date: 2009年08月14日

subject: 続・お手入れ講座 〜汗抜き

from: 佐藤文絵



樺澤さんの腰紐&伊達締めバリエーション、すてきですね。装いに合わせて着付け小物を変えるお洒落。これまで考えたこともなかったです。しかしなるほど、なるほど。はらりと目から鱗が落ちました。
ところで紐類は、着付の先生の教えを守って、きものを脱ぐときに、身体から外してすぐに片付けるようにしています。伊達締めは半分に畳んでから巻き、腰紐はハチマキのように五角形に畳みます。紐が熱を帯びているうちに片付けると、自然と皺が伸びるから、アイロン要らずなんですね(たくさん汗を吸っているときは別ですが)。
樺澤さん、博多の伊達締めはアイロンをかけて滑りやすくなりませんでしたか? 何でも洗ってしまう私は伊達締めも水洗いしました。アイロンもかけてきれいさっぱり、美しくなったのはいいけれど、使い勝手は少し落ちたような。それまでは2回からげるだけで止まっていたのが、その後は3回からげるようになりました。博多の伊達締めは「干す際に丁寧に手のし、アイロンは使わないほうがよい」というのがそのときの教訓です。


さてさて、今日は以前予告していた「汗抜き」について書きたいと思います。
夏きもののトラブルNo.1は汗ジミの「黄変」。いま時分の暑い日はもちろんのこと、冬でも暖房のきいた部屋に居るだけで、きものは意外とたくさんの汗を吸っているものです。

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特に多く汗を吸うワキのあたりは、気づいたらすでに黄変していた、なんて経験をされている方もあろうかと思います。汗の成分のひとつ=たんぱく質は、時間が経つと黄ばむのが特徴。黄変する前であれば水を使って楽に落とせるのに、いったん黄変してしまうと漂白して色をかけるという、大変手のかかる「シミ落とし」が必要になります。生地も傷むし、お財布も痛みます。早めの対処が肝要!なのです。

ただ、汗ジミは乾いてしまうと目に見えないから、「きれいにしなくちゃ」とやる気が起こらないのも事実。だけど汗ジミ予備軍は確実に存在しているんですね。きゃつらの存在を確認するには――霧吹きです。

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今年の冬、2月に2度着用したのみの長襦袢です。見た目にはなんともありません。霧を吹くと・・・汗ジミ予備軍が姿を露わに。



水を使う「汗抜き」は、ベンジンを使うお手入れより、少し難易度が上がります。水を使うと縮む生地があります。気をつけてやらないと摩擦で布を傷めたり、染料が色落ちすることもあります。
まずは単衣の長襦袢で試すのがおすすめ。慣れてきたら単衣のきものに挑戦しましょう。「少し汗をかいたな、まだお手入れに出すほどではないけれど、しばらくは着ないし」――そんなときの対処法としてやってみてください。注意点はしっかり守ってくださいね。
なお縮緬や御召、塩沢など縮みやすい素材や袷のきものは専門家へ。単衣でも、全身汗びっしょりになってしまった場合も専門家にお願いしたほうが無難です。


それでは実践編。今回も「お手入れ講座 〜基礎知識編」「お手入れ講座 〜実践編」に引き続き、松川調整所の松川さん&河野さんにレクチャーしていただきました。




では道具と手順、注意事項を順に説明しますね。

【道具】
・水をはった洗面器
・霧吹き(ボタボタ水滴が垂れない、霧のこまかいものがよい)
・白いタオル何枚か
・タオルを丸めてまとめたもの
・ドライヤー
・板(小さなまな板やしっかりとした本などをタオルでくるむ)

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半分サイズのタオルを巻いて輪ゴムで止めています。手に持ちやすいサイズに作ってみましょう。


【手順】
1. 汗をかいていると思われる場所の下にタオルでくるんだ板を入れ込み準備する。
2. 霧吹きをかける。生地に汗の残留があれば、その部分はよく水分を吸収します。汗ジミのまわりを大きめに霧吹きで濡らします。輪ジミにならないようぼかすように。
3. 丸くまとめたタオルに水を含ませて、汗の部分をたたく。垂直にたたく。決してこすらないようにして、汗の成分を下にひいたタオルに移す感覚で。下にひいたタオルを交換して数回繰り返す。
4. 輪ジミになるのを避けるために、濡れた部分の輪郭を霧吹きをかけてぼかします。
5. タオルで軽く押さえて水分を吸い取ります。
6. ドライヤーをかけます。外側から乾かしていきます。
7. 必要に応じてアイロンをかけ、生地の表面を整えます。当て布を使いましょう。

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左=3.トントンとたたきます。しつこいようですが、垂直に、こすらない。 右=6.濡れた部分を外側から内側にむかって乾かしていくのがコツ。


【注意点】
汗抜きは、生地が縮まないか、風合いが変らないか、そのあたりが最も気になる点です。そこで、きものの余り布で実験してみました。

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写真上から、いかにも縮みそうな「塩沢」「絽ちりめん」「変りちりめん」、そして「紋意匠」です。いずれもパールトーンなどの加工はされていません。

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塩沢は、少し濡らしただけでこのとおり。

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単にドライヤーで乾かすとこんなふうにくしゃくしゃに。蒸気を当てながら伸ばすようにアイロンをかけたら、ほとんど元通りになりました。

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これも縮みそうな絽ちりめんですが、さほど影響はありませんでした。ふつうにドライヤーで乾かしても縮みは感じられません。見た目にはほとんど変化なく、触ってみると風合いが少し固くなった印象。ごわつく感じです。アイロンをかけると幾分か戻ります。


結果としては、塩沢以外はほとんど縮みませんでした。そして、たとえ縮んだとしても、アイロンでかなり直せるということが分かり、ほっとひと安心。これなら意外に自分でもできそうです。「単衣と盛夏の絹ものは毎シーズンお手入れに出さなくては」と思っていたのですが、さほどの汗でなければ、自分でお手入れできる、と思えてきました。
ためしに汗抜き後、再度霧を吹きかけてみたところ、くっきりとした汗ジミはなくなって、全体にまんべんなく水が浸透していきました。汗の成分が全て取れているかはわかりません。でも、少なくとも「くっきりとした黄変」という事態は避けられます。

汗をかく時期の「絹もの」も、これでだいぶ安心して着られるなと思いました。みなさんもぜひお試しくださいませ。


松川調整所では、今回教えていただいた「汗抜き」を含めた「着物お手入れ教室」を10月に開催されるそうです。場所は京都・祇園店。ご興味のある方はぜひお問い合わせのほど。

<着物のお手入れの基本と簡単なシミ抜き方法を学ぶ>
●祇園まつかわ本店(京都市東山区花見小路四条下ル建仁寺東)
10月3日(土)、10月4日(日)
(1)9:30〜11:00(初級)
(2)11:30〜12:30(中級)
(3)13:30〜15:00(初級)
(4)15:30〜16:30(中級)
(5)17:00〜18:00(中級)
初級は衿洗い(参加費2,500円・染み抜きブラシのおみやげ付き)、中級は汗抜き(参加費2,000円)が課題。


さて! 私は明日から少し旅に出ます。月末にまたお目にかかります〜。
COMMENT
佐藤さんのお手入れムービー、本当にアッパレ!!すっかりお手入れのプロですね。

私はこれまで、一度袖を通したものはすべて悉皆屋さんに預けていました。私、本当に不器用で、このたぐいのことは他力本願で過ごしてきたのです。これからも、急にお手入れ上手になる自信はないのですが、ちょっとしたひと手間の大切さはよくわかりました。少〜しずつ、トライしてみようかしら・・・。う〜ん。

さて、博多の伊達締めですが、確かに最初の紐が硬いときには滑りが気になりました。でも今は使い込んでかなり柔らかくなっているので、アイロンによる滑りは気にならないかな。アイロンも当て布をすると、そんなにテカらないように思うのですが・・・。ちょいツルになった伊達締めですが私は2回からげるだけで十分。結び方でフォローできるように思うのですが。

2回からげたあとは、左右の手先を戻すように交差いますか?また、始末した手先はどこに仕舞っていますか?私は交差させた2本を1本にまとめ、クルクルと巻いて伊達締めの下から内側に仕舞いこんでいます。こうすると、帯を締めた後に、帯枕のガーゼやら帯揚げやらと影響しあって伊達締めの結び目が緩むこともないと思うのですがいかがでしょう?

樺澤
Posted by 樺澤貴子 at 2009年08月16日 16:57
この5・6月、私は御召の単衣を着ていて、ある日、おおいに汗をかいたのです。その日は油断をして、あしべ汗取をつけていませんでした。

きものの熱を冷まし、陰干ししたのちに仕舞おうとしたら、汗で湿ったところがすごく縮んでる! 
帯枕周辺や、袖の真ん中(ひじの汗が当たるところ)、わき、おはしょり付近……。応急処置をしようと、慎重に蒸気アイロンをかけてみたのですが、佐藤さんの写真のように、きれいに伸びませんでした。

結局、それは6月の単衣時期の終わりに悉皆に出したのですが、アイロンをかけてもそれほどには直らないものがあるような気がしました。強撚糸系(西陣御召、夏塩沢など)は、素人には要注意みたい。

さて、佐藤さんの力作お手入れ動画第2弾! ほんとうにこの人はなんスかね。
松川さん、今回もお世話になりました。厚く厚く御礼申し上げます。

Posted by 植田伊津子 at 2009年08月19日 19:03
はじめまして。初コメントです。
今回、佐藤さんとたまたま松川調製所さんでばったりお会いして、
お邪魔かと思いましたが取材を見学させていただきました。
ほんとに勉強になりました。
ありがとうございました。
一緒に説明を聞かせていただいたのですが、このように見事なわかりやすい記事となっていたのはさすがです。

最近特に汗抜きやシミ落としについてのいろいろ勉強をしたいと思っていましたので、こちらのブログはとても参考になっています。

実は明後日23日には同じく松川さんに講師になっていただき、きものの汚れに関するワークショップも企画していて、それも楽しみにしています。

着物や襦袢に付く汗や汚れに関して知っていくと、より着物を着ることへの不安が減っていきますよね。

こちらの記事はどの記事もとても参考になって毎回とても楽しく読ませていただいています。
これからもいろんな情報を発信していただけるととても嬉しいです。
Posted by 宇ゐ at 2009年08月21日 11:50
>樺澤さん
伊達締め、からげたあとは交差はしていないです。なるほどそんな工夫もあるのですね!

>植田さん
ふむふむ、戻らなかったですか。強撚糸はおっしゃるとおり難易度高いですね。実験してみて、意外にできそうだなあと思ったのですが、強撚糸系の汗抜きは基本的にプロに任せたほうがいいと思いますです。

>宇ゐさん
23日のワークショップはいかがでしたか?
やはり実際教えてもらう場があることが一番。いい機会になったことと思います。
自分でどこまでお手入れをするかはさておき、どういう汚れなのか、どんな処理できれいになるのか知るだけでも、とてもためになりますよね。不安がなくなることが、大きな収穫になると思います。
Posted by 佐藤文絵 at 2009年08月25日 12:11
はじめておじゃまします
私は日舞をやっていましたので着物とは踊るための
道具のように思ってまいりました
着付けもいかに踊りやすいか着崩れないか!が命で
した。そのため汗はつき物で専門の方にやってもらうものだと思い込んでいました。でもこちらのHP
を見て目からうろこと言いますか・・私も着物を
趣味の物としてもっと大切に楽しもうと考えが変りました。これから時々おじゃましますね♪
Posted by てれ子 at 2010年08月05日 18:54
簡単に教えるという事は苦労して仕事を得てない。
そんなもんじゃない、難しい仕事はするのか?営業臭い臭いが、ぷんぷん。
そんは奴が職人さんな訳ない。
若旦那と言うてる自体で答えがでてる
Posted by at 2011年03月05日 23:51
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