date: 2009年08月19日

subject: 長襦袢の種類・ルールについて

from: 植田伊津子



夏休み終了。長いこと失礼をして、ごめんなさい(^_^;)。
この間、ずっとパソコンのないところにいましたので、留守中にアップされた原稿を読んでいなかったのですが、帰京後にサイトを確認すると、佐藤さんによる充実のお洗濯動画、樺澤さんのかわいらしい着付け小物の記事に釘付けとなりました。

さて、今日は長襦袢について取り上げたいと思います。まだお休み気分が続いていて、慣らし運転をしている感じですが、うまく展開できるでしょうか。不足のところがあったら、ご遠慮なくご指摘ください。

長襦袢といえば、基本的に袷用と単衣用、夏用の3種を使い分けますよね。ただし昨今の気候では、袷の時期でも単衣を着たり、また夏の長襦袢を先取りしたり、みなさんもきものの下の長襦袢で温度調節をされていると思います。表側のきものにくらべると、長襦袢はもう少し自由に着分けているのが現状のようです。
とはいうものの、ルールや種類についてもひととおり踏まえておきたいもの。まずは、長襦袢の基礎知識からいきましょう。


[袷の時期(10月〜4月)の無双・半無双]
この時期は、きものと同様に袷の長襦袢を着ますが、袷といっても胴は一枚仕立ての単衣で、袖が二枚になっていて裾返しがあるものを、袷の長襦袢と呼んでいます。
それが「無双(むそう)」、もしくは「袖無双(そでむそう)」といわれる長襦袢です。昔は寒かったので、胴の部分も二枚重ねにした総裏の長襦袢がつくられていましたが、今は寒冷地以外、ほとんど見かけなくなりました。

また「半無双(はんむそう)」という袖のバリエーションもあります。無双は表地と同じ分量の用尺を裏側にもつけますが、半無双は外から見えるところのみ、部分的に表柄が見えるようにして仕立てます。裏の分の用尺が少なくて済みますので、気軽な長襦袢はこの方法で仕立てることもあります。こちらにも詳細が記してありますね。

090819_1.jpg
袖無双の長襦袢。内側も表地になっています。



[関西衿・関東衿]
女性用長襦袢で一般的なのが「関西衿」で、これはきものと同じく別衿をつけます。「関東衿」は通し衿というかたちで、衿が裾まで通じていますから、衽や衿先がありません。主に男性用の長襦袢に用いられるかたちです。

090819_5.jpg
『図解速習講座 きもの早わかりハンドブック』寺西正文著 寺西和裁研究所発行より複写。



[おはしょり型]
長襦袢といえば対丈で、身丈に合わせたものですが、まれにきもの通の人は、おはしょり型の長襦袢を愛用されていたりします。これはきものと同じく丈をたぐり上げて、おはしょりをつくります。

たとえば洋服を例にとってみましょう。外にシャツを出して、シャツの上からベルトをとめたスタイルのとき。ベルトに余裕がなければ、腕の上げ下げをしたらシャツの裾が上がったままだったりしますよね。
これが対丈の特徴です。対丈は上半身の動きがダイレクトに影響する構造といえます。
ところがおはしょりというものは、クッションの役目をしますから、動きを吸収。ですからおはしょり型の長襦袢なら少々動いても、衿が開いたり、ゆるんだりしにくいのです。また細身の体型の人は、おはしょり部分の重なりでウエスト補整もできます。

京都の呉服店「に志田」の西田郁子さんは、おはしょり型の長襦袢を愛用されていて、とても使い勝手がよいらしいですね。「植田さんも一度使ったら、やみつきになりますよ」と勧められるのですが、基本的に暑がりの私は未体験です……。


[単衣の長襦袢(5・6・9月)と薄物(6・7・8・9月)
非常に季節の区切りがしにくいですが、透けない布の一枚仕立てが単衣の襦袢と説明したらよいでしょうか。袷の時期は袖が二枚仕立てでしたが、単衣になると袖が一枚となります。
そして盛夏。透ける布の一枚仕立てが薄物の襦袢ですね。6月と9月は、透けない襦袢と透ける襦袢を両用使いする感じです。

090819_2.jpg
単衣の長襦袢。一枚仕立てで、表地を裏側に縫い返しています。袷襦袢とは袖が一枚だけの違いなのに、衣更えをすると身も心も軽くなります。



[長襦袢の生地]
ポリエステルの洗える長襦袢については、別の回にお話ししたいと思います。とりあえずここでは横に置いておきますね。

袷や単衣に使う絹の長襦袢地は、きもの地よりやわらかく、しなやかな組織で、身体に添う薄さが大切です。組織名でいうと「紋綸子」や「精華」、平織りの「無地」などでしょうか。あまり重いと肩が凝りますが、かといってお安い薄地の襦袢地の場合、使い方次第ではすぐに目割れが起きてダメになります。しっかりと打ち込まれた適正な厚みの生地を選ばれるほうが、長い目で見てお得です。

また、「おはしょりがつくれないぐらい丈が短い」「昔のものだから、きもの地が痩せているみたい」というようなお下がりのきものをお持ちの方。それらは長襦袢に仕立て替えてもよいですね。

単衣の時期は、袷用の襦袢地以外では、肌につきにくい「楊柳」が人気。薄物の季節に突入したら、絹なら「絽」や「紋紗」、高級木綿である「海島綿」、「麻」など、豊富な種類があります。

090727_10.jpg090819_3.jpg
左=今夏、ぎをん齋藤で見せてもらった紋紗の長襦袢地。右=夏の絽麻の長襦袢。涼しいし、自宅で洗濯できるのがうれしいところ。ただしシワになりやすいので、袖や裾などの目につくところは、アイロンがけが必要です。


原則として、やわらかものにはやわらかもの(絹の絽や紋紗)、堅物のきものには堅物(綿や麻)を使うのが約束です。素材を合わせないと、袖の振りから堅い麻の襦袢が顔を出すことになりますから。
海島綿の長襦袢地は京友禅の千總が専有に扱っている商品で、西印度諸島で収穫された最高級の長繊維綿花「シーアイランドコットン」を使用。麻よりもしなやかで、さらっとした風合いが特徴なのだそうです。こちらは、私は未経験。


[二部式襦袢]
二部式襦袢は、長着の襦袢を上と下のふたつに分けたもの。その上半身を「半襦袢」と呼びます。
半襦袢の胴体が綿さらしで、袖に長襦袢地を使ったものが「うそつき」。外から見ると、通常の長襦袢と変わりありませんから「うそつき」というわけです。

「うそつき」と「大うそつき」の違いをご存じですか?
5、6年ほど前までは、さらしの胴体に袖を縫いつけたタイプ、「うそつき」が主でした。けれど、きものに合わせて長襦袢をコーディネートしたい場合に「袖を着脱可能にして、いくつもの替え袖を付け替えられたら便利じゃない?」として考えられたのが「大うそつき」。大うそつきは、うそつきの進化形ともいえるでしょう。こちらは、袖がマジックテープやスナップで取りはずせます。現在は大うそつきのほうが人気のよう。

090707_7.jpg
佐藤さんがお持ちの「大うそつき」。佐藤さんは袖と裾よけは麻を使われているみたいですが、これに冬用の袷の袖をつけても構いません。うそつきの身頃は綿で、通年使用します。
お古のきものなど、袖丈がまちまちの場合にも大うそつきが重宝。


私は一時期、二部式襦袢を自作していましたが、あるとき熱がぱったりと止み、全部差し上げたり処分したりしました。当時は自分好みの布で袖をつくり、銀座の津田家などで売っていた袖無し胴体に縫いつけていたのです。けれど小紋を着ることが多い私は、「自分には、こんなにたくさんの種類は要らないな」と気づいて……。
紬などのしゃれ着が多い方は襦袢とのコーディネートを重視されるでしょうから、袖のバリエーションが楽しめる二部式襦袢はとても便利じゃないかと思います。


[長襦袢の色柄]
留袖や色留袖、喪服などの礼装用……白の無地(地紋は可)。
訪問着、紋付き、付下げなど少々改まったもの……薄色。柄が目立たないもの。無地感覚。
小紋などの普段着……薄色〜濃色。無地感覚〜オシャレ柄など。
紬……薄色〜濃色。無地感覚〜オシャレ柄など。

090819_4.jpg
薄いピンクベージュ地の長襦袢。紋付きのきものなどに合わせているベーシックなもの。


色柄に関しては、上記がお約束ですね。とくに守りたいのは礼装用の白。留袖に薄ピンクの長襦袢を合わせる方が少なくないといいます。原則として、改まった装いになるほど「白」に近づくということでしょうか。
たとえばお茶をされている方で、師がお亡くなりになって、通夜・葬儀の席に出向く場合、一つ紋付きの地味な色無地を色喪服として用いる(黒共帯を締める)ならば、やはり白の長襦袢がよいのではないでしょうか。

では「白の長襦袢を、常着の小紋などに用いてもいいか?」と尋ねられたら、私は「白じゃないほうがいいのでは」って答えるでしょうね。夏は透ける問題があるため絽の白地の襦袢も用いますが、袷の小紋に「いかにも」礼装というような紋綸子などの長襦袢は、避けたほうが無難だと思います。
白という色は、きものの世界ではいろいろな意味で場所を限定するイメージがあるからです(婚礼衣装・経帷子〈死装束〉・神事の白装束など、「礼」をたださないといけない色なので軽く扱えないからでしょう)。

紺や茶系統の紬には、白っぽい薄色の長襦袢よりも、中間色で色目があるもののほうが落ち着くと思います。飛び絞りの長襦袢でも、真っ白な地に色を絞ったものではなく、少しだけ地色を薄いベージュ色などに汚してあるほうが、白の照り返しが抑えられて紬に馴染みやすいはず。


COMMENT
POST A COMMENT
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

TRACKBACK
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。