date: 2009年04月02日

subject: 雨の日のお洒落

from: 樺澤貴子



3人のおしゃべりが始まって、あっという間の1ヶ月。今月は、「きものの脇役」について語り合いましょう。コートや羽織、草履から足袋まで・・・・・・。きものの装いにツウなお洒落の表情をプラスしてくれると同時に、実用的なアイテムでもあるため、より一層の個性や各々のこだわりが表れるのでは?と、想像しています。

さて、今日は雨の日のお洒落についてお話したいと思います。せっかくきもので出かけようと思っても、雨模様だと、やむなくきものの着用を諦めてしまうこともあります。でも、心躍る雨ゴートがあれば、重い腰もあがるというもの。と言ったものの、私見ですが雨ゴート地として販売されているものには、なぜか魅力的なものがありません。私が東奔西走のすえに見つけたのは、傘のモチーフを織った古いコート地の反物です。子供っぽすぎない傘のシルエットといい、紺×臙脂の色合いといい、きものを取り扱う骨董品店で思わず一目惚れして、即決で購入したものです。

ただし、問題は仕立て。きものを着始めてまもない頃だったゆえ、コートの形をお任せしたら最もオーソドックスな道行襟に仕立てられてしまいました。襟の形だけでなく、どうやら寸法も私には合っていなかったらしく、数年前、お気に入りのコートを自慢しようとルンルン気分で出かけたとき、「道行襟が大きすぎない?老けて見えるわよ」と、植田さんに言われた言葉は忘れませぬ(恨み言ではありませんからね、笑)。仕立て寸法に対しての知識が浅かったこともありますが、襟元のあき具合や形で印象がそれほどまでに変わるという認識がなかったのです。おふたりは、襟の形や寸法をどのようにお考えですか?

090402-1.jpg
胴裏にはコート地と同色ではなく、あえてオリーブグリーンの色にこだわりました。


そして、雨の日のお洒落を楽しくする小物のひとつが履物です。私は傘の模様の色をとって、臙脂の雨草履と時雨下駄の2足を揃え、TPOによって履き分けています。雨下駄は利休(利久)下駄よりも歯が厚く安定感のある時雨下駄を愛用。泥はね防止に後歯が少し内側に削られていることもポイントです。下駄につける爪皮は無地のものでなく、うずまきの柄のものを選びました。コートが傘、足元が水紋。柄行きの組み合わせにストーリーをもたせて装うことは、きものならではの楽しみ。気軽なおでかけの時や履物を脱ぐことがわかっている時には、雨用の履物だけで出かけますが、レストランや観劇のときなどは、履き替えの草履を持っていきます。荷物が多くなることはもちろん覚悟のうえ、これも私の小さなこだわりです。

090402-2.jpg
雨下駄と爪皮は浅草の楽艸で誂えたもの。雨草履は銀座小松屋で求めました。


ちなみに、またもやバッグネタで恐縮ですが、雨の日に便利なのはロンシャンのトートバッグ。ファスナーで口が閉じるため雨が入らずにすみます。また、コンパクトに畳んで収納できることから、行き帰りに別のバッグの中に仕込ませておき、着いた先で雨ゴートや雨草履などをまとめて入れておくのに重宝しています。また、ポップなドット柄のバッグも、水玉を雨に見立て、雨の日にテンションをあげてくれる小道具のひとつ。さらに、傘に至っては、和傘のような表情にも感じられる、前原光榮商店の16本骨の傘を愛用。雨の日には、気持ちを後押ししてくれるアイテムを総動員!それでもテンションのあがらない時の必殺技として、私には憂鬱な雨の日に必ず開く本があります。それが、各地方に伝わる情緒たっぷりの雨名が記されている『雨の名前』(高橋順子著、小学館)です。その日の雨模様にぴったりの名前を自分なりに決めて、気持ちを最後にもう一押し。

おふたりの雨仕度には、どのような工夫がありますか?

090402-3.jpg090402-4.jpg
左:揃いのミニバッグは履き替え用の草履が納まるジャストなサイズ。右:ポップなドット柄のバッグは、小さく見えて意外に大容量。折り畳みの傘なども納まります。

date: 2009年04月04日

subject: 羽織りものの寸法は大切

from: 植田伊津子



雨ゴートをはじめ、羽織、道行、道中着などの「羽織りもの」は、どうしても後回しになりがちなアイテムですが、着こなしの重要なポイントです。

私も最初はきものと帯のコーディネートだけに目が向きがちで、実際に外出する段になって「羽織るものがない」と焦ったものでした。当時は、仕方なくお下がりの道行を着て出かけていました。
けれど、お古の道行は裄が短く、チラチラときものが袖口からのぞいて、柄・色とも多少の古くささもあって、自分寸法に合わせた羽織りものをつくるのは急務でした。またきものを着る機会が増えるに連れて「雨ゴートも至急につくらないと外出できない」と気が揉めました。

ちまたの雨ゴートを見渡してみたら、「アップルコート」というポリエステル製で仕立て上がったものが人気でした。値段も手頃だったので、購入するつもりで試着しましたが、結局断念。

というのも、私はきものを着始めてからずっと「痩せて見えるきもの姿」を研究していて、着付け方も着尺を選ぶときも、いつもそれを意識しているのです。その私にとって、アップルコートは太って見えるコートでした。
考えてみれば当たり前です。仕立て上がりのアップルコートは、万人受けする許容範囲の広いサイズ設定なのですから。

「羽織りもの」は、おそらく想像以上に人の印象に残るアイテムです。きものをすっきりと着ていたとしても、羽織りものの寸法がジャストフィットでなければ元も子もありません。
サイズもベストで、なおかつしゃれたものを着ていたら、それだけで中身のきものが底上げされる効果がありますから、上着はきもの以上に非常に大切だと私は考えています。いわば、中が程々であっても、羽織りものさえよければ、他人は中身すべてを「よいものに違いない」と誤解してくれるものなのです。

その結果、私は自分を実験台にしながら、道行や道中着、雨コートを、これまでいろいろとつくってみました。今日は私の羽織りものづくりのポイントを話しましょう。色柄・素材についても一言居士の私ですが、とくに最重視している寸法のお話をまずさせてください。


1、身幅のサイズはかなり重要
先ほども話しましたように、きもの以上に上着のサイズに敏感でなければ、かなり太って見えます。上着こそ誂えてください。
ところで、道行・道中着・雨ゴートにしても、おそらくきものの寸法を元にして上着の仕立て寸法を割り出すはずですが、私の印象ではどこの呉服屋、仕立て屋も、少しゆとりが多いのです。

はじめてつくるときは、できたらきものを着た状態で、仮縫いのステップで羽織らせてもらうほうがよいでしょう。ただ立って鏡を見るだけではなく、かがんだり、椅子に座ったりもして余裕を見てください。とくに前身幅がブカブカしていないか、要チェックです(私は前身幅をよく手直ししました)。
道中着も前身幅が大きいと、結び紐をきつく締めますから、ちょうど両肩辺りから下にシワが寄ってきれいに見えません。


2、衿のかたち選び、寸法を見極める
最近は森田空美さんの著書に掲載されている矢羽根型の道行衿の方をよく見ますが、昔からある四角い道行衿もかわいらしい風情があるものです。矢羽根型は、顔をスマートに見せてくれますので、卵形や丸い顔立ちの方におすすめです。しかし、あごがとがり気味の方は、四角い道行衿のほうが全体がやさしい雰囲気になると思います。

けれど、それ以上に大切なのは衿の窓寸法です。これもふつうは自動的に割り出されるものですが、それを疑ってみてください。知り合いや身内の道行を羽織らせてもらって、自分に合った窓のタテ寸法(立衿下り)を見極めてください。きものを着たとき、衿を抜き気味に着付ける方とツメ気味に着付ける方では、その方が道行を羽織ったときに同じ立衿下り(たとえば肩から6寸5分)の寸法だとしたら、着たときの窓の大きさは8分(3cm)ほど違っていることもめずらしくありません。
きものはおはしょりなどで着方の微調整ができますが、上着は肩と衿の抜き具合だけでシルエットが決まります。着方とサイズは連動するものなのです。

窓が浅いと、若々しく、幼い印象となります(たとえていうならば、下写真の右)。窓が下がると、お姉さんらしい洒脱な印象(下写真の左)。
Vネックのセーターを考えてみても、すっきりと痩せて見えるのはほんの少しだけ下げぎみの寸法ですが、この案配がむずかしい。下げすぎると、老けて、だらしなく見えます。これは千代田衿でも同様のことがいえます。

090404_1.jpg
右の霰小紋と左の御召の道行とは、衿の開き具合が8分(3.1cm)違います。ふたつを着くらべてみると、与える印象がずいぶん異なります。自分としては、御召の道行(左)の衿の開きは、これがギリギリ品が悪くならないところ。あと3分(1cm)ほど詰めたほうが、40代前半の私には合っているかもしれません。私は、ここ数年、きものの衿を比較的きちんと抜いた着付け方に変わってきました。


3、着丈の寸法
フルレングスの長着の雨ゴートは別として、道行や道中着は、数年前からの長羽織の流行の影響なのか、長めの丈が定着してきました。着丈もさまざまにお好みがあるでしょうが、必ずいつもの草履を履いた上で、丈を決めるほうがよいでしょう。草履を履かないと3〜5cmの誤差が出るのです。
小柄な方のコート丈が長いと寸詰まりな感じになりますが、高めの草履がお好みで、いつもそれを愛用されているのでしたら、一概に長いとはいえません。

また明度彩度の低い濃色の道行は、とくに着丈に敏感でありたいものです。淡色系上着よりも、丈のバランスが合っていないことが傍目によくわかります。これも知り合いや身内などのさまざまの道行を羽織らせてもらって、比較検討するのがベストです。呉服屋で「だいたいこれぐらいの長さかしら」というのは危ないですね。


羽織りものの色や柄、素材については、ぜひ次回にお話ししましょう。薄物コートや袷のコートの使い分けについても。私は少し変わったかたちのおはしょり型雨ゴート、二部式雨ゴートも使っていますから、それも話題に上げたいものです。

樺澤さんの雨ゴートを見て、ついつい正直に口をすべらせてしまったのは、あの当時から私はヨソ様の羽織りものに対し、異常に観察するクセがあったからでした。ごめんなさい。
ぜひ、もう一度お召しになったところをゆっくり拝見したいものです。いったんつくった衿の深さを浅くすることはできませんが、中のきものの衿の抜き方を工夫すれば、道行の衿の印象をカバーする方法があります。それに身幅が合ってないようなら、これは直せますから。

雨用草履、ふつうの履物全般、足袋などについても取り上げたいですが、それらはこれから追い追い触れていきたいと思います。


えーっと、コメントをいただくと3人ともたいそうな喜びようです。たくさんの方がこのブログをお読みくださっていることに驚いている私たちですが、コメントを通して皆さんがどのように感じていらっしゃるのか、新鮮に受け止めています。

date: 2009年04月05日

subject: 羽織りものの寸法・追記

from: 植田伊津子



付け加えてひと言。
茶道できものを着ることの多い方は、立ち姿より正座したときを考慮して、前・後ろとも幅を標準よりも多少広めにとって、きものを仕立てておいでかもしれません。
そういう方はなおさら、ふつうに呉服屋にお任せしていたら、ほぼ100パーセントといってよいほど上着のサイズが大きくなりがちだと思います。

昔、サイズだけをお知らせして、きものを仕立ててもらったことのある和裁の方と実際にお目にかかったときに、私を見て驚いた表情をして「どんな大きな方かと思っていましたが、『ふつう』の体型なんですね」と言われたことがありました。

幅をとってつくっても、それは用途からの要望であって、かならずしも体型とリンクするわけではない場合がありますね。残念ながら、呉服屋はそういう細かなところを発注をする和裁士に伝達してくれないので、あとで手直しが必要となってくるのでしょう。

もしこの文章をお読みになっている呉服屋さんがいらしたら、そういう部分にも心配りをし、ひとこと確認をとってくださるとありがたいな、と思います。

date: 2009年04月06日

subject: まず必要な羽織もの

from: 佐藤文絵



樺澤さんの雨の日アイディア、なるほどなあと思いました。バッグは雨の日にと特に用意せず済ましてきましたが、傘や雨コートの色と合わせて、ぜひ何かナイロン製のバッグを見つけたいです。うきうきする色がいいですね。わたしはHerve Chapelierへ探しにゆこうと思いました。良さそうなものが見つかりそうな予感がします。

植田さんの羽織ものへのこだわり、大変勉強になります。まだまだ続きそうだから(わくわく...)、しばらく耳を傾けていたいところ。でもまずは私も羽織りものについて思うところをお話しますね。

「このブログについて」のなかで“じっと上の2人を観察して賢い選択をする三女の佐藤文絵”とあるとおり(これを書いてくれたのは植田さんです)、きものを誂える際、私はまずいろんな人のものをじぃぃと観察して、だいぶ悩んでからGOサイン、というのがだいたいのパターンです。
なかでも羽織ものについては用心していました。なぜかというと、きものほど数を持てないし、着まわしの効くものをつくらねば、と考えたから。そしてまた、ぴんとくるものが見当たらないと、火急必要でも妥協しないという頑固者ゆえ、羽織ものはなかなか手強いアイテムでした。

結論からいうと、そんな私がいま持っている羽織ものは、この3枚。
(1)ちりめんの長羽織(八分丈)
(2)黒の道行(七分丈)
(3)単衣仕立ての雨コート兼ちりよけ(フルレングス)

以上です。すくないのです。
でもこの3枚で当面はなんとかなるかなあと思っています。夏用の透ける素材の雨コートは次の候補だけど、それ以上は“必要”ではなく“おしゃれの範疇”。
それぞれの役割をいうと、まず(1)長羽織はカジュアル、(2)道行はフォーマルまで。この2枚は色も素材も「暖かい」雰囲気ゆえ冬向きです。(3)雨コート兼ちりよけは雨の日は当然として、春・秋の何か羽織りたいときに、という具合。洋服に例えるなら、抜け感のあるコート、きちっとしたコート、トレンチコート、という感じでしょうか。

必要最小限の羽織ものについて、ぜひおふたりの意見もおききしたいです。「まず羽織ものは何を揃えたらよいでしょう」と初心者から訊かれたら、どんなふうにアドバイスされますか?

090406_1.jpg090406_2.jpg
左=適応範囲ができるだけ広く、でも無難すぎないほうがいい、そんなことを思いながら探した一枚。きものがシンプルな私にはこんな大柄の文様が良かったようです。
右=こちらは無難ながらも生地自体が面白く、いい存在感のある道行になりました。


植田さんが投げかけてくれたことでいうと、仕立ては確かにすごく悩ましい。
まず道行にするか道中着にするか、そして衿の形。選択肢がいろいろありますね。どの衿がいちばん素敵だろうとだいぶ悩みました。最もオーソドックスなのは四角い道行衿と思いますが、どうも私は、特にきもの初心者の頃、きものの衿元が四角く額縁のように切り取られている感じが好きになれなかったのです。その思いをひきずって、道行・雨コートともに「矢羽根型」を選びました。きものの衿合わせと違和感なく馴染むように感じています。でも広衿の道中着衿も捨てがたい。まあこれは人それぞれの顔うつりと好みということになりましょうか。窓の大きさの重要性については、なるほど、合点しました。

そして大事なシルエット。これはもう一枚目では自分ではどうにも分からない。とにかく信頼できる呉服店の方にしっかりみてもらって、仮縫いで確認&調整してもらい、誂えました。仕立あがったばかりの雨コートですが、どんなふうに裾つぼまりになっているのか、平面に置いた状態で確認してみました。腰のあたりと裾を比べれば、身幅にして1寸は違います。胸のあたりと裾ならば、もっと違います。このあたりも植田さんのご意見をききたいところ。でもますます細かーい話になってしまって恐縮です。

090406_3.jpg090406_4.jpg
左=裾を胸のあたりまで折り上げたところ。これだけ裾つぼまりな仕立てになっています。
右=身幅を測るのが私はちょっと好きです。呉服店のこだわりで、何もいわずとも裾つぼまりになっていたり、全くまっすぐだったり、いろいろです。どんな仕立がいちばん気持ちいいのだろう?いかほどの身幅がちょうどよい?と手当たり次第測ったことがあります。結局のところ、さまざまなパターンがあり、頭がごちゃごちゃになりました。結論いまだ出ずです(涙)。


さて...だいぶ長くなってきました。
雨支度まで辿りつけませんでした。雨の話題はまた改めて、させてくださいー。

date: 2009年04月07日

subject: 仕立てのいらないコート

from: 樺澤貴子



植田さんのお仕立て寸法論、勉強になりました。
研究熱心な長女に、じっくり検討する三女。好奇心旺盛で考えるよりも行動が先にたってしまう次女としては反省しきり。窓のタテ寸法が長めの私の雨ゴートは、植田さんの仰る衿の抜き加減で調整できる方法を考えてみます。どうぞご教授くださいませ。

佐藤さんの「矢羽根型」の衿のコート、素敵ですね。最初にお会いしたときに、御召しになっていたのが、とても印象にのこっています。その時には着丈を少し短くしたいと仰っていましたが、その後仕立て直しをしたのですか?

さて、仕立てについての薀蓄がなく、さらに人から見たこと、聞いたことをすぐに試してみたくなる私としては、今日は<仕立てのいらないコート>の話をしたいと思います。これは以前、『きものサロン』のお仕事でご一緒していた笹島寿美先生のアイディアです。ある日打ち合わせに見えた先生が、とても素敵な道中着風のコートをお召しだったので、お尋ねしたところ、「これね(笑)・・・古いウールのきものなのよ」とのこと。言われてよく見ると、道中着のようにサイドで結ぶ紐がなく、どうやって留まっているのかよくわからない。茶目っ気たっぷりに、目の前でコートを脱いでくださり仕掛けを明かしてくれました。

きものの状態から何も手を加えていないため、もちろん衿は広衿のまま。きものを着るときのように衿先に向かって広くなるようにして二つに折り、下に着ているきものに添って重ねます。続いて、きものの裾が見えないように裾線を決め、帯の胴前の下線のあたりで腰紐で結びます。そのままおはしょりを整え、腰紐に巻き込むように内側に折り込むだけ。いとも簡単にきものがコートへと早代わり!笹島先生は確か銀鼠地のやや光沢のあるウール地をお召しでした。絹に比べ、ウール地は水滴がしみこみにくいため、少々の雨の時にも、このコートでお出かけだとか。

「面白い!」と思った私は、早速試してみました。ウールのきものは持っていないので、安価で手に入れ全く袖をとおさなくなった十日町紬をチョイス。これが案外、容易に形が決まりやすく、すっきりとした着姿になるのです。下に着ているきものに添わせて着るため、身幅がぶくぶくになることもなく、裾つぼまりのラインとなるので、フルレングスでも重たく見えません。まだ、数回しかためしていませんが、これはなかなか使えます。ただし、コートのように颯爽と羽織れないため、外出先によっては脱ぎ着に手間取るのでご注意を。私はお茶のお稽古に行く際に試しましたが、コートを畳む場所も姿見も確保されている場所だからこそ安心して着て行けたのだと思います。

090407-1.jpg
松葉色のドット柄の十日町紬。グリーンの個性的な色とポップな柄行きに惹かれて購入したものの、着ていくシーンに恵まれず二軍落ちしながらも、今ではコートとして日の目を見ています?!


さらに、これを応用して箪笥の肥やしと化していた川越唐桟のきものを、水屋着に代用してみました。私の持っている水屋着は8分丈の縞柄の割烹着。二部式ではないため、畳拭きをする際に、きものの裾までカバーできていないのが気になっていました。別に腰巻を買うことも考えましたが、売っているものは気に入ったものがなく、自分で作ろうと思いながらも伸ばし伸ばしに。川越唐桟には居敷当てをつけていなかったので、羽織るときに滑りが悪くて着付けにくかったのですが、利便性は抜群。お稽古仲間にも「ナイスアイディア!」と重宝されました。

090407-2.jpg
「木綿のきものって可愛いかも」というイメージだけで誂えたものの、全く似合わず二軍どころか三軍落ち。居敷当てをつけて改善を重ねてしばらくは水屋着として活躍しそう。



最後に、佐藤さんによるご質問「初心者の方へのアドバイスとして、まず揃えるべき羽織ものとは?」ですが、私でしたら春・秋・冬の3シーズン着られる道行コートをおすすめします。突発的な思いつき&マイブームによる買い物を重ねてきた私としては、必要最小限で登場率の高いアイテムを最初に揃えることができたら・・・・・・としみじみ箪笥の中身に溜息をつくことが。またもや、仕立てとは無縁のお話になってしまいました。これから、おふたりの話に耳を傾け、次なる羽織ものを誂える参考にさせていただきます。

date: 2009年04月09日

subject: 初心者が上着をはじめてつくるなら、何がいい?

from: 植田伊津子



さてさて、「悩ましい羽織りもの」話題が続いております。

前回も書きましたように、羽織りものは自分の着付けが定まっていないと、寸法を決めるのがむずかしいですから、きもの初心者の方は、佐藤さんのようにしばらく「じぃぃと観察して」慎重に考えたほうがいいかもしれませんね。私は体当たり的に上着をつくっていますが、これは性分です。勉強代がかさんでいます(涙)。

「初心者が上着をはじめてつくるのなら、何がよいか?」という質問を佐藤さんが振ってくださいました。今日はそれを考えてみたいと思います。
道行? 道中着? 羽織?……うーん、「結局、その方のきもののスタイルによるのではないか」という気がします。


単にきものが好きで着ているという方なら、どんな上着をつくられてもよいでしょうね。
けれど、他者との関係性が求められるきものを着る機会が多い方は、少しルールを知った上で、上着選びをしたほうがよいかな、と思います。具体的にいうと、用途のある場所(あらたまったパーティ、茶会、結婚式や披露宴)に出向く場合は、おそらくきものもハレ的なきものを着ますね。そういうきものの上着は考慮が必要だということです。

たとえばハレのきもの(紋付きや訪問着、留袖の類のきものを着るシーン)の上には、正式には「道行」を羽織るとされています。それも、無地(格の高い江戸小紋〈鮫・行儀・角通し〉や無地ぼかしもOK)か絵羽のフォーマルなものですね。小紋の道行はハレのきものに合わせません。
道行は、昔も今も、誰もに似合う定番のかたちとして、親しまれています。色柄・素材を考えたら、ちょっとしたフォーマルからカジュアルのきものまで着られるもっとも汎用性が高いものです。
たとえば小付け(柄が小さい)のものや無地に近い道行なら、小紋などのふだん着から一つ紋付きの無地のきものまでカバーできたりします。ま、それは傍目から見るとつまらなかったりするのですけれど。御召なら、織りと染めの両方のきものによくのります。

090404_1.jpg
御召(左)という生地は染めと織りの中間ぐらいの質感なので何にでも合わせやすいのです。


道中着は道行よりカジュアル(「しゃれ着には道中着がしっくり」など)といわれてきましたが、この頃はそうでもないですね。道中着は、ほぼ道行とイコールと考えてよいと思います。ただ、これには道行の窓のような視線を集めるポイントがないため、人によっては寂しげ(ややもすると老けて)に映ることがあります。そういう方は、道行衿のかたちを選ばれたほうが全体の雰囲気がやわらぐでしょう。

羽織は、洋服でいうならカーディガンかジャケットのようなもの。道行類にくらべると一段カジュアルな扱いをします。ふだんのおしゃれ着にはぴったりしますけれど、ハレ的なきものには合わせません。
けれど黒の一つ紋付きの羽織は別物。どんなきものでもこれさえ羽織ればフォーマルになるとのことで、今はほとんど見かけませんが、私の入学・卒業式の母親の姿はこれでした。

昨今、きもの初心者の方で、帯結びに自信の無い方はまずは羽織をつくるのが流行らしいそうですが、お茶系やハレのきものが多い方は、フォーマルまでカバーできる道行タイプのほうが用途が広いように私は感じています。

けれど、純粋にきものを楽しみたい初心者の方でしたら、室内・室外でもずっと脱がなくてよい羽織は心強い味方でしょう。ちなみに道行・道中着は洋服でいうならコート。玄関先で脱ぎ着をするのが慣わしです。

090410_3.jpg
これは伯母のお下がりの付下げ小紋風の羽織です。伯母がよそゆきに使っていたもの。私にはやや丈が短いのですが、伯母らしいバランスのよい柄配置の仕立てなので、そのまま使っています。紬などの上にこうしたやわらかいものを羽織るとしゃれた雰囲気になります。


きものを着て遠出をする、舗装のされていないところを歩く、人混みの中を移動するなどのシーンが多い方なら、道行・道中着・羽織とは別に裾まで覆う塵除けが必需品です。この頃の塵除けは、コート地専用の生地以外でもよくつくります。撥水加工をかけて雨ゴートと兼用にされる方が多いですね。ふつうは単衣仕立てです。

種類は、フルレングスの長コートタイプと、上下をわけた二部式コートタイプがあります。
長コートはさっと羽織れて、すぐ脱ぐことができる点からとても便利。けれど、これの仕立てが上着の中でいちばんむずかしいと思います。見た目が「丸太状」になりやすいのです。

スマートな裾すぼまりに仕立てるには、脇線を斜めにとらなければいけませんし、くりこし分を微調整しないと両肩に「八」の字のシワが目立つのです。上着のなかでも長コートをはじめてつくる場合はとくに、気心の知れた呉服屋によく相談の上、仮縫いなどの工程をとってもらうほうがよいと思います。

090410_2.jpg
一衣舎(いちえや)でつくった絹唐桟雨ゴート。塵除けも兼ねています。これはほとんど単衣のきもので、同布でつくった腰紐を締めてから、おはしょりを整理し、衿先あたりにつけた紐で襟元が開かないようにして着ます。
長コートでもこのかたちなら、前がめくれにくく、風に強いのです。
先日、樺澤さんが紹介された、笹島先生の単衣のウールきものをコートに転用するアイデアと、ほぼ同じ構造です。撥水加工が弱くなったらかけ直しています。


その点、二部式コートは上着と腰巻き状の下とに分かれていますから、応用が利きます。また腰回りがきものに添うために、長コートよりはすっきりと見えるでしょう。ただ腰巻きを玄関先でモタモタ結んでいると「面倒だな」と思うことも。こちらが手間取っているときに、相手がじっと無言でいる間合いの悪さは、なんともいえないものがあります……。

090410_4.jpg
これも伯母のお下がりの二部式コート。上は袷の道行そのものです。天気が不安なときは、上着だけを着て外出し、雨が降り出したら一枚仕立ての下を巻きます。下だけ持ち歩くので荷物になりません。


上着には若干のスタイルのきまりがあったり、また着脱の容易さ、かたちの好みなど、いろんな要素が絡み合うものです。自分はどんなきものを着ることが多いのか、まずはタンスの中をじっと見て観察してください。
紬のきもので落語会に行くのが楽しみという方なら、遊び心のある柄付けの長羽織からつくられるのもよいでしょう。お茶系のきものを着る機会の多い方なら、天気が悪い日でも出かけなくてはいけないお茶会用のために、何はなくともフルレングスの雨ゴート兼塵除けが必要かもしれません。



また、きものに袷・単衣・薄物の時期があるように、道行・道中着・羽織も季節によって素材を変えて使い分けすることも覚えておきましょう。長コートは、今は単衣仕立てにして一年中使っている方が多いと思います。

袷の最初・終わりや単衣の時期(合いの季節)4・5・6・9・10月
……軽やかな薄めの生地、もしくは中ぐらいの透け感のある素材で単衣仕立て
※↓夏物コートと兼用することも。
 (盛夏の時期 7・8月……絽・紗・羅などの夏物の生地で単衣仕立て)
袷の時期 11・12・1・2・3月
……透けない生地で袷仕立て
真冬の時期 12・1・2月
……輪奈ビロードやカシミヤコートを使う場合も

090410_1.jpg090410_5.JPG
変わり紗道行衿(左)と、透けの縞柄の道中着(右)のコート2種。私の「合いの季節」のコートです。変わり紗は透け感が絶妙なので夏も着ています。



こうして見てみると、合いの季節が意外に長いのです。きものを比較的ひんぱんに着られる方でしたら、単衣仕立ての合いのコートが欲しいですね。
「私は暑がりだし、帯付き(きものと帯だけで何も羽織らない状態)で大丈夫です」という方でも、きものの焼けや淡色の帯の汚れを防ぐためにも、何か1枚羽織ることをおすすめします。お財布に余裕がないなら、薄手のショールでも構わないでしょう。

ところで、佐藤さんの雨ゴート、複雑できれいな色でしたね。よく相談して仕立てたのなら、寸法的には大丈夫じゃないですか。実際に着たところを見せてもらったら、また具体的なことがいえると思うので、機会があったらぜひお披露目してください(*^_^*)。

また、樺澤さんの「仕立てのいらないコート」を読んで、私は「あっ」と声をあげました。これって、私が一衣舎の木村さんにつくってもらったおはしょり型の雨ゴートと一緒の思想。かぶせて詳細を語りたかったのですが、今回もまた長文になってしまって、紙幅が尽きました。

今日はお勉強じみたことばかり書いてしまって、反省することしきり。次回は、草履をはじめ和装小物の製造卸を手がけている「楽艸(らくそう)」の店主・高橋由貴子さんの羽織りものをご紹介したいと思います。
ちょうど見せてもらう機会があったのですが、高橋さんらしいアイデアにあふれたものでした。

date: 2009年04月11日

subject: 閑話休題、冬のコート

from: 佐藤文絵



今日は初夏のような陽気でした。桜が咲きながらも、どんどん新緑が萌え始めています。桜はそっちのけで、冬のセーターやダウンのコートを洗濯したり、クリーニングに出すものを整理したりと、メンテナンスな一日を送りました。

さて「はじめての羽織りもの」についてのお答え、ありがとうございます。
最初の一枚ということでいえば、王道は道行、好きで着るのがメインなら羽織もあり。あるいは雨コートらしくない反物で雨コート兼塵除け、もしくは二部式の雨コートという選択もあり――。
自分がどういうシーンできものを着ていて、今後どんなふうに着ていくのか、そのあたりが分かれば、答えは自ずと見つかりそうです。大変勉強になりました!

090411_1.jpg
ちなみに私が先日紹介した雨コート兼塵除けは、機械織の大島紬に撥水加工を施したもの。広範囲に着回すなら、素材や色柄選びは慎重になったほうがいいですね。


植田さんが予告してくれた「アイディアにあふれた羽織もの」、早く読みたいなあと思いながら閑話休題です。季節に逆行するようで申し訳ないのだけど、冬のコートについて少々。

私は寒い京都に住んでいるせいか、冬の寒さ対策はかなり気になることのひとつ。道行や羽織は絹だから暖かいはず。でも気持ちのうえで、あるいは見た目上、どこか心許ありません。冬はまわりから「寒くない?」なんて心配されることなく「暖かそうだなあ、ほっ」と思ってもらえる装いをしたいもの。私は洋服のコートが少し異常なほどに好きなのですが、無条件に暖かい感じのする、包まれている感じのするウール系のコートをきものにも!と切に願っています。

しかし、これがなかなか。そもそも選択肢が少なく、残念なことに素材感がもうひとつチープであることがほとんどです。ヴァージンウール、アンゴラ、キャメル、アルパカ、カシミヤ…、洋服のコートは、ふんわりと暖かく、手触りもしっとり艶やかな魅力的な素材がたくさんあるのに、きもののコートはまだそこまで成熟していないですね。そして形についても、なかなか。

そんななか、とても気になっているものを二つ紹介します。
まずは友人の着ているこんなコート。コートというよりマントといったほうがいいのかな。だいたいこんな感じ、というのを絵にしてみました。ああこんな下手な絵では良さが伝わらないかもしれないのですが、お許しを...。
膝あたりまでたっぷりと包みこんでくれる、いかにも暖かそうな雰囲気のマントです。形はごくシンプル。ふわっと羽緒って首元をリボン状に結ぶだけ。また肉厚のいいウールを仕立ててあるのです。ある洋服のブランドのものとききました。洋服と両用できます。いつか真似したい!

090411_2.gif
シンプルながら、リボン結びがアクセント。共布だから、甘くなりすぎずよい塩梅。


もうひとつは、1936年の雑誌『主婦の友』から。『きものの花咲くころ――「主婦の友」90年の知恵』
という本があります。きものが日常だった頃の女性のきものは今よりずっと自由で楽しかった――そんなことがたくさん詰まっていて、大変楽しい、お勧めの一冊です。防寒コートについても多くページが割かれていて、そのひとつがこちら。写真真ん中のコートが気になっています。誂えたいなあ、と妄想を膨らませております。

090411_3.jpg
『きものの花咲くころ 「主婦の友」90年の知恵』82ページをパチリと撮らせてもらいました。前後には防寒コートがいくつか、ショールの流行、雨の日のコーディネイト、などなど参考になるページがたくさんです。


いかがでしょう、こんなコート。このブログを読んでくださっている方々も、こんなすてきなコートがあるよ、というものがあったら、どうぞお教えくださいね。

date: 2009年04月13日

subject: 黒羽織

from: 樺澤貴子



植田さんの羽織ものアドバイス、私もとっても参考になりました!これから新調するなら、どんな趣向を凝らそうかしら・・・・・・と妄想しながらも、街を歩くと目に飛び込むのは、のどかな春の風情。先週は、あちらこちらで入学式を見かけました。桜の木の下で主役を囲んで家族が代わるがわるシャッターをきる様子は、なんとも微笑ましいですよね。そんな光景を見ながらふと思ったのは、入学式で和装のお母さん方を見かける機会が少なくなった、ということです。植田さんも触れていましたが、私の入学式の時にも、お母さん方の多くはきもの姿で、皆決まって黒羽織を着ていました。母のきものはクリーム地に珊瑚色の花模様を描いた軽めの付け下げ。でも黒羽織を一枚纏うことで“改まった気持ち”が映し出されていて、子ども心に母の姿を見て「今日は特別な、晴れやかな日なんだ」と嬉しくなったことを覚えています。そこで今日は、少し黒羽織のお話をさせてください。

以前、『きものサロン』(2004年秋号のP32-33)で取材をした、七代目中村芝翫さんのご長女で日本舞踊家の中村光江さんは、「黒羽織は少々改まった席へ出るときには重宝するアイテム」と仰っており、素敵な黒羽織を見せていただきました。雅やかな吉祥文様の絵羽羽織をはじめ、人形柄の手刺繍をほどこした黒繻子の羽織、お家の紋にちなんだ梅を描いた無双羽織など・・・・・・ご自身で誂えたものだけでなく、お母様から譲られたものも多かったのですが、どれも上品かつ華やかで、凛とした佇まいを感じさせるものでした。お話のなかで印象的だったのは「黒羽織には大人の女性の象徴的な色気のようなものが感じられ、子供の頃から憧れがありました」という言葉。確かに、きものにどんな色を着ても、その上から黒を纏うことで、抑制的な美しさが際立って見えるように思えました。黒羽織を纏った中村さんを撮影しながら、鏑木清方の「築地明石町」に描かれたご婦人が重なって見えたほどです。

090413kiyotaka.jpg
黒羽織といって、私がまず思い浮かべるのが鏑木清方の「築地明石町」。緑味のある浅葱色と黒の艶やかなコントラストが印象的です。


また、小唄のお稽古の姉弟子は、お正月のご挨拶まわりの際に必ず黒羽織を着ると言っていました。というのも、「防寒コートや道行は脱がずに御宅に上がる事は失礼に当たるけれども、羽織はジャケットと同じで脱がずにすむから!何軒もご挨拶にまわる時には便利なのよ〜」とのこと。なるほど、改まった印象を相手に与えながらも脱ぎ着の煩わしさから解放されるとは、なんて便利な。どんなきものでもドレスコードをアップさせる黒羽織。3月の「おでかけきもののTPO」で私がお話した“おでかけ感を増す一点投入アイテム”としても、黒羽織は一役を担いますね。とはいえ私自身は黒羽織を持っていません。母や大叔母のものは実家の箪笥に眠っていますが、柄行が今の私の気分とは違うためいまだ日の目を見ず・・・・・・。

そういえば、先日発売されたばかりの『幸田文 きもの帖』(幸田文著 青木玉編/平凡社)にも、<黒い羽織>という項目がありました。1968年に書かれたエッセイなのですが、軽妙な“幸田節”でその魅力が綴られているので、引用させていただきますね。

 黒い羽織は、着物にどんな色を着てもよく似合う。だから色無地の着物である場合は、着物もよけい引立つし、羽織の黒も美しい。つまり一番単純で、簡単で、品格があり、効果的な組み合わせなのである。(中略)お通夜の晩に身分のいい奥様方が、ねずみ色とか灰色とかの、鈍く控えめな無地の着物に黒い帯、かっきりと真っ白に三つ紋を抜いた黒の羽織などで、ひっそりとお焼香するのなどはまた格別で、哀しみの中の美しさ、取込ごとの中の落付き、が見られたものだった。
 黒はほんとうに美しい色だし、どの色をも美しく引立てるし、改まった席に出ても品格を失わない色である。
(『幸田文 きもの帖』P91〜92より)

さらに同項では、黒羽織の家紋のこだわりや、吉凶両様に用いる際の家紋や羽織裏の気配りについても述べられています。私は独特の言い回しで飾らずにさらりと情緒を感じさせる幸田文さんのエッセイの大ファンで、この本もあっという間に読み終えてしまいました。ぜひ、書店でチェックしてみてください。

幸田さんのエッセイを読み終えた頃には、「やっぱり黒羽織、欲しいかも・・・」モードになってしまった私。ですが、このところの植田さんや佐藤さんとのメールのやりとりを通して、猪突猛進を踏みとどまりました(笑)。我ワードローブを再び見つめ直してみると、その前に解決しなければならないことが見つかりました!下の写真はお気に入りの輪奈ビロードの道行なのですが、見てのとおり、肩裏にかなり年期の入った朱の横段ぼかし地がついています。いただきものの道行ですぐに着たかったため、衿袖洗いと裄出しをしただけでした。しみじみ道行を眺めながら振り返るに、脱ぎ着の時にくすんだ肩裏がけっこう気になっていたのを思い出しました。表地が無地感覚なので、肩裏のレトロ感によって全体が古い印象に見えてしまいます。ビロード地なので、秋冬にしか袖を通さないため、今がお仕立て替えのチャンス。呉服店で羽裏として扱われているものや長襦袢地を使うのはてっとり早いのですが、何かよいアイディアはありますか?

090413.jpg
大きな唐松柄が飛び柄に裂りとられている輪奈ビロードの道行。柄裄は可愛らしいけれども、黒に近い濃紺一色であることと、ビロードの控えめな光沢によって甘くなりすぎない一枚です。


ブログをご覧の方も、“肩裏自慢”がありましたら教えてくださいませ。佐藤さんの防寒コートの話題によせられていたコメントで、紀子さんが見つけたマントやえいこさんのお友達のマントを見て、「マント」熱もジワジワとおこりつつあります・・・・・・(笑)。シルエットの洒脱さと和洋兼用ということが魅力ですね。防寒についての話題は、また次の機会に触れさせてください。

date: 2009年04月15日

subject: 楽艸・高橋由貴子さんの羽織りもの

from: 植田伊津子



きもの巧者で知られる中村光江さんの「黒羽織は少々あらたまった席に出るときには重宝するアイテム」というエピソードを、樺澤さんがご紹介くださいましたけれど、この前お目にかかった楽艸の高橋由貴子さんも、同じことをおっしゃっておいででした。

きものをよく着る人たちにとっては、きものの日常生活の延長線上に〈あらたまったシーン〉がありますから、黒羽織は今もロングセラーとして愛用されているようですね。

反面、きものを滅多に着る機会がない人は、TPOのシーンごとのきものが単独で存在する傾向です。そのため緩衝材のような役割をする黒羽織は、リストから抜け落ちているのかもしれません。
しかしこれから長くきものに付き合っていけば、点が線としてつながってくるでしょうから、たいがいの方はそれから黒羽織をつくられても充分間に合うと思いますよ。


さて今日は、この前予告したように高橋さんの羽織りものを紹介します。
高橋さんは、各きもの雑誌にときどき登場されていますので、ご存じの方も多いかと思いますが、草履や下駄などの履物をはじめとして、バッグ類なども含む和装小物の製造卸「楽艸」を手がけるディレクターです。

冠婚葬祭用の古典的な履物はもちろんのこと、今の時代のきものに似合う洒落た草履を数々提案。きものを着る方が多く残る東京の下町・浅草に育ち、またこの地でずっと商売をされている環境ですから、始終きものに囲まれて過ごしているといってもよいでしょう。ヘビーユーザーでもある高橋さんは、羽織りものに対してどんなお考えをお持ちなのでしょうか?

「もちろん新しい羽織りものもいいなと思いますけれど、身内のお下がりの小紋や自分が若いときに着ていた振り袖を上着に仕立て替えて使っているんですよ」

090415_1.jpg090415_3.jpg
左=伯母様のお下がりの型小紋を羽織に仕立て直したもの。「派手やかな羽織になりましたから、お正月のきものの上などにちょうどいいんです」。肩すべり(裏地)もお古の長襦袢なのだそう。面白い柄の長襦袢をいいとこどりにして使用。「長襦袢はすべりがよいので肩裏にちょうどいいんですよね」。右=高橋由貴子さん。七緒(プレジデント社刊行)特集「お手入れ」解決隊(2006年)より写真複写。


シンプルな洋服に慣れている私たちは、柄尽くしのきものを見ると、こんなにごちゃごちゃしたものは日常には着られないなという先入観を持ったりします。ましてや羽織りものなんて。

「だと思うでしょ(笑)。けれど意外にしっくりくるんですよ。羽織りものは、出かけるときにしか使いませんよね。ずーっと着ているわけじゃなく、先方に行ったら羽織以外だと脱いでしまうし。きものじゃないから、気持ち的にさほど気にならないんです」

すっきりとしたクールなきものが好みの高橋さんは、若い頃からお嬢さんっぽいラインが苦手でした。「花柄やピンクとか、私の柄じゃないもん」って、そんなことはないと思いますけれど。
今のきものスタイルは、たしかに高橋さんにすごく合っていらっしゃいますが、私より少しだけお姉さん世代なことを差し引いても「渋いですねえ……」と正直な感想を口走ってしまいそうな洒脱さです。

ですが、柄物の上着を羽織られた途端に姿が一変。柄物効果によって、雰囲気が「ゆるゆる〜」となって、「きつく」見えません。
辛口気味のきものが和らいで、お歳に見合った臈長けた雰囲気に様変わりしました。きものと帯の両方ともがシックだと実年齢より上に見られがちですが、羽織りものに華があれば、若やいだエッセンスをもたらしてくれます。

おそらく今は、染めの柄物の上着をあらたにつくるとしたら、呉服屋は「飛び柄の無地感覚の着尺からお選びになるほうが……そのほうが何にでも合わせやすいですし……」というでしょう。

「お下がりの古い型友禅や若い頃に着ていた小紋などが手許にあって、『きものではもう着ないわ』というそれらを生かしたかったんですね。ひとつ大胆な柄物で上着をつくってみたら見違えて、それから仕立て替えにハマりました。とくに羽織などは、パンチのある柄物ほど、おもしろい効果があらわれますよ」

つい最近も、20代に着ていた振り袖を千代田衿のコートに仕立て替えたそうです。振り袖といっても、大きい柄の小紋といってもよい趣のもの。

090415_2.jpg
黒の掛け衿のような千代田衿にして、肩すべりも黒で統一。現役の若い年代だったなら、よそゆき小紋として役立ちそうな柄行き。


「父がつくってくれた振り袖のうちのひとつです。振り袖を着る年代が過ぎると、袖も長いし地色は赤すぎるし、で自然と箪笥の肥やしに。けれど、親しい呉服屋さんに見てもらったら『上等な上着になるよ』といわれたのです。仕立て替えをして正解でした」

単体だけで見ると、とても派手そうに思えるのですが、落ち着いた色のきものの上に羽織ってみるとまったくそう思いません。
ある年代を越えると、確実に着られなくなる色柄が出てきます。私自身、そうしたものを上着にするというアイデアを取り入れてみたいと思いました。

高橋さんがこれを着て、浅草の交差点で信号待ちをしていたときに、全然面識のない方が「いいコートねえ」と声をかけてくれたそうです。そしたら隣にいた別のご婦人も「そうよねえ。素敵ねえ」と、見知らぬ者同士がおしゃべりをはじめて、高橋さんは「人を幸せな気持ちにする上着だなあ。コレは」と、何だかうれしくなったと話してくれました。
その話をうかがった私も、ポッとあたたかな気持ちになりました。


さて、佐藤さんが防寒の話題で、素敵なマントの事例を紹介してくれました。東京の寒さは地方ほどではないので、私は道行+ショールぐらいで過ごしてしまうため、真剣に防寒品を検討したことがないのですが、おおいにそそられました。マントなら、仕舞ったときにコートより小さくなりそう。

date: 2009年04月18日

subject: 雨の日のお洒落 Part2

from: 佐藤文絵



黒羽織のお話、高橋由貴子さんの羽織のお話、どちらも楽しく読みました。樺澤さんの道行は大きな柄付けが素敵。アンティークの良さですね。肩裏は新しい反物ではなく、着なくなった長襦袢地を転用するのもあり。私は道行を誂えたときにそれを試みようとしました。ただ残念ながら私の場合、実現できませんでした。というのはきもので1尺8寸5分、上着となれば1尺9寸近い私の裄には、反物の巾が惜しくも足りなかったのです。樺澤さんは小柄だから大丈夫ですよね。昔のきものを羽織や道行に、といった話も「いいなあ...」と指をくわえてきいています。きものに関しては、育ちすぎたわが身を呪わしく思うことがしばしばです!

090418_9.jpg
肩裏に転用したかった長襦袢はこんなもの。大きな菊立涌です。好みの色をかけたら樺澤さんの道行にも合いそうに思いました。



さて今日は空青く爽やかないい日和なのですが、雨の用意についてお話しますね。

では上から。まず傘は樺澤さんとお揃い、前原光榮商店の16本骨のタイプを愛用しています。この傘はきものに馴染みやすいですね。愛用者はきっと多そうです。皮にくるまれた持ち手の風合い、その皮が同色であること、そのあたりが落ち着いた雰囲気を醸し出しているのかも。色違いをもう1本ほしいくらいです。

090418_1.jpg
傘の宿命「なくす・どこかに忘れる」憂き目に遭わず、5年以上連れ添ってます。洋服にも、和服にも。


雨コートは前に書いたとおりですが、ひとつ補足。着尺から雨コートを仕立てると、おはしょりがない分、布が余ります。その布を利用して仕立てる際一緒に収納袋を作っていただきました。これで持ち運びがぐっと快適に。ちょっとしたことなのだけど、綺麗にかつスマートに持ち運びできるのは気持ちがいいものですね。

090418_2.jpg090418_3.jpg
雨コートは長襦袢のような畳み方をしますよね。畳紙(京都では文庫紙といいますが)に仕舞われた形からさらに1/3に畳むとぴったり入るサイズです。器用な方なら残り布を使ってきっとささっと作れることと思います。


足元は真っ赤な雨下駄、ちょっと派手でしょう。でも憂鬱になりがちな雨の日のこと。爪皮で1/3は隠れることだし、華やかにいこう!とこんな色を選びました。樺澤さんも書いていたとおり“気持ちを後押し”そして暗い空の下でも“明るく見える”ことが優先です。

090418_6.jpg
白無地の爪皮はあまり見かけることがないのですが、京都の履物店、伊と忠にあるよとききつけ、誂えました。


そして履き替えの草履が必要な時は、こんな袋がサポートしてくれます。薄い綿が仕込んである草履袋。草履をやさしく守ってくれます。鼻緒を型崩れを防ぐためのクッション、通称“ブヒブヒ”を足の代わりに滑りこませれば、完璧です。見た目に美しく、機能的。「荷物になるなあ、いやだなあ」という気持ちがどこかへ飛んでいきそうです。

090418_4.jpg
草履を持ち運ぶための草履袋。お裁縫が億劫な私は器用でセンスのよいお友達に作ってもらいました。

090418_7.jpg090418_5.jpg
左=ブヒブヒ(正しくは“草履キーパー”あるいは“鼻緒キーパー”)は和装小物のお店でも時々売られています。植田さんはご自身で作られているとのことでしたね(「一より習ひ――草履のゴムの取り替え」参照)。市販のものを選ぶ場合も、自作する場合も、足と同じくらいの感じでぴったりと入るボリュームのあるものがおすすめです。
右=内側はナイロン製の布が使われています。濡れた雨下駄も安心して入れられます。もちろん大まかな水滴を拭ったのちに、ですが。


さて草履や下駄の話もしたいところですが、今日はこのあたりとさせてください。
下駄についてはひとつ悩みをもっています。磨り減ったり、欠けたり、剥げたり…、これは下駄の宿命と覚悟はしているけれど、鼻緒止めの金属が凹んで、釘が抜け、いつのまにか無くなっている…ということも頻発。これもまた致し方ない部分でしょうか。
みなさんはどうされてますか?

090418_10.jpg
この下駄はまだそれほど履いていませんので(おそらく5回以内)、あまりダメージを受けていません。それでも留め金の凹んで、いくつか釘がなくなってしまいました。鼻緒をとおして雨水が上がってくるから、雨下駄は特に留め金が重要な役割を担っているはず。困ったものです。

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。