date: 2010年05月18日

subject: 盛夏の茶席のきものをつくりたい(その2)

from: 植田伊津子



昨日のご質問の件。
「白っぽい地色に波と雲文様」「黒っぽい地色に花が少なめの秋草」のきものでしたね。
わたくしは夏のきものとして、どちらも素敵だなあと思いました。この質問者さんの考え方が興味深いのは、長襦袢ときものの模様、これらを一対としてとらえているところで、長襦袢+きものを重層的に描いて文様でひとつの『物語』をつくろうとしている点はたいへんおもしろいですし、こういう着こなしはじつに知的ですね。

〈絽・紗〉
さて、けれどわたくしが気になったのは、これを絽で表現しようとしているところです。絽のきものって思っているほど透けないんですよ。絽と紗の違いについては、昨年わたくしはこのように説明しています。

夏の柄物のきものは絽という生地でつくられることが多い点からすると、ご希望のきものは絽のチョイスがよさそうだと思うのですが、質問者さんが考える長襦袢の柄が透ける効果はかなりむずかしいかなと想像されますね。

では表地のきものを紗にすれば、下の長襦袢の柄は透けますが、透けて見えるということはすなわち目が粗い生地であるということとイコールですから、この紗という生地は、大胆な柄付けは可能でもデリケートで緻密な模様は表現しにくいかもしれません。

それでも、ご希望の柄を描いた紗のきものに長襦袢を重ねたと仮定してみます。
重ねたときに長襦袢の柄を浮かび上がらせるためには、長襦袢の柄が「くっきり」「はっきり」、そして「大きめ」に表現されていなければ、ぼやけてしまうんですよ。ということは、かんたんに言ってしまえば、「えっ、こんなどぎつい長襦袢?」と思われるぐらい強い調子の模様でなければいけないということなんですね。

〈お茶のシーンで使うとき〉
また、質問のなかで「これがお茶席で使えるかな……」という点も不安に感じておられました。
「白っぽい地色に波と雲文様」「黒っぽい地色に花が少なめの秋草」の柄のきものでしたら、お茶席に使って問題ありません。ふつうにアリです(全国区で使えるきものとなりましょうし、京都でももちろんOKです)。

・それほど改まらない茶事の客側
・大寄せ茶会や気軽な茶事の亭主側
・少し改まった大寄せの茶会の客側
どのシーンに使っても、差し支えないかと思います。

ただ、「海の景色」「秋草を重層的に表すもの」をつくるということになると、たとえば海の景色のほうを例にあげれば、濃色の地色にかもめが強く表現された長襦袢は、洒落物的なニュアンスが強くなり、お茶席のきものの感じからは少し離れるような気がするのです。
ネガ+ポジのように反対色の組み合わせで長襦袢ときものを組み合わせると、傍目には個性的な着こなしに映ると言ってよいでしょう。

うまくいえませんが、お茶のきものは「過ぎたるはなお及ばざるがごとし(物事の程度を越えた行き過ぎは、不足していることと同じで好ましくない)」的な面をあり、相手を立てたり、茶会の道具組や「一座の和」を尊重したりという気持ちを着るもので表す部分もあるように思うんですよ。

そういうことを考えると「長襦袢については再考されてもよいかな」、「こういうネガポジの組み合わせ方は、お茶とは別のシーンで楽しく着られるほうがよいかな」とわたくしは思いました。

〈お誂えについて〉
本当は質問者さんが一番懇意にしている呉服屋さんでおつくりになるのが間違いありません。というのも、それなら、こちらの懐具合もなんとなくわかっているでしょうし、あなたに合った色柄について、日頃の付き合いから一歩踏み込んだ助言してくれるだろうと思うからです。

「懇意にしているところがない……」という場合は、周りのきもののベテランさんたちに近隣の呉服屋さんの評判を聞いて、よさそうなところを紹介してもらってみてください。またもし、わたくしでよければ、きもののアドバイザーのお仕事で呉服屋さんの展示会にいるときにいらしてくださったらご相談にのります。展示会のときに、事前にご案内を差し上げますので、一度メールをくださいませ。

ちなみに、当初のご希望で長襦袢を手描きの友禅で誂えた場合、きもの地とさほど変わらない金額はかかります。柄の色数や手間にもよりますが、17、8万〜ぐらいと予想します。ふつうの長襦袢の柄物は型染めが主で、手描きの長襦袢はかなりの贅沢品なんですね。

また、ご希望の柄の付下げの友禅を誂えられる場合、20万台ぐらいからと思っておけばよいでしょう。この金額も、地域や呉服店によって違いがあります。

けれどですね、質問者さんのきものに限っていうならば、ご希望の柄行きは夏のきもののベーシック柄。ということは、お誂えをしなくても既製品の中でそれなりに合うものがあるかもしれません。
わたくしが今日お話ししたことなども踏まえ、一度、考えを整理をし、自分がほんとうに譲れない部分は何かを明確にしてからきものをつくられるほうがよいと思います。

〈長く着るきもの〉
90歳まで着られるかどうかはわかりませんが、柄の大きさや地色次第では、20〜30年は着られる長命のきものはできます。夏に人気の薄ブルーやモーブなどの紫系統、もしくは白といった色は、経年劣化して黄色くなると焼けが目立ちますので、これらを避ける色目を選んでもよいですし、途中で染め替えてもよいですね。
黒、臙脂、紺などの地色は、40年ほど経っても、焼けがあまり目立たない色です。

きものを褪色させないために、陽射しの強い季節はきものの上に上着(道行や道中着、羽織)を羽織ることをおすすめします。夏でも夏用の上着がほしいですね。日光にきものをされさなければ、きものの褪色はずいぶん防げます。

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