれ着、白半衿ならふだん着から礼装までオールマイティーに、という使い分けをします。ちなみに茶席のきものでは、お稽古時以外では色柄半衿を使いません。

かくいうわたしも半衿といえば白一辺倒で、じつは柄半衿や色半衿を一枚も持っておりません。お茶のシーンに着るきものが多いため仕方がないともいえますが、まったく眼中にないわけではなく、というより興味津々ですね。

特徴のある半衿を用いたら、自分のいつもの着つけが変わるんじゃないかなという気がしています。やはり〈半衿を魅せる〉工夫をすると思うんですよね。私は紬や訪問着を着る場合、それぞれ「ソレ」らしく着る工夫をしているつもりですが、半衿を代えるのが一番劇的にスタイルを変化させるような気がします。それほど半衿っておもしろいアイテムじゃないでしょうか。


[素材]
半衿の使い分けについては前にこちらに書きましたから、そちらも参照ください。
衿の素材は絹100パーセントをはじめ、絹と綿の交織、洗えるポリエステル、バイアス衿などさまざまな種類が出ていますが、大別すると「絹」と「合繊」に分けられます。

昔からある絹半衿は感触や付け心地ともに快適ですし、なにより絹の持つ光沢は別格で、はたから見て一発で判ります。私はきもの姿の写真を見たら「あ、この人は絹半衿」って、指がさせるぐらい。
絹半衿の弱点は、値段とお手入れ、変色でしょうか。合繊ほどの耐久性がないので、洗うたびに光沢が減りますし、時間とともにゆっくりと黄色く変色します(わたしは自宅で水洗いをしているせいもあります。絹半衿をクリーニングに出せば、それほど光沢は減りません。ただしお店はドライクリーニングなので、洗剤溶液が清潔ではない店舗に出すと、さほどきれいになってない感じがします)
それに合繊の半衿(1枚500円ほど)にくらべると、圧倒的に値段が高い(1枚1500〜3000円前後)ですし、クリーニング店に手入れへ出したらランニングコストもかかります。

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左=塩瀬の正絹半衿。これはややクリームがかったもの。右=合繊半衿。こちらもややクリームがかったもの。紋付きのきものなどには本当の白を合わせますが、ふだん着には私の場合、絹、化繊ともに生成りを使うことが多いですね。


その点、合繊の半衿は、値段も安く、お手入れも簡単。多少ゴシゴシこすって洗っても心配いりません。また洗える長襦袢に合繊の半衿をつけていれば、半衿をつけたまま洗濯機にも入れられます。そのたびに半衿を外して洗わなくてもよいなら、ストレスフリーですよね。
ですが、合繊ならではの素材感は、これまた一種独特です。絹とは異なった白さや光沢、また衿芯とのなじみの悪さを感じたりする人もいるでしょう。

この2つを掛け合わせてできたのが、「絹と合繊の交織」半衿です。といっても、絹成分量は10〜20パーセントぐらいで、肌触りや布の質感はほとんど化学繊維ともいえます。交織タイプは、黄色に変色するのが遅い(変色も薄い)のと、自宅で手洗いできる点が売りです。

バイアス半衿は、衿のカーブに添いやすいように布地を斜めにカットしてつくった合繊半衿。バイアスの伸縮によって衿なじみがよいために、お裁縫が苦手な方でも衿の弛みを防いでくれますから、きれいな半衿姿になります。きもの雑誌のモデルさんたちの衿に多いのがコレ。

どれをお使いになるかは、個人のお好みです。

私もいろいろ使ってきましたけれど、いまだ半衿の決定版は見つかっていません。個人的には絹が好きですが、魅力的な長所をもってしても弱点が大きいのが悩みです。
たまにきものを着るぐらいなら絹半衿でもよいかな、と思いますが、頻繁に着る人は白々とした半衿の不自然さに目をつむりながらも、合繊やバイアス半衿の手入れの簡単さ、耐久性に軍配を上げるでしょう。むずかしいですよね。

……前フリが長くて、なかなか本題に辿り着けませんね。今日、衿の付け方や抜き方の実用話もしたいな、と思っていたのですが次回にさせてください。いつも長文になってしまって、ごめんなさい。

date: 2009年08月28日

subject: へこたれない、タフな長襦袢

from: 佐藤文絵



八月も残すところ数日。本当に蝉が大人しくなりましたね。東北の夏休みを満喫して京都に戻ったら、秋の空に変わっていました。

さておはしょり型の長襦袢なるもの、はじめて耳にしました。仕立てのバリエーションでいえば、広襟の長襦袢を好む方もいらっしゃいますね。私の母は呉服店の強いすすめで広襟の長襦袢を仕立てたそうなのだけど、襟元がふっくらとして収まりがよく、綺麗に着付けられると大満足の様子。試してみたいもののひとつです。

単衣のきものを長襦袢にしてしまうというアイディアもなるほど! 私は昨年、綸子のきれいな無地のきものを長襦袢に仕立て直しました。しっかりとした生地ゆえ、長襦袢としては重いのでしょうけど、気にならない範囲です。とはいえボリューム感はあるから、どちらかというと寒い冬に手がのびます。

長襦袢の生地の種類について植田さんが話してくださいました。私は着たことはないけれど、軽めの一越縮緬や縮緬朱子の長襦袢を見せてもらったことがあります。どちらも滑りにくいから着付けが崩れにくいとの感想。肌触りも柔らかでよいそうです。これもまた試してみたいもののひとつ。夢は膨らみます、どこまでも(笑)。

でも私の長襦袢ライフはまだまだ未熟。数えてみると袷(袖無双)が5枚、単衣が1枚、麻が2枚。けれど似たようなのだったり、これは失敗だったなあと思うものもあり。だから長襦袢を自在に着こなす方には羨望のまなざしを向けてしまいます。きものとの絶妙なコーディネイト、季節を取り入れた色と柄...。ちらり覗くと、はっとします。いつかそんなおしゃれができるようになるのかなあ。

ただ、長襦袢はおしゃれの一部であると同時に、下着としての重要な役割があって、きものを受け止める下地として着付けのしやすさも大事だし、肌触りも大切なポイント。そして生地としての強さが求められます。キレイなだけじゃダメ。前にもお話しましたが、お気に入りの長襦袢を「目裂け」させてしまった経験から、長襦袢はデザイン性と同じくらい、いやそれ以上に機能性が気になっています。

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気づけば、背縫いのお尻のあたりはこの通り(涙)。左はたった一日のお茶会の手伝いでこうなってしまいました。こんなにもろいものだったとは。居敷当を付けなかったことが悔やまれます。


目裂けを発見したときはショックだったけど、考えてみれば、背縫いには相当に大きな力がかかるのですよね。単衣でただ一本縫っているだけなら、縫糸が生地を傷めるのはある意味当然。正座は生地にしてみたら苦行あるいは拷問のようなものだと考えを改めました。基本は、居敷当なり尻当などの対策が必要。


しかし!居敷当がなくともへこたれない、タフな生地もあるのです。多くの呉服店が「居敷当はなくてもこれは大丈夫」と太鼓判を押しているのが、これまで何度か話題にのぼった京都・室町のメーカー「浅見」の長襦袢(5月に単衣・夏用の長襦袢について植田さんが話してくださいました)です。
私は“未来襦袢”シリーズのひとつ「王上布」を数年前から愛用。お茶のお稽古などで酷使しているつもりですが、目裂けの予兆はありません。頼もしいっ。おかげでこればかり袖を通しています。

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左=単衣用に開発された長襦袢地「王上布」です。右=植田さんが紹介してくださった袷の長襦袢も同じく浅見製、生地の名前は「雲路」。つぼだれぼかしの色柄もすてきですね。


でもどうしてこんなに強いのでしょうか。興味津々の浅見さんから、直接お話を伺ってまいりました。

「長襦袢や胴裏・八掛などの裏地は、きものの着方の変化に対応できていないところがありました。昔のきもの姿の写真を見てもらうと、ゆとりを持って着付けているのがわかると思います。今のようなきちっとした、ゆとりのない着付けをすると、生地への負担は大きくなります。
私どもは、とにかく生地として質の高いものを作ろう、という信念でこれまでやってきました。15年ほど前から目裂けしにくい丈夫な生地の開発に取り組み、数年の試行錯誤のすえ出来上がったのが“未来襦袢”シリーズです。
糸の撚りのかけ方、太さ、打ち込み、いくつかの要素の組み合わせで強度が生まれます。玉糸という節のある糸を用いた生地もあります。試織しては強度チェックの繰り返し。ちょっとした匙加減で強くも弱くもなるのです。」


これをひっぱってみてください、と一枚の布を手渡されました。長襦袢や胴裏の見本布が、こんなふうにミシンで縫ってあります。

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左=ミシンで縫われた生地、両端をもって、かなり強い力をかけて引っ張ると…… 右=あるところで「ぱりん!」、糸が切れました。

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左=糸VS布対決、胴裏編。ミシンの縫い穴は多少あいているけれど、生地の勝ち。右=長襦袢(王上布)編、こちらは生地の圧勝です。


なるほど、これだけの力をかけても生地が無傷なら、強いはずです。ホントに強くひっぱりました。不安になるほどに。


浅見さんの長襦袢は、生地のバリエーションでいうと現在5種類。袷用が3種類、単衣用(盛夏にも着る方もおられます)が2種類です。少数精鋭ですよね。正直にいうと「そんなに少ないんだ」と驚いてしまいました。同時に「それだけで勝負しているとは、すごい」と思いました。長襦袢として大切なのは「強度、裾さばきのよさ、着心地のよさ」の3つ、とは浅見さんの談。地紋などのバリエーションを増やすことより、時間をかけて、確実にいいものを作ろうとする真摯な姿勢がしのばれます。すごく真面目なのです。

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単衣〜盛夏用の「菱上布」は微妙な透け感がエレガントな印象。ほどよい張りがあり、着心地が良さそうです。これは是非着てみたい!


柄行きは「ぼかし染め」がメイン。横段・縦縞・市松などの幾何柄や、和歌などの古典をひもときデザイン化した抽象柄を、福井の自社工房で一枚ずつ手染めしているそうです。絵羽ものや、型染、刺繍の入ったものもちらほら。

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どちらも「ぼかし染め」で染められた長襦袢。にくい色合わせですね。左=「おぼろ雲」右=「楓」(写真は浅見株式会社提供)


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淡い色調の多い浅見さんのラインナップ。クールな雰囲気のものも今後期待したいです(さりげなくリクエスト!)。


また現在は、目下洗える長襦袢を研究中とのこと。私はすでに勝手に洗っていますが――。

「撚糸を使っているので、洗うとどうしても縮んでしまいます。王上布は普通に乾かすと全体に細かい皺になりますよね。半渇きの状態で上手にアイロンで伸ばせば別ですが、基本的に多少は寸法が変わるはず。メーカーとして堂々と“洗える”と謳うには、まだ不十分だと思っています。お客さまに安心して洗ってもらうにはどうしたらいいのか、工夫を重ねています。
ちなみに現在販売されている“ウォッシャブル長襦袢”は絹の表面を樹脂加工することで縮まないようにしているものが多いと思います。でもそれは絹をいわば化繊のようにしてしまうということ。私たちは“ウォッシャブル”を添加物なしのすっぴんの絹で実現したいのです。」


おっしゃるとおり、愛用の王上布は、肌触りと寸法を元通りにするには、丁寧なアイロンがけが必須。多少の縮みは誤差の範囲、それより洗いたての気持ちよさを優先、というのが私の気分ですが、さらに扱いやすく進化するなら、なお嬉しいですよね。

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浅見さんの長襦袢には「あさみ」と可愛らしいトレードマークが押印されています。こちらが目印。多くの呉服店で扱っているようなので、お探しの方は、御用達のお店できいてみてください。


【追記】
浅見さんのウェブサイトが完成したとのこと。問い合わせはこちらからお願いいたします。
http://kyoto-asami.com/

date: 2009年08月31日

subject: きものと長襦袢の素材の相性&裄寸法について

from: 樺澤貴子



佐藤さん、浅見さんのレポートをありがとうございます。植田さん、佐藤さんに続いて王上布一門に入門した私としては、布vs糸の実験を心強く読ませていただきました!私が王上布を誂えたのは、3人で出かけた、今年4月の一衣舎さんの展示会でのこと。佐藤さんが「背縫いの目裂け事件」をきっかけに強度のある王上布に辿りつき、その耐久性と心地よさを力説してくださったことが、きっかけとなりました。強度、足さばきのよさ、軽やかな着心地のいずれも大満足で、この夏は快適に過ごす事ができました。

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左:クリーム色・ペールブルー・ペールグリーンのぼかし染めが涼やかな印象です。右:単衣用の生地ですが、撚糸を使っているためサラリとした肌触りで盛夏にも活躍。


さて、ここで一つご報告を。植田さんが紹介してくださった「に志田」の西田郁子さんが愛用している「おはしょり型長襦袢」を、私もオーダーしてみました!というのも、ちょうど悉皆屋さんに預けている袷用の長襦袢の反物があり、まだハサミを入れていないとのことだったので、かなりタイムリーだったのです。悉皆屋さんと電話で話していたら、以下のことがわかりましたので、追加でレポートさせていただきます。

1.着丈寸法は想像よりも短めでした
私のきものの着丈は4尺1寸5分。おはしょり型の長襦袢はきものより少しだけ短めの着丈にするとおっしゃっていたので、イメージとしては4尺くらいと想像していました。ところが、悉皆屋さんが提案してくださった寸法は「樺澤さんなら3尺7寸〜8寸でいいでしょう」と即答。私の場合、対丈の長襦袢の着丈が3尺4寸5分なので、「おはしょり型長襦袢」の寸法は、ちょうどきものの着丈と対丈の長襦袢の着丈の中間ということになります。意外にも短いのですね。考えてみると、長襦袢のおはしょりは単純にクッションの役目なので、おはしょりは短くてもかまわないわけだと納得しました。

2.衿の形状は関東衿が一般的
着丈の件で、不意をつかれた後に「衿の形はどうしますか?」と聞かれて、しばしフリーズ(しまった、そこまでは植田さんに伺っていなかった・・・)。どのような違いがあるのか伺うと「関東衿のほうが、衿先のもたつきがなくスッキリとします。芸者さんをはじめ、おはしょり型の長襦袢を誂える方は、ほとんど関東衿にされる方が多いですね」とのことでした。それは関東で注文したからでしょうか?植田さん、しつこいようですが、西田郁子さんの衿は関西型か関東型か、機会がありましたら聞いてみていただけますでしょうか。普段の長襦袢は関西衿なので、一抹の不安を感じたものの、関東衿を一度試してみることにしました。

「おはしょり型長襦袢」の着心地のほどは、いずれご報告させていただきます!
本題に入る前に、もう一つご報告を。7月に秋月さんの取材で一目惚れして衝動的にオーダーをしてしまった竪畦の無地の絹紅梅が仕立て上がってきました。

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私がオーダーしたのは、焦げ茶色。畦の部分(綿糸)がブルーグレーのような色で、焦げ茶×グレーのバランスが絶妙です。三勝さんで、一枚から染めてくださるようです。


お盆前に仕立てあがってきたのですが、なかなかお披露目する機会がなく、8月末の小唄の稽古にて滑り込みセーフで袖を通しました。

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はじめて袖を通すきものを、あれこれコーディネートしてみるのは楽しいことです。絹紅梅で小唄の稽古というカジュアルなシチュエーションだったので、足元は白木の舟形の下駄を合わせることに。
左:以前もご紹介した羽織から仕立て替えた柳柄の絽の付け帯。晩夏らしく臙脂色の帯締めを合わせて。
右:大叔母から譲られた楓柄の紗の名古屋帯。私の手元に来た時には帯芯が黴ていたためブルーグレーの紗が全体にくすんでいました。表地を洗い帯芯を替えたら、シャッキリと色味が映えて魅力的に蘇りました。帯の長さが若干短めだったので、ついでに付け帯に仕立て替えました。スモーキーな色の帯を引き締めるために、帯締めに松葉色を合わせて。
どちらのコーディネートにしようか迷いましたが、実際は右のコーディネートで出かけました。


さて、ここからが本題です。
初めて絹紅梅を纏ってみて違和感を感じたのが、長襦袢との相性です。以前、植田さんが書いてくださいましたが、一般的には織りのきものには麻や海島綿の長襦袢を合わせますよね。私はそれらを持っていないため、いつもの王上布の襦袢を合わせました。すると、こんな現象が・・・↓

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左:袂の内側で長襦袢が滑り、片寄っているのが丸見えです。右:腕を下げたときにも、きものと襦袢が寄り添わず分離してしまいます。


多少は予測をしていたものの、実際に着付けてみたら想像以上の違和感でした。小千谷上布の時には気にならなかったのに・・・。その違いを分析してみると、まず一つは、小千谷上布と絹紅梅の透け感の違いが言えます。蝉の羽にも例えられる絹紅梅は、下に着るものに十分に配慮しなければならないということを実感しました。二つ目に、生地のハリ加減の違いがあげられます。私の持っている小千谷上布はおさがりということもあり、生地がしなやかになっています。それに対して、新調したばかりの絹紅梅のハリ感がこれほどまでに強いとは・・・絹紅梅初体験の私としては想定外でした。もっと恥ずかしいことは、手の動きによって長襦袢が袖口から顔を出してしまうことです。例えば両手でバッグを持つなど手を前に組むと、絹紅梅はピンと張り、長襦袢はストンと落ちるため、袖口からチラ見えしてしまったのです。

絹紅梅愛用者である秋月さんは、どんな長襦袢を合わせているのかを伺ったところ、生地のハリ感が近いという理由から麻の長襦袢を合わせているそうです。私が袖口から長襦袢が顔を出した話をすると、秋月さんの長襦袢の裄寸法について興味深いお話が伺えました。

「長襦袢の裄はきものの裄のマイナス1分が一般的ですよね。でも、私の場合はマイナス2分にしています。というのは、きものをきちんと着付けたつもりでも、動いているうちに背中心がほんのわずかズレることがあります。例えば、背中心が少し左にズレると、左の袖が長く、右の袖が短くなります。その場合、1分の差ではまかなえず、どちらかの長襦袢が出てきてしまうということを何度か体験しました。きものも長襦袢もきちんと自分サイズで誂えているのに、何故かしら?と思っていたのですが、原因は背中心のズレにあるとわかりました。特にお茶の稽古など立ち居を繰り返すと、背中心のズレは防ぎようのないこと。そこで、長襦袢の裄はきものの裄のマイナス2分という結論に至ったわけです」

なるほど。このお話は目鱗でした。着付けの際、そして動いていて背中心がどのくらいズレるのか?それによって長襦袢がどのように影響するか?これから少し意識をしてみようと思います。来夏に向けて麻の長襦袢も誂えなくちゃ・・・。長襦袢との相性の点では、ほろ苦い体験をしましたが、絹紅梅の着心地は抜群でした。一番の魅力は軽いこと!ただ、おろしたてということもありますが、着付けにはてこずりました。絹紅梅をすっきりと着るために工夫した着付けのコツは、時季ハズレですが2月の着付けの項目にてお話できればと思います。

さて、8月も今日限り。例年であれば夏の終わりには、なんともいえない感傷を覚えるのですが、今年は不安定な天気が続いたため、ちょっと拍子抜けです。気を取り直して明日からは、9月。次のテーマは、帯と帯まわりの小物のお話です。帯の種類、シーンに応じた結び方、帯揚げや帯締めの選び方のコツなど、3人3様のスタイルをお届けします。

date: 2009年09月01日

subject: 長襦袢の衿について・その2

from: 植田伊津子



今月のテーマは「帯と帯まわり」ですが、ひとまずそれは横に置いておいて、先月のテーマの続き「長襦袢の半衿のつけ方」「衣紋の抜き方」などについて考えてみたいと思います。

半衿のつけ方は、さまざまなきもの本に紹介されていますよね。私も誰かに教わったことはなく、いろんな本で研究しました。
針仕事が大好きな私でも、半衿をつけるのはじつに億劫で、毎度毎度面倒くさいなーと思っています。

とはいうものの、いろんなきもの本で見かけた「安全ピンで半衿をつける」「両面テープで半衿をつける」などの裏技に関しては、「安全ピンの穴が布地に開くとイヤだなあ」とか、「両面テープを布にくっつけるのは抵抗が……」などの個人的な好みで、残念ながらおこなったことがありません。

伯母から譲られた「きもの英」の洗える長襦袢は、合繊の半衿をつけたまま洗濯機で洗えますので、とても便利。日頃は、こういったものも上手に利用するわけです。

けれど絹の長襦袢の肌合いが好きで、それには絹の半衿をつけたいというこだわりもありますから、「手抜き部分」と「きちんとしたい部分」のはざまで、「いかに要領よく手間を省きながら、きちっと見えるように半衿をつけるか」について、ずっと考えています。

そこで、今日は私の半衿つけのポイントを紹介したいと思います。どれも当たり前すぎて、「そんなの当然じゃないですか」って思われるかもしれませんが、当たり前のことを自分で納得できるようになるまで、私はけっこう時間がかかったのでした。


1、半衿をつけるときは指ぬきをして、衿つけに適った針を用意する
私の場合、日頃の生活の中で、いちばん厚い布を縫うのは「半衿つけ」のとき。堅い布は、もっともくたびれるし、時間がかかるんですね。
でも指ぬきを利用したら、針のお尻を指抜きで押せますから、かなり負担減になります。指ぬきの使い方をご存じない方は、Webで「指ぬき」「使い方」などの語を入れて検索をしたら出ていますから、ご自身で調べてみてください。指ぬきは、革でも金属でもお好きなのをどうぞ。

また、衿つけに適った針を使うのもポイント。ふつうの手芸用の細い長針などは、衿芯の強さに負けて、針が折れたりします。また短かすぎる針もやりにくいでしょう。
ちなみに、指ぬきをしないで、針箱にあるテキトーな針で縫っていたときは、私は衿つけに1時間以上もかかり、異常に指に針を刺していました。そうしたら半衿に血がついてしまって、涙が出そうになったことも。準備はやっぱり大切なわけです。

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私が半衿つけに使っている針と指ぬき。針は半衿つけによいといわれている「つむぎえりしめ」を使用しています。鹿の革のものは和裁専用。


2、アイロンをかならず使う
幅10cmに整えた衿芯に合わせて、半衿の余分を折るときなど、そのたびごとにアイロンを使えばいいかげんに折って縫うより時間が軽減。片方を縫ったらアイロン、もう片方を縫ったらまたアイロン、というくらい、ちょこちょこ使ってみてください。半衿をつけるために裁縫道具を出したら、アイロンも用意するのが私の習慣になりました。

3、長襦袢に半衿をつけるときは一気に縫わない。2回にわける
半衿を長襦袢につけるとき、背中心から左右にまち針を順に打って仮どめしますよね。
本縫いをする場合も、まず左側を縫い終えたら右側というように、背中心から二度にわけて縫います。これが半衿つけの第一のコツだと思います。左右を二度にわけて縫うと、当然ピシッとします。糸がもつれませんし、ゆがみやたるみも出にくいからですね。

4、ツリ気味に縫うところが2ヶ所ある
背中心から左右10センチぐらい(衿肩あきのところ)だけツリ気味に縫います。これが第二のコツ。内側のカーブのたるみをなるべくつくらないためにです。ツリ気味に、というのがむずかしいかもしれません。

これらの説明写真は、『手ほどき七緒 永久保存版 大久保信子さんの着付けのヒミツ』(プレジデントムック)にわかりやすく紹介されていますし、他のきもの本やWebでも見つけることができると思います。

『大久保信子さんの着付けのヒミツ』では、「差し込み式の衿芯をあとから入れるときの半衿のつけ方」と「三河芯を用いた半衿のつけ方」の2つの方法をていねいに解説。両方のやり方を載せているところが、私も参考になりました。

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ベテランの大久保さんが、着付けにまつわるあらゆる疑問に答える本書。私は、知り合いのきもの初心者さんたちに本書をオススメしています。


洗える長襦袢につける衿芯について
※洗える長襦袢では、衿芯と半衿(これも洗えるタイプ)を一度つけたら、そのまま繰り返し洗いをしている超ズボラな私。
その場合、繰り返し洗いすることを見込んでますから、これの半衿つけは絹半衿よりもかなりきっちりと縫いつけます(絹半衿は数回着用したら外して洗いますから、およそ大きな縫い目でOK)。

そのとき、新しい衿芯なら「長襦袢につける前に水通しをして、縮ませるだけ縮ませておく」ほうがよいと思います。
水に通すと、ふつうの綿の衿芯は少々縮むんですね。縮んでうねうねとなったり、洗える半衿との釣り合いが狂ったら、もう一度衿芯からつけ直さなくてはいけません。合繊衿芯ならそんなことはないんですけれどね。




[衣紋を抜く]
シャツのように衿を立てぎみにして、衣紋を抜かないのが好みの方もおられますが、私は標準的に衣紋を抜いて着ています。衣紋を抜くと、なで肩効果によって肩幅を狭く感じますから、着姿がきれいに見えるんですね。また多少抜いた着方のほうが、首筋に風が通って涼しいのです。

ただし、あまり抜きすぎると品がよくないんですね。昔からいわれているように、こぶしひとつ分ぐらいが適当。それでイカリ肩の人も肩のラインがなだらかになって、首がスッと伸びて見えるような気がします。
ところが、着付けたときにきれいに衣紋を抜いても、正座をして御礼をする動作を繰り返したりしていたら、自然に衿が詰まってきます。それが私の悩みでした。
既製の「衣紋抜き」も、もちろん試したんですよ。これは長襦袢の後ろにつける布で、紐通しに紐を通して後ろの衿の位置を固定するもの。ところが、それでも思ったほど症状は改善されません。

あるとき、京都在住の着付師・山崎真紀さんに会ったときに、どうしたらよいかを尋ねてみました。山崎さんはおもに関西で活躍されている人気の着付師さんで、某有名メーカーのきものパンフレットのお仕事を一手に引き受けたりしています。
「長襦袢の背に直接、紐を縫いつけるほうが確実よ」とのことでしたので、以後、それを実践しています。衣紋抜きよりもしっかりと固定されるようになりましたね。

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左=半衿の根元(背中心)から22cm下がったところに、紐を縫いつけています。縫いつける面積が広いとU字型に衿が抜けます。反対に面積が狭いと、V字型に抜けます。
右=市販のモスリンの腰紐を利用してもよいわけですが、私は「きもの英」で売っている合繊の紐をつけています。こちらでは、この紐を別売りしていて、「衿先につける用」と「背につける用」が一組で300円ほど。モスリンより薄地でしなやかなので、紐がかさばりません。自宅洗いをしている絹の襦袢や王上布(ともに浅見)、きもの英の襦袢には、この洗える紐をつけています。



[衿のゆるみを直せる『力布』をつけておく]
お茶のお稽古などをしていると、胸元に帛紗や懐紙を挟んで、それを何回も出し入れしますから、胸元がゆるみやすいのです。
そのため、私はどの長襦袢にも、衿先に10×20cmぐらいの力布をつけています(衿芯に縫いつけます)。さらしなどが具合よいですね。お手洗いに立ったときに、胸に手を当てて不必要に引きすぎないようにしながらこの布を引くと、胸元のゆるみがすぐに修正できます。

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力布は手ぬぐいを切ったものでもかまいません。ただし、薄色のきものを着たときに、手ぬぐいの柄が透けないように注意。ざくざくと簡単に縫うだけです。



[差し込み式の衿芯]
私は衿芯の種類にも並々ならぬ興味を抱く人間で、これで一回分の原稿が書けるほどなのですが、それはまた別の機会にお話しすることにしましょう。
今回は、衿の裏側に衿芯が差し込めないかたちの長襦袢に、衿芯を差し込む方法をご紹介します。

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左=私の衿芯入れ。衿芯は巻いて保存しておくと折れシワがつきません。
右=くっきりと固めに衿を仕上げたいときはポリエチレン(右上)、夏のきものなどやわらかめに仕上げたいときはメッシュ(右下)、帯芯を2枚接着してつくった自家製。メッシュよりも弱めだから、きわめて自然な仕上がりに(左下)、ポリエチレンよりも弱く、メッシュより強めの味わいが欲しいときには半透明(左上)。カーブのあるものやないものなど、いろいろ集めています。



私が持っている長襦袢の中に、広衿なのだけれど、裏側を衿先まで縫いとめたものがあります。お古の長襦袢はだいたいこのタイプ。これはけっして特別な長襦袢というわけではなく、他でもよく見かけるかたちでした。下の写真をご覧いただくとわかるように、裏側の幅が狭いので、通常の差し込み式の衿芯が入りません。
差し込み式の衿芯は、ふつうは衿の裏側に入れるものですが、私は仕方なくずっと表側に入れていました。

あるとき、婦人画報のきもののコーディネートなどで活躍されていた伊砂由美子さんに「そういう場合は、衿芯を切って使うのよ」と教わりました。このときの驚きといったら、もう! そういう発想が私の頭にはありませんでした。
これって、当たり前に知られていることだったのでしょうか。皆さんはご存じでしたか?

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左=問題の長襦袢に半衿をつけたところ。裏はこのように狭いのです。
右=差し込み式の衿芯は、幅が太くて裏側には入れられないと思っていました。表側に入れると、半衿に衿芯の影がうつっていました。伊砂さんから教わった方法は下の通り。


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左=衿芯の中心をとり、長襦袢の背中心に合わせます(わかりやすいようにマジックで印をつけています)。
右=衿芯に長襦袢の衿の幅を書き写します。だいたいでOK。


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左=先ほどのラインの内側をハサミでカット。
右=このとおり衿芯と半衿の幅がそろいました。


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左=ここがポイント。カットした衿芯は半衿の「表側」(幅の広いほう)から入れるのです。
右=そして途中から裏側へ入れ直してください。写真のようにねじるような感じになるはず。


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裏側に見事におさまりました!。



以上、ざっと駆け足で半衿の周辺についてお話ししてきました。
もっと詳しくいい始めると私はとまらないわけですが、それははたして「どーでもよい」話ばかりだったりもするので、今日はこれぐらいにしておきたいと思います。

次回は、佐藤さんが今月のテーマでもある帯の話をはじめてくださるでしょう。楽しみですね。

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