from: 佐藤文絵
3月のテーマは「おでかけきもののTPO」。
おでかけきものというと、とても振り幅の大きいものだと思うし、またいちばん楽しい部分だから、お二人がどんなふうに「とき・場所・場合」に応じてきものを“着分けて”いるのか、いろいろお聞きしたいです。
でもまずは「おでかけきもの」に入る前に、きものそのもののTPOについてお話させてください。
個人的な話になるけれど、わたしは必要に迫られてきものを着るようになったのでなく、シンプルに「好き!楽しい!」というところから始まったので、きものを着るシーンとしたら、ほぼすべて「おでかけ」でした。そしてごくまれに「結婚式」というシーンがありました。ただ当時は、結婚式=友禅の訪問着を着る、というところで思考停止していたから、実際のところ100%「おでかけきもの」だったんです。で、文字通り「好きに」着ていたのでした。TPOおかまいなし、だったように思います。思い返せば、あれは拙かった...ということも多々あるような気がします(あまり思い出さないようにしていますが・笑)。
その後30代に突入し「さすがにルールもわきまえねば」と思ったのと、それからお茶のお稽古を始めたことが大きなきっかけとなって、きものならではのTPOを意識することになりました。
洋服的な感覚のTPOときもののTPOはかなり違うと思うんですよね。洋服だったら「きちんとしよう」とか「すごくカジュアルでOK」とか「今日はドレスアップ」とか、そのくらいの感じです。きものの場合は、基本的な姿勢は洋服と同じでも、そこに文様とか素材とか紋とか、あるいは形そのものが違うとか、さまざまな要素とルールが加わってきて、とても高度。これは難しくもあるけれど、面白いなあと思います。豊かな世界ですよね。
「つね・ちょい着・よそゆき・大よそゆき」という言葉はご存知ですか?
私は、雑誌『きものサロン』の京都取材をお手伝いした際にはじめて知りました。きものを4つのTPOに分けているんです。具体的には、こんなふう。
・つね=普段着。家事やごく近所でのお買い物まで。ポリや木綿
・ちょい着=お稽古、ちょっとしたおでかけ、百貨店でのお買い物とか。軽めの小紋や紬類
・よそゆき=パーティや食事会、お茶会など。気の張るおでかけ。
・大よそゆき=礼装。すごく格の高い催し。
これはすごく分かりやすいなあと思いました。着こなし四段活用、というところでしょうか。
自分のワードローブを思い浮かべて、この4つに分類してみると、すっきり整理された気持ちになります。いま私たちは「おでかけきもの」という言葉を使っていますけど、この4つに照らし合わせれば、よそゆきとちょい着を足したものということになりますね。
「つね・ちょい着・よそゆき・大よそゆき」については、ちょうど数日前に発売した『きものサロン 09年春号』(世界文化社)で、ぐっと掘り下げて特集されているから、ぜひ見てみてください。「きもの好き100人のお洒落講座」ということで、たくさんの方が登場し、この四段活用に沿って紹介されています。おおまかな着こなしの傾向がわかるとともに、皆やっぱりそれぞれなんですよね。ある方にとっての「つね」は私の基準でいえば「よそゆき」クラスだなあ、なんて思うところもあり、興味深いのですよ。
追伸:
余談ですが私もその100人のひとりとして登場しています。残念ながら着こなし四段活用の部分ではなく、後ろの方の“始末のよい”コーナー。母の小紋を仕立て直した帯についてお話しました(こういった「きもののやりくり」の話題は、またおいおい)。