date: 2010年02月18日

subject: 寸法のお話・その3

from: 佐藤文絵



こんにちは。またまた間があいてしまってごめんなさい。前回に続いて寸法のお話をしたいと思うのですが、先日樺澤さんが紹介してくださった“寸法が揃うまで10年かかったわ”との経験談には、やっぱりそうなのか!と納得。コメントをくださった方々もそれぞれに紆余曲折がありそうなご様子です。一発でうまくいくことのほうが、珍しいのかもしれませんね。

余談ですが、裄丈調整には樺澤さんが「涙の安全ピン作戦」(笑)を紹介してくだっていたけれど、前にお話した文房具の「CLIPPIE」(→2009/6/5「裄丈のお直しと対策」)もおすすめです。安全ピンや針を通すのは、度重なるとちょっと気になります。ぜひこちらも使ってみてください。


さて、先日掲載した寸法表をご覧になって、こんなに詳しく寸法を出すのかと思われた方もあったかもしれません。実際のところ、もっと省略してもかまわないと思います。重要なのは、水色に色づけをしているところ(文末に寸法表&図を再掲しました)。寸法表って意外と呉服店によって項目がまちまちですが、この水色の部分はだいたい書かれているはずです。

では、ひとつひとつみていきますね。
『きものの仕立て方・頼み方』(世界文化社刊)と『和服寸法百科』(ふたば書房刊/絶版)を参考にしつつ書き進めますが、間違いもあるかもしれません。気になるところがありましたら、ぜひぜひご指摘くださいませ!>プロフェッショナルの方、お詳しい方

【1】身丈
標準的には、身丈はほぼ身長と同じ長さとされています。ただし人によって身体のバランスに比べて頭が小さかったり大きかったり、首の長さも一様ではないから、その分を考慮します。ふっくら体格ならば、身体の厚み分を身丈にプラスするようです。
そして腰紐を結ぶ位置ですね。ウエストと腰骨は6〜7cmほど離れています。ウエストで結ぶ派はその分長めに身丈をとらないといけません。
私の場合は4尺5寸5分に落ち着きました。ウエスト派で身長167cmなので、ものによっては反物の長さが足りず、4尺5寸5分の身丈がとれない場合があります。そんなきものは、腰紐を結ぶ場所を変えて調整しています。腰で結べば4尺3寸5分で十分。もっと短くても大丈夫。マイナス2寸は十分許容範囲です。
それと、そもそもどのくらいの着丈で着たいかということも多少は関係するでしょうか。今の感じだと床すれすれの長さで着るのが標準。でも昔はもっと短めだったろうし、今でも働き着なら短めでしょうね。お茶のかたがたも短め。そうそう、浴衣はくるぶしが見えるくらいで着るから、ぐっと身丈を短くしています。

【2】裄丈
裄丈も樺澤さんがお話してくれたとおり、昔は短め、今は長めが主流。私は1尺8寸5分。長くも短くもないちょうどよい長さだと思っています。
母のきものが1尺7寸5分なのですが、時々借りることがあります。その差1尺=3.8cm。樺澤さんも昔は短め裄丈のお母上のきもの(樺澤さんのベストより1尺2寸〜1尺5寸短いということですね)をそのまま着られていたとのこと。“10年前当時の写真を見返すと、ただきものを着ていることが嬉しくて、ツンツルテンの裄で満面の笑みを浮かべている私が写っています。無邪気なような、ちょっとアホな子みたいな・・・。”なんて書かれていました。1寸短めは、ちょっとツンツルテンだけど、なんとか許容範囲かなあと思っているのですが、さてどうでしょうか。
短めの裄のきものを着ると、なんとなく快活な気分になります。すごく動きやすくて。盛夏のきものは5分くらい短いほうがいいかもしれません。単衣用、盛夏用と絽の長襦袢を2枚持つことができるなら、その選択肢は大いにアリ。長襦袢を着ない夏のゆかたはいつも短めの裄丈にしています。
ところで、1尺8寸5分の裄は、1尺巾の反物でギリギリセーフの寸法。これ以上長くなると、きもののほうは何とかなっても道行やコートなどで「普通の反物が使えない」という不具合がでてくるかもしれません。

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左=裄丈は個性が表れるところですね。前に取材していただいた『きものサロン09-10冬号』(世界文化社刊)のページをめくってみると、向かい合わせの芸妓さんと裄丈がかなり違うことに驚きました。1寸ちかく差がありそう。
右=たくさんの方々のきもの姿が楽しい『きものの時間』(マガジンハウス刊)も、寸法の視点で改めてみてみると新たな発見が。今の感覚では短めの裄、短めの着丈がまさに“ツウ”な感じ。


【3】肩巾・袖巾
裄丈をどう肩巾・袖巾に分けるか。ここは重要ポイントですね。一般的には、肩巾より袖巾のほうを長くします。肩巾は後巾と同じか、後巾+2.5cmくらいまでがよいようです。
ただし裄が長い場合はそれができません。私の場合は肩巾9寸・袖巾9寸5分といった寸法にしたいけれど、そうすると袖巾のほうが長すぎて、道行やコートを普通の反物で作りにくくなってしまうからです。
かくして肩巾9寸2分・袖巾9寸3分に。肩巾は後巾より+2寸5分=9.5cm広いことになります。理想とされる+2.5cm未満どころではありません。こうなると、脇のあたりで布がだぶつきやすくなってしまいます。困ったものですが、肩巾・袖巾はこうするしかなさそうです。

【4】袖丈
袖丈は好き好き。標準は身長の1/3です。身長167cmならば1尺4寸7分になるのですが、最初に仕立ててもらった一枚が1尺3寸でした。そのあたりに引きずられて、紬は1尺3寸5分に、柔らかものおよびおでかけ着は1尺4寸5分にしています。でもどうせ寸法を変えるなら、1尺3寸5分と1尺5寸くらいにしておいたらよかったかな、なんて少し後悔しています。
樺澤さんのお話で「お茶のお稽古をするなら、袖丈を1尺4寸するといいわ」とある呉服店の方がおっしゃった、とありましたが、私もそのように言われたことがあります。もちろん身長(座高)によってその長さは異なると思うのですが、要は正座をしたときに、袂の先が畳についてきれいなドレープが出るし、またそのほうが袂が安定してひらひらと動かない分、むしろ建水に落としにくくなる、ということではないでしょうか。

【5】袖丸み
袖の丸みは何も指定しなければ5分であがってくると思います。ある呉服店のこだわりで1寸5分か2寸くらいの大きめの丸みを付けて仕立ててもらい、以来丸みのある袖が気に入っています。ぴしっとした紬にはすっきりとした5分の丸みがいいけれど、やわらかく装いたいものは1寸〜2寸の丸みを付けるのもいいものですね。

【6】袖付(前・後)
袖付は前後ともに6寸が標準で、ほとんどの方がその寸法ではないかと思います(高い位置で帯を結ぶ振袖はもっと短く、低い位置で帯を結ぶ方はもっと長くするようです)。
さきほども書きましたが、私は脇のあたりのだぶつきが気になって呉服店に相談したところ、少し効果があるかもしれないとのことで前の袖付を5分長くしてもらいました。
きものって衣紋を抜いて着るものだから、肩山は肩の上にあるのではなく、もっと背中寄りにいってしまいますよね。だから、その分前の袖付を長くしたほうが、袖の着けどまりが前後揃って、脇のあたりがすっきりするはずなのです。
ただこのだぶつきは、着付けによるところがたぶん大きいので、ここの寸法をいじれば解決する!ということではないです。でもちょっとした助けにはなるかも。

100219_1.jpg
これは5年近く前の写真。何度直しても脇のあたりが飛び出してしまう…。そんな悩みを持つ方は多いかもしません。これ、すごく老けた印象になってしまうのですよね。


【7】褄下
褄下=衿下の標準寸法は、身長の1/2です。私の場合は2尺2寸5分=85cmだから、身長の1/2より多少長め。脚が長いのでしょうか。うふふ(笑)。いや、これは帯の結ぶ位置にまずかかわってきますね。低く結ぶ方は短く、高く結ぶ方は長くなります。
衿先のチラ見えはOK?かどうか。ある本には1〜2cm出るくらいが好ましいと書かれていましたが、手元の二冊の本は「すっかりおはしょりに隠れるべし」としています。チラ見えするメリットは特にないですよね。私はちょうど隠れる長さにしています。
それとコメント欄に「褄下の寸法は衿先が腰紐にひっかかると着崩れしにくいという着付けの点からも考えたらいいと思います」とメエ子さんが書いてくださいました。上前の衿先にはきちんと腰紐をかけて安定させ、逆に下前の衿先は腰紐より上にもってゆきひっかけて下前がずり落ちるのを止める、ということですよね。これはすごく大事なポイント。図にしてみました。

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【8】繰越+衿付込み
繰越と衿付込みは、衣紋を抜いて着る女性のきもの特有のもの(男性も羽織には繰越を付けるようですが)。標準では5分肩山よりも後ろに衿を付けるための切り込みを入れて、そこからさらに5分後ろに丸みをつけつつ衿を付けます(ああ、説明がむずかしい…)。
衣紋を多めに抜く人、肩の厚みがある人はたとえば7分ずつの繰越・衿付込みにします。
私の場合は、やはり着付けがヘタでうまく衿がぬけなかったために、多めに付けてもらいました。ただこれも着付けの上達により対処できることだったりします。なのでどちらがいいのか正直私にはわかりません。和裁士さんの間でも意見の分かれるところかもしれません。


ふう。またまた長くなってきましたので、いったん休憩をいれましょうか。
ネクストバッターの植田お姉さまはこの週末御召展でお忙しいことでしょう。近いうちに寸法のお話・その4を書きたいと思います〜。残るは身巾。ではでは、おやすみなさい!

寸法表
身丈(肩から)4尺 5寸 5分( 172.4 cm)←【1】
裄丈1尺 8寸 5分( 70.1 cm)←【2】
肩巾 9寸 2分( 34.8 cm)←【3】
袖巾 9寸 3分( 35.2 cm)
袖丈1尺 3寸 5分( 51.1 cm)←【4】
袖丸み 1寸 0分( 3.8 cm)←【5】
袖口 6寸 0分( 22.7 cm) 
袖付(前) 6寸 5分( 24.6 cm)←【6】
袖付(後) 6寸 0分( 22.7 cm)
前巾(腰) 6寸 7分( 25.4 cm)←次回
前巾(裾) 6寸 5分( 24.6 cm)
後巾(腰) 7寸 6分( 28.8 cm)
後巾(裾) 7寸 3分( 27.7 cm)
合褄巾 4寸 0分( 15.2 cm)
衽巾 4寸 0分( 15.2 cm)
抱巾 6寸 2分( 23.5 cm)
褄下=衿下2尺 2寸 5分( 85.2 cm)←【7】
繰越 7分( 2.7 cm)←【8】
衿付込み 7分( 2.7 cm)
衿肩あき 2寸 5分( 9.5 cm) 
衽下り 5寸 5分( 20.8 cm) 
共衿丈1尺 3寸 0分( 49.2 cm) 
身八つ口 4寸 0分( 15.2 cm) 


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COMMENT
どなたもご指摘にならないので、気になるのは私だけかもしれませんが、
>>ちょっとツンツルテン、なんとか“アホの子”(笑)にならない程度かな
のところは、いささか筆が走り過ぎでは?
Posted by ちか at 2010年03月03日 15:26
ごめんなさい。不快感を与えてしまう表現でした。その前の樺澤さんの記事を受けて書いたことだったのですが、わかりにくかったと思い、その点を補足と修正させていただきました。
ご指摘ありがとうございました。
Posted by 佐藤文絵 at 2010年03月03日 23:39
ちかさん

短い裄丈を表現するのに、不適切な発言があったこと、失礼致しました。ブログとはいえ、多くの方が読んでくださっているということへの意識が欠けておりました。ご指摘をいただきまして、心よりお詫びとお礼を申し上げます。
Posted by 樺澤貴子 at 2010年03月08日 10:40
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